老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

文字の大きさ
114 / 342

114話 ヒヒイロカネと最高級の肉

しおりを挟む
 ヒヒイロカネ。

 伝説の金属とされていてVOの世界において魔力触媒金属として最高の素材。

 作成意欲をこれでもかと言うほど刺激するアイテムを手に入れてユキムラは悶絶する。



「くっ……、流石にまだ時間が早い。次の階層も行こう!」



 35階でのスタンピードを乗り越えてもまだ時間はお昼過ぎ程度。

 流石にヒヒイロカネをいじりたいからと言う理由で今日はここまで、とは言え無い。

 根が真面目なユキムラでした。

 そしてそれはもう一つの幸運を呼び込む。



 36階層、周囲の雰囲気が変化した。

 無機質だった壁が呼吸をするかのように赤く明滅する文様が浮かび上がっている。

 神秘的で不気味なまるで洞窟が生きているかのような雰囲気を醸し出していた。

 ダンジョンとしてのランクが変わったことを示す。

 出現する敵も宝のランクも変化するそういうサインだ。

 そして一行はその変化と対面することになる。

 

 ズーン……ズーン……ズーン……



 地面が揺れる。リズムなどから巨大な生物が歩いている音だと推測された。



「何か、いますね」



「ああ、ここからは分散せずに進もうか」



「わかりました。それにしても見える範囲の外から歩いている振動が伝わってくるほど巨大な生物ですか……怖いですね」



「そうだねぇ、もしドラゴンだったりしたら解体して肉手に入れたら最高の食材らしいよ。

 アイテムの説明文によると」



「やだわぁユキムラちゃんドラゴンなんておとぎ話でしか聞いたことないわよぉ」



「でも……師匠もおとぎ話でしか聞いたことが無い来訪者ですもんね……?」



 タロはピクピクと耳を動かし、隙なく周囲を警戒し続けている。

 この階層はロックリザードマンのパーティやらトカゲっぽい敵が多い階で、だんだんと近づく足音の主が、本当にドラゴンかも知れない。

 皆、口には出さないがそう思っていた。

 リザードマンは二足歩行で顔つきはトカゲ、上位種のドラゴニュートになっていくとどんどんいかつくなっていく。ロックリザードは鱗が石状になっていて、主食も岩だ。

 当然その顎は岩をも砕く強靭さを持っている。

 知識もそれなりに高く、その中でもリザードメイジはそれなりの魔法を使ってくる。

 まぁ、白狼隊と戦うには役者不足感は否めない。

 

「師匠ドラゴンの肉ってどれくらい美味しいんですか?」



 案の定白狼隊は出てくる敵をあっさりと蹴散らしながら、どんどんと深部へと進んでいく。



「いやー自分も食べたことはないんだけど。

『ドラゴンの肉:幻の生物ドラゴンから取れる肉、いろいろな種類がいるが食べられる部位はごく一部でどんなに巨大なドラゴンでも一頭から1キロ程しか手に入らない。

 ドラゴンキラーに与えられる名誉を凌駕するほどの味わいで、一度食べると1週間は何も食べなくても活動できるほどの活力と、一生で手に入れられる快楽を味わいに込めたような極上の体験を与えてくれるだろう』

 ってね。素材も貴重だし、いてくれたらラッキーだよね」



「ふ、ふーん。本当にいたら是非食べてみたいですね」じゅる



 あふれ出る唾液をソーカは一生懸命飲み込んでいる。



「ドラゴンのウロコが手に入ったら絶対にカバン作りたいわぁ……」うっとり



「もし出るとしたらアースドラゴンだから……」ブツブツ……



 レンは過去の知識から戦いのシミュレーションに余念がない。

 

「わん!」



 タロは強敵との戦いに心躍っているようだった。

 皆まだ見ぬドラゴンにそれぞれ夢を持っている。



 きちんと探索をしながら進んでいたが、皆の意識はどんどん足音の主へと集中していく。

 そして足音もどんどん近づいてくる。

 どうやら現在歩いている直線的な廊下の先に足音の主はいるようだ。

 廊下の先も巨体の主が収まる巨大なドーム状の空間になっている。



「あ!」



 俯瞰視点にその姿が現れる。



「ほんとにドラゴンだ……アースドラゴンか、でかいんだよね……」



 全員の集中力が増していくのがわかる。 

 一人は材料のため、一人は力試し、一人は胃袋、一人はおしゃれ、一匹は大きな玩具で遊びたい。

 理由はそれぞれ違うが、白狼隊初めてのドラゴンハントだ。



「あのさぁ……、盛り上がってるとこ悪いんだけど。ずるい勝ち方と正攻法どっちがいい?」



 部屋の前でユキムラが提案を出してくる。



「師匠、一応そのずるい方法っていうのは?」



「えーっとね、タゲ回しってやり方なんだけど。

 基本的に魔物は与えられたダメージの大きい敵を対象に攻撃してくるんだよね。

 だからああいう巨大で動きの遅い敵はそれを利用して次から次へとヘイトを回して、相手に攻撃させないで勝つ的な方法があって……」



「ガウ!!」



「うー、ごめんよぉ。そういう方法があるってだけだよぉ。一応ね。一応。

 はい! ということで正攻法で行こう!!」



 鶴の一声ならぬタロの一言で正攻法での戦闘となる。

 

「失礼しました、先程の話は忘れましょう。

 えーっと、巨大な敵との戦いは基本的にリスクを取らないことです。

 深く相手の懐に入るのではなく、出ているところを叩きましょう。

 そして一発逆転を絶対に狙わない。

 そんなものを狙う状態にされた時点で、たぶんそのだいぶ前に撤退すべきポイントがあります。

 地味ですが、積み重ねる。それしかありません」



 タロに叱られて少しへこんだユキムラの丁寧な大型種との戦闘ハウツーだ。



「万が一、あの巨体の一撃を完全に受けると、この鎧でもどうなるかわからない。

 それは絶対に忘れないでくれ、死んだら俺はそいつを許さないから」



 最後の言葉が隠すことのないユキムラの本心だった。

 全員その言葉を重くうなずき気合を入れ直す。先程までの浮ついた雰囲気は消え失せた。



「当然だけど、まとまるのも悪手だからね。そしたら行こうか!」



 白狼体が広間へと一斉に飛び出していく。

  
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...