137 / 342
137話 奥の間
しおりを挟む
「お疲れ様ー……いてて、結構ボロボロだなー必死だったから」
「知恵熱が出てしまいそうです師匠……」
ユキムラの指示に必死に食らいついて、様々な魔法を行使していたレンはようやく開放されため息をつく。
ユキムラがポンポンと頭を撫でてあげると子犬みたいにレンは喜んでいる。
「ソーカ、左足大丈夫?」
「!? 気が付かれたんですか? ええ、もうだいぶ治っています」
ソーカの左足には大きな打撲痕が出来ていた。
氷龍の体当たりがかすめただけで粉砕骨折をしていた。
すぐにユキムラが回復魔法を飛ばして治していたのだが、ソーカはレンが治療したのかと思っていた。
「ごめんソーカねーちゃん僕気がついてなかった……」
シュンとしてしまうレンにソーカが優しく声をかける。
「レンは自分の役目を一生懸命やったんだから謝る必要はないわ。私も回復魔法は使えるしね」
「そうだよレン、あの状態は気がつけなかったよ。全体を支える作業をしていたんだから謝る必要はない」
「それにしても、最後の方の技は見たことも聞いたこともない凄まじいレベルのものでしたね……」
タロと一緒にサイレスとレックスも合流する。口々に先程の戦いでの白狼隊の活躍を褒めちぎる。
レンはノリノリでレックス達の賛辞にドヤァと胸を張るが、ユキムラは先程の事を思い出して少し赤面してしまう。
「久々に使いましたが、設置に時間がかかるので皆さんの協力があって助かりました」
気恥ずかしさを誤魔化すために話題を変えていく。
「タロもありがとね。お二人も大変だったでしょうに」
「いやー、こんなに血湧き肉躍る戦いに参加できただけでも感謝しても仕切れない。
タロが攻守に渡ってフォローしてくれたのでなんとか生きて終えられたよ、ありがとう」
タロに深々と頭を下げる二名。タロは嬉しそうに尻尾を振っている。
「さて、宝と扉か……奥の人を助けろって言ってたよね」
VOではたまに連続してボス戦がある時があった。
ただ、普通は最初に出たボスが妙に弱かったりと分かり易いフラグがあったりする。
多分大丈夫だろうけど一応用心はして全員の回復は完璧に行っておく。
アンデッド氷龍を倒した報酬である宝の内容は、慣れてきていた二人も顎が外れかけるものだった。
「お、アイスソードだ。コロシテデモウバイトル」
「なんですか師匠それは?」
「ああ、ちょっとしたギャグなんだけどね、武器としてもかなりハイレベルだよ。
魔力を込めて振るうと吹雪が起こせます」
「な、なんですかそれ……」
「オートスキルって奴なんだけど、たぶんフィールドで使うと気象が狂うね」
「また女神から苦情が来そうですね」
「ソーカの言うとおりこれはしまっておこう」
「今女神って……」
適当にごまかした。
それ以外にも様々な宝を手に入れ休憩も十分に取れた。
残るは部屋の奥の扉だけだ。
「さて、何が出るか。開けるよ」
扉の向こうには氷の間が広がっていた。
そして中央に天高くから地面に向かって、巨大な氷の柱がそびえていた。
「師匠! あそこ!」
レンが指差すところにまるで人が貼り付けられているかのように、しかし、その胸には大きな穴。
男性と思われるその人は真っ白な髪、真っ白な肌、そして巨大な胸の穴。
生きてはいないだろう状態で貼り付けられていた……
「これは……? どういうことなんだ……?」
ユキムラが柱に近づいていくと、アイテムボックスから勝手に時の女神クロノスから貰った懐中時計が現れる。
「おおっと!」
突然空中に現れた時計を受け止めようとするが、時計は空中に浮いている。
柱に吊るされた人物から、はらりと一粒の雪の結晶が舞い落ちてくる。
ユキムラ達はそのひと粒の雪に思わず見とれてしまう。
ふわりふわりと落ちてくる美しい結晶。
その白き輝きが懐中時計に触れると、キーーーーーーーーーーーーーンと高い音を発し、周囲を静寂が包む。
「これは……?」
先程まで周囲の氷がピシピシと立てていた音なども全て消えて、耳に痛いほどの無音の世界。
