147 / 342
147話 ハイランベルグ家
しおりを挟む
今日はハイランベルグ家に豊漁祭という祭りの打ち合わせに来ている。
豊漁祭とは簡単に言えば忘年会で、一年間の海の恵みに感謝をして大騒ぎをする。
もちろんサナダ商店は多額の出資や協力を申し出ている。
カレンがタロに逢いたいからという願いをゲールが断れるはずもないという一面もある。
タロはたまにフラッとお屋敷にいってカレンと戯れているそうだ。
最近は内政づくしで看板犬としての役目が退屈なようである。
「タローーー!!」
ひしっとタロに抱きつくカレン、今日はおめかししている。黄色いドレスが良く似合っている。
タロは毛も抜けないのでドレスを汚すこともない。本当に出来た犬だ。
カレンはタロにまたがりぴょーんと防壁を飛び越えて草原の方に散歩に行ってしまった。
最初はハラハラしていたゲールも一度タロが魔物を倒しているのを見て完全に信頼している。
屋敷のものが植木の世話をしている時に落下をしてしまって骨折したときも魔法で治して、屋敷の人びとからの信頼も厚い。
「よく来てくれたユキムラ殿。今日は天気がいいので外が見える場に席を設けた。
仕事の話はさっさと終わらせて寛いでくれ!」
ゲールが快くユキムラ達を迎える。
わずか3ヶ月でこの街全体の経済活動を倍以上にし、街に古き良き活気を取り戻してくれたユキムラにゲールは心酔していた。
そしてこの日のユキムラからの提言はさらにそれを加速させる。
「つまり、皆の生産力が上がるだけでなく、なにもないところから資源を産み出せる……と?」
「多少は異なりますが、端的に言えばそうなります」
「しかし、そのようなこと……いや、疑うわけではないのですが……」
「これは秘中の秘なれどゲールには教えます。私は来訪者なのです」
「な、なんと、伝説の……それならば……」
来訪者、便利な言葉です。
「ただ、私が来訪者だとわかるときっとこの街は……滅ぶでしょう、カレンの命も……」
「話しません!! 決してこのことは!!」
こんな感じで脚本レンでうまいことスキル伝達を秘匿しつつ労働力を確保していく。
帝国という国は領主が居て街があり、街に住むものは領主のために尽くす。
というシステムが長年続いているために基本的に移住は起こりにくい、出稼ぎで一時的に発達した街や鉱山を有するような都市へと行ったりする。
ボーリングの街も沢山の出稼ぎ労働者がいた。
しかし、今はボーリングの街はゴールドラッシュ。
皆労働者達を呼び戻し、ボーリングの街で働くようになる。
スキルを用いた仕事はいくらでもある。
ボーリングの街は過去の賑わいを取り戻していく。
もう一つの問題が領土問題だ。
辺境と言って良いボーリングの街周囲は幸運にも他の領地がない。
そこで鉱石を採掘できる山岳部、森林部をまるごと領土とするのも問題はない。
管理できる範囲で無理がないように拡大させる。
もちろん帝都への通達は必要なので大量の献金ワイロ、鉱石や武器防具で目立たぬように領土を拡張させた。
もちろんこの裏ではレンが暗躍している。
従業員も確保できれば他の街にもゆっくりと店舗展開をしていく。
ユキムラの事を崇拝し真に信頼のおける人員を少しづつ増やし、店舗を任せる。
そしてその街でもまた同志を集めていく。
何も帝国に反旗を翻したいんじゃない、むしろ逆だ。
各地を豊かにして帝国全体を強固なものにする。
そういう大義名分のためにサナダ商店はひっそりと、しかし着実に勢力を拡大させていく。
「南の街はケラリス教国との貿易で非常に豊かなのであまり得られるものが少ないと思います。
領主であるキーリング侯爵も第一皇子との太いパイプがある人物なのでそこは外していきましょう」
計画立案はレンに任せっきりだ。帝国内の情報収集を目的とする鴉なんて部隊を作って各地の情報をしっかりと把握している。
