老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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135話 被弾

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 30階層を過ぎてくるとサイレス、レックスもすっかり白狼隊と馴染んでくる。



「この年でも自分の成長を感じるほど成長できるんだな……」



「噂によると高レベルに達すると老化の速度が減少するとか……」



 まさかぁと一蹴したかったが、何にせよ前例が無い。

 ギルドによるレベル測定でさえそんなに歴史が古いわけではない。

 

「もしそうなると僕達困っちゃいますね」



「確かに、ユキムラさんとずっと一緒に居てかなりレベル上がっちゃいましたから……」



「まぁ、確かめるったって数十年はたたないといけないだろうからねぇ……」



 夕食後のティータイム。5人と一匹はリラックスしている。

 ここが洞窟であることを忘れてしまうほどの快適さだ。

 洞窟へ入ってから4日目の夜。

 いまのところ大変順調に洞窟探索は進行している。

 洞窟内で食べる温かい料理や新鮮な魚介を使った料理、今では夕食がレックス、サイレスの何よりの楽しみになっている。



「正直な話、毎日館にいるよりも美味しい食事と環境にいる気がする」



「運動すると食事がさらに旨く感じるからなぁ……俺もやっぱり冒険者に戻りたくなってるよ……」



「師匠がおかしいだけで普通のダンジョン攻略はこんなふうには……」



「そこなんだよなぁ、もう普通の冒険は出来ないよなぁこんなの知ってしまったら……」



 二人は大きなため息をついて肩を落とす。



「快適な方がいいじゃないですかー良い食事と睡眠は冒険に一番大事ですよー」



 ユキムラの至極まっとうな意見は理解できるんだが、それを実現できるかは別問題だ。



「それにまぁ流石に小型化しますがこのコテージとマジックボックスはギルドにそのうち出荷しますから。いずれは冒険者が皆これくらい快適に冒険できるようになりますよ」



「しかし、これほどのもの冒険者に購入できるかな……?」



「ガレオンは貸与式を考えてましたよ」



「な!? そりゃ……そうすれば冒険者はでかい荷物に悩まされることもないが……莫大な経費が……」



「ああ、2ヶ所ダンジョン制覇したんで資金面は目処がついているようですよ。

 貸与式ならポーションとかも一定数入れておいて使用した分だけ後精算って言う形にすればさらに安全性は増しますよね」



 現代日本における置き薬的な考え方だ。



「製造もユキムラ殿がやってその資金もユキムラ殿が生み出すのか……とんでもないな……」



 この世界の生産体制をまるっと変えてしまうんですよーこの人はーとレンは喉から出かかったが我慢した。すでにこの国のいろいろなところにサナダ街式スキルを会得した人間は潜り込んでいる。

 そしてそのスキルをどんどんと普及させていく。

 そうすれば国家としての生産力は跳ね上がり、いろいろと混乱もあるだろうが利益のほうが大きい。

 今のところ一番の問題はあまり急速なスキル普及をすると多分女神様が壊れる。

 なのでまだ本格的な普及はしていかない。

 その下準備はどんどんと進められている。

 黒ユキムラによる文化侵略は手ぐすねを引いて待っているのだ。



 順調なダンジョン攻略とは裏腹にユキムラの不安とタロの機嫌は悪化している。

 明らかに深層へと向かうに連れてアンデッドの比率が多くなっている。

 普通の洞窟のようだったダンジョンもだんだんと氷の宮殿みたいになってきて、氷結系の敵が多くなるのかと思ったらゾンビやレイスやリッチなどが増えてきている。



「おお、エルダーリッチまで出てきたか。雑魚ではかなり強いから気をつけて」



 リッチの上位種であるエルダーリッチ。上位魔法も色々使うし、厄介なのは詠唱阻害耐性があって物理攻撃などによる魔法阻害が無効だ。

 上位魔法は詠唱破壊系スキルを使うしか無い。

 ただ、流石に数が多いと全てを防ぐのに限界がある。

 装備とバフによって魔法防御を高めているので致命傷にはおよそ成り得るような攻撃ではないが、異常なことだが、久々に被弾することになる。



「多少は仕方ないからどんどん倒そう」



 魔法反射も上級魔法だと不可能なのでさすがのユキムラもここはおとなしく普通のRPGっぽく回復魔法などを使いながら戦う。もちろん鎧の自然回復は凄まじい速さで傷を癒やすし、敵がかわいそうな状態は変わらない。

 そんな感じで多少手傷を負うようにはなったが、攻略自体は順調に進んでいる。

 全く手傷を追わない今までが異常なことだっただけだ。



「ふぅ、おつかれ~。皆怪我とかはない?」



 やっとのことでエルダーリッチが大量に召喚したレイスやらゾンビやらを駆逐し終わって一息つけた。

 受けた傷が急速に癒やされていく様に少し引き気味だが全員問題は無いようだった。



「致命的な被弾だけは避けて、きちんと丁寧に防御をしよう。

 一撃死さえ気をつければ直撃を受けても耐えられる。変に完全に避けようとして事故が起こるほうが怖いから、皆それは慣れていってね」



「いままでがおかしかったんですよね。普通はちょっとぐらいは傷も出来ますからね」



 ソーカは腕の切り傷があとも残らずに治ってくれてホッとしている。

 

「やけども綺麗に治りますね。神官の回復魔法でもあとが残ることあるって聞きますけど……」



「自己治癒魔法もランクはあるし。回復魔法ならもっと差があるだろうからね。

 極論を言えば即死の怪我でも治せる。でも、治して生き返るかはわからない。

 だから絶対に死なないでくれ」



 ユキムラが真面目な顔で皆に伝える。

 VOでは死んでもいとも簡単に復活ができる。

 しかし、この世界がどうなるかは未知数だ。

 すでにユキムラの知るVOとはだいぶ変化している。

 それに、生き返れたとしてもユキムラは知っている人に死んでほしくない。

 それは、素直な、気持ちだった。

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