老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

文字の大きさ
136 / 342

136話 元凶

しおりを挟む
 50階層に降りた時明確な変化が現れた。

 ダンジョン全体がおどろおどろしい雰囲気となり、敵も小型のドラゴンゾンビやリザードマンゾンビなど実体の死霊化した魔物が大量に現れるようになった。



「この雰囲気の変化はここが最終階なのかもね」



 なんとか10日でここまで来ることが出来た。

 サイレスもレックスもいきなりの長期ダンジョン滞在だったが、夜の快適さのお陰でハツラツとしている。むしろ目に見えて成長する自分の力を毎日試したくて仕方ないようだった。

 ソーカも最初少し戸惑ってはいたものの調子を取り戻し前衛としての仕事を見事にこなしている。

 レンは要所要所の動きにさらに磨きがかかり、事が起きてからの対応から、ことが起こらないようにする対応の感じを掴んできている。タロはアンデッドが多くなってすこし前懸りになっているが、必要なときではきちんと下がって対応してくれている。

 そしてユキムラ達は50階層の最深部でこのアンデッドの謎の答えを見つける。



「氷龍がアンデッド化しているのか……?」



「古龍は神に近いんだろ? そんなことあり得るのか?」



 サイレスとレックスが驚くのも無理はなかった。

 この世界に何匹かいると言われている古龍、古き世から生き続ける龍族の末裔たちは、亜神のような位置づけで悠久の時を生きている。

 その古龍の一翼を担う氷龍がアンデッドに身を落としているのだ。

 異常事態であることは間違いない。慎重に注意しながら氷龍のいる部屋へと侵入していく。

 ユキムラ達に気がついた氷龍がその見た目と異なり透き通ったきれいな声で話しかけてくる。

 その声は何かに抵抗するかのように酷く苦しそうだった。



【グガァ……ナニモノダ……イヤ、ダレデモイイ……我ヲホロボセ……、

 ソシテ奥ノアノ方ヲスクッテクレ、グガガ……タノム……】



 まるで絞り出したような言葉を告げると邪悪な雰囲気がその身を包み込む。



「グルルルルルルルルル!!!」



 タロがいきり立っている。



「皆気をつけて、古龍は間違いなく強い!」



 珍しくユキムラが緊張感のある声を出す。

 氷龍ゾンビは体長は地竜程はない15m程だろうか?

 闇のオーラみたいなものを纏っている。肉体は氷に包まれているがところどころ腐敗した皮膚が無残に露わになっている。

 

「ブレスは長時間直撃を受け続けると抵抗しきれなくなるかもしれない、魔法も強力だ。

 出し惜しみ無しで思いっきりやるぞ!!」



 ユキムラの指示で皆が一気に動き出す。

 強敵大型の敵相手の場合はレン、ソーカペア、タロ、レックス、サイレスのコンビ、ユキムラがソロで動く。

 敵を囲うように、そしてバフが届く範囲に散開する。

 ブレスや魔法で一網打尽という状況を防ぐ。

 戦闘が始まるとタロが巨大化を始める。



「タロあんまり大きくなるとブレスに被弾しやすくなるから二人の補助しやすくて動きやすいとこまでにした方がいいよ」



「ワフ」



 タロは冷静にユキムラの助言を聞き入れて3mくらいまでにその大きさを抑える。

 いざとなったら二人を抱えて離脱できるサイズだ。



 氷龍ゾンビはアンデッドにありがちなゆったりとした動きであってくれたら良かったのだが、その巨体をして驚愕する速度で飛び回る。もちろんその体当たりの直撃はかなりのダメージを負ってしまうだろう、さらにブレスは予備動作がなく避けることに注意を払わなければいけない。魔法も亜神という肩書は伊達ではなく詠唱も無く降り注ぐ氷弾の雨に巨大な氷の矢、強烈な局所的な吹雪と息つく間もなく苛烈な攻撃を繰り返す。

 レン達は必死に攻撃から身を避けながら魔法防御、ブレス抵抗に気を使いながら奮闘している。



「なかなか、攻撃ができるチャンスがない……」



 先程からソーカの攻撃は浅く斬りつける程度、なかなか大技を決めるチャンスがない。

 レンも必死に補助しているが攻撃の協力というよりは防御の手伝いになってしまっている。

 タロは二人を守りながら攻撃にと大活躍、サイレスとレックスも決してお荷物になっているわけではない、やるべきことをきちんとやっている。それでもなかなか決定打を作るには至っていない。