「ユキムラさん西方の魔物の巣は壊滅させてきました。リーデルの街の領主が今度お会いになりたいそうです」
「ありがとうソーカ、それにソーカ隊の皆もお疲れ様」
「「「「ハイ!」」」」
「ユキムラさんまでソーカ隊って……もうっ……!」
ソーカ隊とは商店における物資輸送の際の護衛などを受け持つ自警団のようなもので隊長であるソーカを慕うものが多いのでソーカ隊と呼ばれる。
ヴァリィは本業の商品開発に夢中なのでヴァリィ隊というムキムキの筋肉の部隊はいない。
いじられて膨れるソーカだったが、この間のこと思い出してニヤニヤしだす。
ソーカ隊は今でこそ規律の取れた隊になったが、最初はソーカを侮った力自慢が多く、またソーカの女性としての面を求めて近づいてくるものも多かった。
それを聞いたユキムラは不機嫌になって、入隊テストといって全員をボコボコにした。
「ソーカも、俺に近いぐらいは強いぞ。でかい口叩くなら腕を磨け、それにな……
そ、ソーカは俺の彼女だから、そういう目で見ると次は真剣でやりあうからねぁ!」
あの場面を録画していなかったことはソーカ最大の不覚だったが、そのせいで大切な思い出としていつまでも反芻してニヤニヤしている。
そんな大きなこと言ったくせに、相変わらず手をつなぐだけでドキマギしているユキムラがソーカはたまらなく好きだった。
それからしばらく二人はソーカの彼氏、ユキムラの彼女とからかわれてゆでダコみたいになるハメになる。中学生か!?
辺境に居る貴族はだいたい権力争いに疲れた大らかな人達が多いので、ある程度街を潤わせた上で少しづつユキムラは自らの出自を明かして信者とする。
そんなことを繰り返していたらゲッタルヘルン大陸の東側三分の一程のエリアの領主は皆サナダ商会という結びつきが出来ていた。
ユキムラ達がこの地へ降りてわずか1年半ほどだ。
こうして、ハイランベルグ家は帝国における東の雄ゆうにいつの間にか、なってしまっていたのだった。
本人の知らない間に……
豊漁祭とは簡単に言えば忘年会で、一年間の海の恵みに感謝をして大騒ぎをする。
もちろんサナダ商店は多額の出資や協力を申し出ている。
カレンがタロに逢いたいからという願いをゲールが断れるはずもないという一面もある。
タロはたまにフラッとお屋敷にいってカレンと戯れているそうだ。
最近は内政づくしで看板犬としての役目が退屈なようである。
「タローーー!!」
ひしっとタロに抱きつくカレン、今日はおめかししている。黄色いドレスが良く似合っている。
タロは毛も抜けないのでドレスを汚すこともない。本当に出来た犬だ。
カレンはタロにまたがりぴょーんと防壁を飛び越えて草原の方に散歩に行ってしまった。
最初はハラハラしていたゲールも一度タロが魔物を倒しているのを見て完全に信頼している。
屋敷のものが植木の世話をしている時に落下をしてしまって骨折したときも魔法で治して、屋敷の人びとからの信頼も厚い。
「よく来てくれたユキムラ殿。今日は天気がいいので外が見える場に席を設けた。
仕事の話はさっさと終わらせて寛いでくれ!」
ゲールが快くユキムラ達を迎える。
わずか3ヶ月でこの街全体の経済活動を倍以上にし、街に古き良き活気を取り戻してくれたユキムラにゲールは心酔していた。
そしてこの日のユキムラからの提言はさらにそれを加速させる。
「つまり、皆の生産力が上がるだけでなく、なにもないところから資源を産み出せる……と?」
「多少は異なりますが、端的に言えばそうなります」
「しかし、そのようなこと……いや、疑うわけではないのですが……」
「これは秘中の秘なれどゲールには教えます。私は来訪者なのです」
「な、なんと、伝説の……それならば……」
来訪者、便利な言葉です。
「ただ、私が来訪者だとわかるときっとこの街は……滅ぶでしょう、カレンの命も……」
「話しません!! 決してこのことは!!」
こんな感じで脚本レンでうまいことスキル伝達を秘匿しつつ労働力を確保していく。
帝国という国は領主が居て街があり、街に住むものは領主のために尽くす。
というシステムが長年続いているために基本的に移住は起こりにくい、出稼ぎで一時的に発達した街や鉱山を有するような都市へと行ったりする。
ボーリングの街も沢山の出稼ぎ労働者がいた。
しかし、今はボーリングの街はゴールドラッシュ。
皆労働者達を呼び戻し、ボーリングの街で働くようになる。
スキルを用いた仕事はいくらでもある。
ボーリングの街は過去の賑わいを取り戻していく。
もう一つの問題が領土問題だ。
辺境と言って良いボーリングの街周囲は幸運にも他の領地がない。
そこで鉱石を採掘できる山岳部、森林部をまるごと領土とするのも問題はない。
管理できる範囲で無理がないように拡大させる。
もちろん帝都への通達は必要なので大量の献金ワイロ、鉱石や武器防具で目立たぬように領土を拡張させた。
もちろんこの裏ではレンが暗躍している。
従業員も確保できれば他の街にもゆっくりと店舗展開をしていく。
ユキムラの事を崇拝し真に信頼のおける人員を少しづつ増やし、店舗を任せる。
そしてその街でもまた同志を集めていく。
何も帝国に反旗を翻したいんじゃない、むしろ逆だ。
各地を豊かにして帝国全体を強固なものにする。
そういう大義名分のためにサナダ商店はひっそりと、しかし着実に勢力を拡大させていく。
「南の街はケラリス教国との貿易で非常に豊かなのであまり得られるものが少ないと思います。
領主であるキーリング侯爵も第一皇子との太いパイプがある人物なのでそこは外していきましょう」
計画立案はレンに任せっきりだ。帝国内の情報収集を目的とする鴉なんて部隊を作って各地の情報をしっかりと把握している。
「ユキムラさん西方の魔物の巣は壊滅させてきました。リーデルの街の領主が今度お会いになりたいそうです」
「ありがとうソーカ、それにソーカ隊の皆もお疲れ様」
「「「「ハイ!」」」」
「ユキムラさんまでソーカ隊って……もうっ……!」
ソーカ隊とは商店における物資輸送の際の護衛などを受け持つ自警団のようなもので隊長であるソーカを慕うものが多いのでソーカ隊と呼ばれる。
ヴァリィは本業の商品開発に夢中なのでヴァリィ隊というムキムキの筋肉の部隊はいない。
いじられて膨れるソーカだったが、この間のこと思い出してニヤニヤしだす。
ソーカ隊は今でこそ規律の取れた隊になったが、最初はソーカを侮った力自慢が多く、またソーカの女性としての面を求めて近づいてくるものも多かった。
それを聞いたユキムラは不機嫌になって、入隊テストといって全員をボコボコにした。
「ソーカも、俺に近いぐらいは強いぞ。でかい口叩くなら腕を磨け、それにな……
そ、ソーカは俺の彼女だから、そういう目で見ると次は真剣でやりあうからねぁ!」
あの場面を録画していなかったことはソーカ最大の不覚だったが、そのせいで大切な思い出としていつまでも反芻してニヤニヤしている。
そんな大きなこと言ったくせに、相変わらず手をつなぐだけでドキマギしているユキムラがソーカはたまらなく好きだった。
それからしばらく二人はソーカの彼氏、ユキムラの彼女とからかわれてゆでダコみたいになるハメになる。中学生か!?
辺境に居る貴族はだいたい権力争いに疲れた大らかな人達が多いので、ある程度街を潤わせた上で少しづつユキムラは自らの出自を明かして信者とする。
そんなことを繰り返していたらゲッタルヘルン大陸の東側三分の一程のエリアの領主は皆サナダ商会という結びつきが出来ていた。
ユキムラ達がこの地へ降りてわずか1年半ほどだ。
こうして、ハイランベルグ家は帝国における東の雄ゆうにいつの間にか、なってしまっていたのだった。
本人の知らない間に……
10
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる