老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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150話 リンガー

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 リンガーは細剣レイピア使いだった。

 しかも超一級の。



「スプラッシュフラッシュ」



 目に見えぬほどの速度の刺突がモンスターの体を削っていく。

 もちろんバフもデバフも完璧ではあるものの、見事な攻撃だ。

 風龍の洞窟の敵は蟲系、飛行系の敵が多い。



「リンガーさん強いんですね。というか、何者なんですか?」



「ははは、一応この国でNo1張ってますから」



「へ? そんな凄い人なのリン?」



「ええ、今ので確信しました。光速のリンガーさん。本物なんですね」



「そう言ったじゃないですか」



 不敵な笑みだ。絶対にこの人はいじめっ子だ。レンはそう確信した。



「いやー、本当にこんなところがあるんだね。こんな手強い敵、見たことも聞いたこともなかった。

 ついてきてほんとに良かったよ。伝承どおりこれで僕はもっと強くなれる」



「そう言えばリンガーさんってレベルはおいくつなんですか?」



 ソーカはどうもこのリンガーが苦手でちょっと距離を取っていた。



「おや、ソーカさん。そういうことは今度二人っきりの時にでも……っと、ユキムラ殿の目つきが怖いので冗談はこれぐらいで、私は171です」



 レベルもおかしいが、レイピアがおかしい。一見すると普通のレイピアだがユキムラは武器オタクだ。



「その武器、無銘。でしょ?」



「ほー、ユキムラ殿は博識であられる。伝説の武器にもご精通か」



「師匠、名前がないのがそんなに凄いんですか?」



「違う。『無銘』が名前なんだ。騎士の精神を体現化した物。

 聖剣の一つだよ。名を誇ることなく、折れること無く、貫けぬもの無し。良いものだよ」



「伝説の武器を前に落ち着いてますね、というか皆さん?」



「まぁ、聖剣やら魔剣はいろいろと見てきたからねぇ……」



「くっ、はーっはっは! つくづく君たちに付いてきてよかったよ!」



「皆さん、おしゃべりはそこまでで。次の敵が来ます」



 現在のパーティ構成はソーカ、ヴァリィ、リンガーが前衛、タロは中衛、レンが後衛。

 バランスをとるならユキムラが後衛なんだが、現在ハイレベルなところを突き進んでいるので最前列でしかも広範囲高火力特化という事で二刀斧、大型魔法型というでたらめな戦闘をしている。

 どうしても大味な戦闘になりやすい構成だがそれをユキムラと、来訪者としてのステータスが重なるととんでもないことになる。

 やや、あいつ一人いればいいんじゃないか? 状態になっている。

 それだけLv300近い敵相手だと事故が怖いということだ。

 やられる前にヤルを体現している。



「ユキムラ殿は化け物だな……」



 目の前の敵を塵芥に変えながらリンガーはつぶやく。



「リンガーさんもあまり人のこと言えないような……」



「ひどいなぁレン君は、君の魔法も常識外れだよね……、まったく。少しは出し抜けたかと思ったが、このような圧倒的な力があるのか……」



 可能性に入れていなかった自分が消されていた可能性に背筋に冷たいものが走る。

 冷静に全員の戦いぶりをリンガーは分析をしていた。



(ユキムラ殿、まるで相手にならない。たぶん何もできずにコテンパンにやられる。

 レン君、厳しい。底が見えない、こんなに多彩な魔法を使う相手に戦ったことがない。

 ソーカさん、これも厳しい。テンゲンの刀をあそこまで見事に操る剣士は見たことがない。そして美しい。素敵だ。

 ヴァリィさん、相性が悪い。防御に徹しられては崩せる気もしない、攻められたら防げる気がしない。

 タロちゃん。瞬殺されるだろうな……

 なんだこれ、一応私は帝国では並ぶ者はいないと言われているんだがな……)



 そんなリンガーの最後のプライドが根っこから崩されるのは、このダンジョンで手に入るアイテムと、食事と寝床だった。



「お、オリハルコン……だと……?」



 自分の立場にいてもそんなものは見たこともない、神話の話だ。

 しかもそれを加工すると簡単にユキムラは言ってのける。だれもそれに異を唱えない。



「こ、これが、ダンジョンでの野営だと……?」



 自分のいる場所が信じられなかった。帝都の超一流のホテルに泊まっているかそれ以上に快適な空間が、ダンジョン内部で味わっているのだ。



「こ、これが生の魚の味。それ以外の料理も味わったことがない……」



 この世界の人間に一番効果があるのはやはり刺身。そして最近ユキムラがはまっているチャーハンだ。

 ただの葱と卵だけのシンプルなチャーハンなのだが、珍しくスキルじゃなくて手作りでユキムラのマイブームになっている。帝国領ではこういう調理法がないために新鮮で、それでいて家庭的で、単純だからこそ旨かった。

 最初の一日でリンガーの心は完全にユキムラたちに敗北した。



「ユキムラ殿、そして皆さま。今までの非礼を詫びます。

 私の本当の名はゲッタルヘルン・リンガー。この帝国の第3皇位継承者です。

 そしてゲッタルヘルン帝国軍親衛隊隊長、光速のリンガーとも呼ばれています。

 そして、もう一つの顔が第2皇子ゲッタルヘルン・フォン・ライガーの影の部隊 月影シャーテンモーナットの隊長でもあります。

 最後に、この帝国でこの事実を知るものはごくわずかのみ、大神官や最高官達。

 そして父と兄弟だけですが……」



 リンガーは首飾りのような魔道具をはずす。

 リンガーの身体から光の粒子のようなものが飛び去ると、一人の女性が立っていた。



「私は第一皇女 ゲッタルヘルン・リンガーでございます。以後お見知りおきを」



 美しい黒に近い青い髪、透き通るような白い肌、銀色に近い美しい瞳、自己主張の激しい胸元、女性らしい腰からの安定感のあるライン。芸術作品のような非の打ちどころのない絶世の美女がそこに立っていた。

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