 皆が強敵との対峙に不安と緊張を覚えている中、心の底から戦闘を楽しんでいる男もいた。



「おっし、だいたいパターンわかったぞー」



 嬉しそうに子供のような笑顔で弓を放っている。



「レン、次のブレス後に聖6撃つと2秒硬直、その後突撃停止時に聖4やると風6来るからそれ防御すれば5秒攻撃できる合わせてね」



 呪文のような指示だがユキムラ特製、魔法ハウツー本を読み込んでいるレンはすぐに理解する。

 聖6:聖属性Lv6魔法 グランドクロッシング

 聖4:聖属性Lv4魔法 ホーリストーム

 ユキムラの弓もそれに合わせて唸りを上げる。

 ソーカも硬直などには大技を合わせていく。

 氷龍ゾンビにでかい攻撃を当てると、黒いオーラを纏った氷塊がはじけ飛ぶ、そしてその氷塊がイビルアイスゴーレムやレイスへと姿を変えて襲い掛かってくる。



「タロ、サイレス、レックス! 産まれる雑魚をお願いします!」



 ユキムラは氷龍ゾンビの次の移動先のポイントに弓の奥義を放つ。



「墜龍星 嵐時雨」



 大量の矢の雨が着地と同時に降り注ぐ、ボロボロと体を包む氷塊を砕いていく。



「投槍術奥義 螺旋波状天裂槍!」



 ユキムラはいつの間にか槍に換装しており強力な一撃を放つ、放たれた槍はまるで巨大な竜巻の様に氷龍の体を撃ち抜く。左腹部を撃ち抜かれた傷がさらに捻りこまれるようにえぐりこまれていく。

 一瞬置いてから大量の体液が噴出する。 ベチャベチャと溜まった液体から小型の龍が這い出してくる。腐った液体で出来た龍もあのオーラのような物の産物なんだろう。

 その異形にレンとソーカは顔をしかめる。



「止まるな! 一気に行くぞ!!」



 いつの間にか身の丈程もある大剣を氷龍ゾンビの頭上で構えている。



「グランドヴァッシャー!! レン、ソーカ!7秒は回復にかかるここで決めるぞ!!」



 龍の顎から喉らへんまで大きく切り裂く、すぐに禍々しい氷が傷を塞ぎにかかるが氷龍ゾンビの動きは精彩をかいた。

 小型の龍はタロ達の攻撃で殲滅されている。

 レンとソーカはそれぞれが持つ最高火力を放つ。



「大いなる神の代行者よその力を暴走させよ!! 神の大剣!!」



 レンの魔法により発生した光り輝く大剣が地面から突き出す。今度は右の脇あたりに深々と突き刺さる。



「神の力を知れ! 神の怒り!!」



 続ける第二詠唱でその大剣が巨大な爆発を起こす。小型の剣が龍の体を突き破り四方八方へと飛散する。

 龍を食い破った無数の剣が龍を囲うように空中で停止する。



「罰の執行!! 光となれ!!」



 最後の詠唱を受けてその数多の剣が一斉に再度龍へと襲いかかる。

 突き刺さった剣は光を放ち不浄な肉体を削り取っていく。

 飛び散る体液も破片もない。光とともに消え去るのだ。



「哭け 鈴蟲!!」



 ソーカは氷龍ゾンビの真横に立っていた。目の前で起こっている光の爆発もまるで意に介さず。

 そして抜刀する。



 リィィィィィィィィィン



 刀身が震え淡く光を放っているようだ。



「塵芥となって消えよ、千裂斬」



 ソーカが刀を振るう後に残影のように蒼い刀筋が残る。まるでそれが桜吹雪のように龍の体へと刻まれる。

 キンと刀を納刀すると。淡い桜吹雪が消え去り、龍の体は幾千の欠片へと変えられている。

 

 ボロボロな体の氷龍を無理矢理闇のオーラが維持させようとしている。

 しかし、二人の攻撃の間にユキムラの最後の一手の準備が整った。

 素手系の最大奥義だ。



「青龍門、白虎門、朱雀門、玄武門、四門を作りて我は乞う。四神の長たる麒麟の力。

 今ここに顕現する。 四神 麒麟撃」



 氷龍を囲うように巨大な門が召喚される。

 それぞれの扉から四神を象った強力な幻獣による攻撃、更に空中に飛び上がったユキムラの体を麒麟の力が包み込み、その力のすべてを氷龍へと叩きつける。 

 四神の力と麒麟の力のすべてが重なり力の奔流が空へと突き抜けていく。



【タノ……ンダ……】



 そこには、文字通り何も残っていなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...