「師匠、これは……?」
「ユキムラさん……」
不安そうな二人。
「ワンワン!」
タロがサイレスとレックスに吠える。二人はまるで凍ってしまったかのように一切の動きを失っていた。
「サイレスさん? レックスさん!?」
思わず駆け寄ろうとするユキムラを謎の声が遮る。
『そのもの達は来訪者の加護を受けていないからな』
「誰だ!?」
レンとソーカが武器に力を込める。
『ありがとう、君たちがクロノスの力を持ってきてくれたのでこうして話すことができる』
ユキムラ達の目の前に、あの貼り付けられた男性がふわりと音もなく舞い降りる。
頭上には今も変わらず貼り付けられた姿は残っている。
『私の最後の力の残り滓がクロノスの力を借りて話しかけているんだよ』
その男性は優しく微笑む。ユキムラでもドキリとしてしまうほど透き通った爽やかな笑みだ。
真っ白な長髪が揺れる。肌も恐ろしいほどに白い。細めな目が瞳の輝きを隠している。
髪と同じく真っ白なローブを羽織っている。浮世離れした人物に見える。
『紹介が遅れたね、私の名前はアイルス。氷と知性の神だ。
まぁ、すでに事切れて2000年は経っているけどね』
「2000年……?」
『ああ、2000年程前に魔神の手先に殺られてしまってね。
外に龍がいただろ?
彼女が守っていてくれたんだが、私の力もとうとう途切れてしまって。
彼女には悪いことをした、あの魔神の力に抵抗し続けてくれていたんだが、私の力が残り少ないとわかると、その最後の生命の炎まで私に……彼女は無事に逝けたかい?』
本当に悲しそうに話すアイルス。
ユキムラは彼女であった龍の最後を説明する。
『そうか……、しかし、まさかここまで非道な手に出るとはな。
魔神に対して静観していたのが間違いだったようだ。
来訪者も呼んだとなれば主も覚悟を決めたのだろう』
アイルスはその細い目を開く。
吸い込まれそうな美しい青い瞳。
そしてとんでもないことを言う。
『今から君に過去へ跳んでもらう』
「知恵熱が出てしまいそうです師匠……」
ユキムラの指示に必死に食らいついて、様々な魔法を行使していたレンはようやく開放されため息をつく。
ユキムラがポンポンと頭を撫でてあげると子犬みたいにレンは喜んでいる。
「ソーカ、左足大丈夫?」
「!? 気が付かれたんですか? ええ、もうだいぶ治っています」
ソーカの左足には大きな打撲痕が出来ていた。
氷龍の体当たりがかすめただけで粉砕骨折をしていた。
すぐにユキムラが回復魔法を飛ばして治していたのだが、ソーカはレンが治療したのかと思っていた。
「ごめんソーカねーちゃん僕気がついてなかった……」
シュンとしてしまうレンにソーカが優しく声をかける。
「レンは自分の役目を一生懸命やったんだから謝る必要はないわ。私も回復魔法は使えるしね」
「そうだよレン、あの状態は気がつけなかったよ。全体を支える作業をしていたんだから謝る必要はない」
「それにしても、最後の方の技は見たことも聞いたこともない凄まじいレベルのものでしたね……」
タロと一緒にサイレスとレックスも合流する。口々に先程の戦いでの白狼隊の活躍を褒めちぎる。
レンはノリノリでレックス達の賛辞にドヤァと胸を張るが、ユキムラは先程の事を思い出して少し赤面してしまう。
「久々に使いましたが、設置に時間がかかるので皆さんの協力があって助かりました」
気恥ずかしさを誤魔化すために話題を変えていく。
「タロもありがとね。お二人も大変だったでしょうに」
「いやー、こんなに血湧き肉躍る戦いに参加できただけでも感謝しても仕切れない。
タロが攻守に渡ってフォローしてくれたのでなんとか生きて終えられたよ、ありがとう」
タロに深々と頭を下げる二名。タロは嬉しそうに尻尾を振っている。
「さて、宝と扉か……奥の人を助けろって言ってたよね」
VOではたまに連続してボス戦がある時があった。
ただ、普通は最初に出たボスが妙に弱かったりと分かり易いフラグがあったりする。
多分大丈夫だろうけど一応用心はして全員の回復は完璧に行っておく。
アンデッド氷龍を倒した報酬である宝の内容は、慣れてきていた二人も顎が外れかけるものだった。
「お、アイスソードだ。コロシテデモウバイトル」
「なんですか師匠それは?」
「ああ、ちょっとしたギャグなんだけどね、武器としてもかなりハイレベルだよ。
魔力を込めて振るうと吹雪が起こせます」
「な、なんですかそれ……」
「オートスキルって奴なんだけど、たぶんフィールドで使うと気象が狂うね」
「また女神から苦情が来そうですね」
「ソーカの言うとおりこれはしまっておこう」
「今女神って……」
適当にごまかした。
それ以外にも様々な宝を手に入れ休憩も十分に取れた。
残るは部屋の奥の扉だけだ。
「さて、何が出るか。開けるよ」
扉の向こうには氷の間が広がっていた。
そして中央に天高くから地面に向かって、巨大な氷の柱がそびえていた。
「師匠! あそこ!」
レンが指差すところにまるで人が貼り付けられているかのように、しかし、その胸には大きな穴。
男性と思われるその人は真っ白な髪、真っ白な肌、そして巨大な胸の穴。
生きてはいないだろう状態で貼り付けられていた……
「これは……? どういうことなんだ……?」
ユキムラが柱に近づいていくと、アイテムボックスから勝手に時の女神クロノスから貰った懐中時計が現れる。
「おおっと!」
突然空中に現れた時計を受け止めようとするが、時計は空中に浮いている。
柱に吊るされた人物から、はらりと一粒の雪の結晶が舞い落ちてくる。
ユキムラ達はそのひと粒の雪に思わず見とれてしまう。
ふわりふわりと落ちてくる美しい結晶。
その白き輝きが懐中時計に触れると、キーーーーーーーーーーーーーンと高い音を発し、周囲を静寂が包む。
「これは……?」
先程まで周囲の氷がピシピシと立てていた音なども全て消えて、耳に痛いほどの無音の世界。
「師匠、これは……?」
「ユキムラさん……」
不安そうな二人。
「ワンワン!」
タロがサイレスとレックスに吠える。二人はまるで凍ってしまったかのように一切の動きを失っていた。
「サイレスさん? レックスさん!?」
思わず駆け寄ろうとするユキムラを謎の声が遮る。
『そのもの達は来訪者の加護を受けていないからな』
「誰だ!?」
レンとソーカが武器に力を込める。
『ありがとう、君たちがクロノスの力を持ってきてくれたのでこうして話すことができる』
ユキムラ達の目の前に、あの貼り付けられた男性がふわりと音もなく舞い降りる。
頭上には今も変わらず貼り付けられた姿は残っている。
『私の最後の力の残り滓がクロノスの力を借りて話しかけているんだよ』
その男性は優しく微笑む。ユキムラでもドキリとしてしまうほど透き通った爽やかな笑みだ。
真っ白な長髪が揺れる。肌も恐ろしいほどに白い。細めな目が瞳の輝きを隠している。
髪と同じく真っ白なローブを羽織っている。浮世離れした人物に見える。
『紹介が遅れたね、私の名前はアイルス。氷と知性の神だ。
まぁ、すでに事切れて2000年は経っているけどね』
「2000年……?」
『ああ、2000年程前に魔神の手先に殺られてしまってね。
外に龍がいただろ?
彼女が守っていてくれたんだが、私の力もとうとう途切れてしまって。
彼女には悪いことをした、あの魔神の力に抵抗し続けてくれていたんだが、私の力が残り少ないとわかると、その最後の生命の炎まで私に……彼女は無事に逝けたかい?』
本当に悲しそうに話すアイルス。
ユキムラは彼女であった龍の最後を説明する。
『そうか……、しかし、まさかここまで非道な手に出るとはな。
魔神に対して静観していたのが間違いだったようだ。
来訪者も呼んだとなれば主も覚悟を決めたのだろう』
アイルスはその細い目を開く。
吸い込まれそうな美しい青い瞳。
そしてとんでもないことを言う。
『今から君に過去へ跳んでもらう』
10
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる