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134話 気負い
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「ソーカ前に出過ぎてる。二列目との間に割り込まれるよー」
「すみません!」
「いいよー、ちょっと右多そうだから皆フォローしてねー」
ユキムラは戦闘全体を把握しながら的確に指示を出している。
ユキムラはどんなイレギュラーがあってもそれを考慮に入れて最適な行動を取ることができる。
40年という期間で臨時パーティにも星の数ほど所属しているし、傭兵としてギルド戦でいろいろな人と組んだりもする。職も違えば操作の癖も異なる。それらを統合して効率よく運用するために指示を出したりそういったことを繰り返してきた結果だ。
現在はトカゲにまたがったリザードマン、リザードライダーとの戦闘中だ。
広い部屋を縦横無尽に駆け回られたら非常に厄介な敵だ。
もちろん相手の自由にさせてやる義理はない。
レンが作り出した茨の壁と床によって相手の動きを制限させている。
魔法はユキムラが詠唱阻害によって封じている。
スキルさえも初動を撃ち抜かれるため、相手からすれば思うような戦闘が全くできていない。
基本的にパーティ戦はいかに相手を自由にさせないかなので、攻撃スキルや攻撃魔法を放ってくる敵はユキムラの相手にはならない。
デバフなんかを使ってくる相手も初動を抑えてしまって発動させない。
相手も同じことをすればいいのだが、現在の戦況を判断して、次にこれをやってくるだろうという行動を先回りで抑えに行っているユキムラの離れ業をできる人間はそうはいない、ましてや魔物にそれを求めるのは酷というものだ。
「ソーカ、サイレスさんは大丈夫だからもっと任せて平気だよー。緊張してるね、リラックスリラックス」
「すみません!」
ただ、誰しもが急なパーティ変更にすぐさま対応できるわけではない。
ソーカはタンク役であったヴァリィがいなくなったこと、サイレスという別の前衛が加わったことに、まだ慣れることが出来ずにいた。
「ほんとにスミマセン!」
「んー? どうしたのソーカ?」
「いえ、さっきの戦闘でたくさんミスを……」
「ミスなんかないよー、言われてちゃんと改善してたし。ソーカはまだ若いんだから何でもこなしたら逆に怖いよ……」
「ユキムラ殿も殆ど変わらないのに……」
思わずレックスが突っ込んでしまう。
「それは、まぁ来訪者の能力的な?」
最近は困ったら来訪者、でなんでも乗り越えている。
「ソーカは類稀な才能もあって、まぁレベルも少しおかしいとこまで成長しているけど、中身は可愛い女の子なんだから、経験はまだまだ足りないはずだ。サイレスさんみたいな深みのある動きをするにはそれこそ長い年月を戦いの中に身をおくことで身につくものだよ。
俺の助言もその経験の一つとして、ミスしたとしても皆がフォローしてくれるよ。
お互いにお互いを支え合ってパーティになるんだ。
ヴァリィがいなくなって不安だろうし、新しいメンバーもいるけど、気負いすぎないで肩の力を抜いていつも通りやればいいよ。ほんとにやばくなったらタロが助けてくれるよなータロォー?」
「わふん」
ユキムラが足元にいたタロをわしわしとなでつける。
「ソーカねーちゃんももっといろいろ試してみるといいよ、サイレスさんから教わったり。
僕もレックスさんからいろんなこと教えてもらったよ」
「おう! 俺で良ければなんでも聞いてくれ! こんな可愛い子に頼られるなんて男冥利に尽きるぜ!」
皆の優しさが温かかった。『可愛い女の子』は脳の記憶装置の奥深くに保存することを決意した。
「あの、ユキムラさん。お願いがあるんですが……」
現在16階層。前衛はユキムラとサイレン、中衛にタロとレン、後衛がソーカだ。
ソーカは弩による援護を主体にしているが、ユキムラの動きを見逃さないように集中している。
「ユキムラさんの立ち回りを一度見せていただけないでしょうか?」
ソーカのお願いだった。
「お、それ俺も見たいぞ。俺の役目も次やってみてくれ」
「師匠自分も!!」
「それはいいけど、前も言ったけど俺の真似をする必要はないんだよ?
まぁ参考にするくらいなら役に立つか、よし、じゃぁ順番にやってみるよ」
さらっとそれに答えるユキムラも男前である。
「二刀流はやっぱり防御は苦手だから、入りと出を意識して立ち回るといいよ。
んで、パーティの確認はアレに任せるんだけどー……上からのアレね。
何ていうか見るわけじゃなくて見てるというか、そんな感じ?
ごめんなんて言うかわからないや」
レンにもソーカにもなんとなくニュアンスは伝わる。
ついつい俯瞰視点に目が言ってしまい目の前の変化に少し戸惑うことは経験していた。
解説をしながらもユキムラは敵全体の攻撃を限定させて、移動をコントロールして、攻撃さえもコントロールしながらバッサバサと敵をなぎ倒している。
立ち回りでここまで敵の行動をコントロールできるのかとソーカは驚きを隠せなかった。
実際に自分の立ち位置をユキムラにやってもらうことで高い山とは言え登るべき目標を提示され、ソーカの悩みは解決する。あとはユキムラを信じて研鑽を行うだけだ。
他のメンバーも自分の立ち位置をユキムラが行うことでここまで戦況全体に影響を与えることに衝撃と同時に燃えるものを自分の中にはっきりと感じていた。
この立場による立ち回り講座もレンによってしっかりと記録されサナダ隊の教材となっていく。
「すみません!」
「いいよー、ちょっと右多そうだから皆フォローしてねー」
ユキムラは戦闘全体を把握しながら的確に指示を出している。
ユキムラはどんなイレギュラーがあってもそれを考慮に入れて最適な行動を取ることができる。
40年という期間で臨時パーティにも星の数ほど所属しているし、傭兵としてギルド戦でいろいろな人と組んだりもする。職も違えば操作の癖も異なる。それらを統合して効率よく運用するために指示を出したりそういったことを繰り返してきた結果だ。
現在はトカゲにまたがったリザードマン、リザードライダーとの戦闘中だ。
広い部屋を縦横無尽に駆け回られたら非常に厄介な敵だ。
もちろん相手の自由にさせてやる義理はない。
レンが作り出した茨の壁と床によって相手の動きを制限させている。
魔法はユキムラが詠唱阻害によって封じている。
スキルさえも初動を撃ち抜かれるため、相手からすれば思うような戦闘が全くできていない。
基本的にパーティ戦はいかに相手を自由にさせないかなので、攻撃スキルや攻撃魔法を放ってくる敵はユキムラの相手にはならない。
デバフなんかを使ってくる相手も初動を抑えてしまって発動させない。
相手も同じことをすればいいのだが、現在の戦況を判断して、次にこれをやってくるだろうという行動を先回りで抑えに行っているユキムラの離れ業をできる人間はそうはいない、ましてや魔物にそれを求めるのは酷というものだ。
「ソーカ、サイレスさんは大丈夫だからもっと任せて平気だよー。緊張してるね、リラックスリラックス」
「すみません!」
ただ、誰しもが急なパーティ変更にすぐさま対応できるわけではない。
ソーカはタンク役であったヴァリィがいなくなったこと、サイレスという別の前衛が加わったことに、まだ慣れることが出来ずにいた。
「ほんとにスミマセン!」
「んー? どうしたのソーカ?」
「いえ、さっきの戦闘でたくさんミスを……」
「ミスなんかないよー、言われてちゃんと改善してたし。ソーカはまだ若いんだから何でもこなしたら逆に怖いよ……」
「ユキムラ殿も殆ど変わらないのに……」
思わずレックスが突っ込んでしまう。
「それは、まぁ来訪者の能力的な?」
最近は困ったら来訪者、でなんでも乗り越えている。
「ソーカは類稀な才能もあって、まぁレベルも少しおかしいとこまで成長しているけど、中身は可愛い女の子なんだから、経験はまだまだ足りないはずだ。サイレスさんみたいな深みのある動きをするにはそれこそ長い年月を戦いの中に身をおくことで身につくものだよ。
俺の助言もその経験の一つとして、ミスしたとしても皆がフォローしてくれるよ。
お互いにお互いを支え合ってパーティになるんだ。
ヴァリィがいなくなって不安だろうし、新しいメンバーもいるけど、気負いすぎないで肩の力を抜いていつも通りやればいいよ。ほんとにやばくなったらタロが助けてくれるよなータロォー?」
「わふん」
ユキムラが足元にいたタロをわしわしとなでつける。
「ソーカねーちゃんももっといろいろ試してみるといいよ、サイレスさんから教わったり。
僕もレックスさんからいろんなこと教えてもらったよ」
「おう! 俺で良ければなんでも聞いてくれ! こんな可愛い子に頼られるなんて男冥利に尽きるぜ!」
皆の優しさが温かかった。『可愛い女の子』は脳の記憶装置の奥深くに保存することを決意した。
「あの、ユキムラさん。お願いがあるんですが……」
現在16階層。前衛はユキムラとサイレン、中衛にタロとレン、後衛がソーカだ。
ソーカは弩による援護を主体にしているが、ユキムラの動きを見逃さないように集中している。
「ユキムラさんの立ち回りを一度見せていただけないでしょうか?」
ソーカのお願いだった。
「お、それ俺も見たいぞ。俺の役目も次やってみてくれ」
「師匠自分も!!」
「それはいいけど、前も言ったけど俺の真似をする必要はないんだよ?
まぁ参考にするくらいなら役に立つか、よし、じゃぁ順番にやってみるよ」
さらっとそれに答えるユキムラも男前である。
「二刀流はやっぱり防御は苦手だから、入りと出を意識して立ち回るといいよ。
んで、パーティの確認はアレに任せるんだけどー……上からのアレね。
何ていうか見るわけじゃなくて見てるというか、そんな感じ?
ごめんなんて言うかわからないや」
レンにもソーカにもなんとなくニュアンスは伝わる。
ついつい俯瞰視点に目が言ってしまい目の前の変化に少し戸惑うことは経験していた。
解説をしながらもユキムラは敵全体の攻撃を限定させて、移動をコントロールして、攻撃さえもコントロールしながらバッサバサと敵をなぎ倒している。
立ち回りでここまで敵の行動をコントロールできるのかとソーカは驚きを隠せなかった。
実際に自分の立ち位置をユキムラにやってもらうことで高い山とは言え登るべき目標を提示され、ソーカの悩みは解決する。あとはユキムラを信じて研鑽を行うだけだ。
他のメンバーも自分の立ち位置をユキムラが行うことでここまで戦況全体に影響を与えることに衝撃と同時に燃えるものを自分の中にはっきりと感じていた。
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