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149話 謎の人物
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決意を新たに風龍の住む山へと侵入する洞窟前に立つ白狼隊。
目の前にいつもの違和感のある空間がある。
「ヴァリィが最後のイベント分レベルが低いけど、一番高い自分が作るね。
ヴァリィは大丈夫だと思うけど十分に注意してね」
「ええ、わかってるわ。命は大事に!」
振り上げた拳になんとなく全員が拳を合わせる。
「それじゃぁ、行こうか」
参考までにユキムラはLv287、レンはLv285、ソーカはLv280、ヴァリィがLv180だ。
やはり一度女神絡みのダンジョンをこなすと大きくレベルが上がる。
まさにダンジョンへと侵入しようとした瞬間、タロが唸りを上げる。
「ん? どうしたのタロ?」
「ガウ!!」
タロが戦闘態勢をとる。
「皆気をつけて!」
全員臨戦態勢になる。タロが見つめているのは山道だ。
俯瞰視点で見ても異常は見当たらない。
「タロ、何か居るの?」
「グルルルルル……」
タロの警戒が解けない、しかも普段なら単騎でかけるタロが飛び込まない。
「全員で注意して様子を確認する。俺が先頭に立つ」
何が来てもすぐに対応できるように槍に装備を変える。
「まったまった! 敵じゃない、出て行くから警戒を解いてくれきちんと説明する!」
道の先から声がする。よく通る綺麗な声だ。
道の先の岩陰からすっと人影が出てくる。鎧で判断するに帝国の兵のような装いだ。
少し軽装ではあるが帝国の権威を示す黒色の鎧は通常の人には所持は許されない。
「一応このマントはそれなりの魔道具なんだがな、何をするか接近したのが失敗だったか……」
「それで、貴方は何者なのですか? どうやら帝国関係の人みたいですが……?」
レンが警戒しながら問う。
いつでも動けるように全員身構えている。
「待ってくれ待ってくれ、隠れていたのは謝るが、君たちが悪いんだぞ。このあたりは立入禁止なはずだ。そこに向かう一団を発見したらいくら非番とは言え見過ごせないだろ……?」
その人物はやはり帝国の衛兵らしい。
風龍の周囲のエリアは無駄な刺激を与えないために進入禁止となっている。
レンによる工作で目をつぶってもらっていたが、イレギュラーな出来事は仕方ない。
「貴方はどこの所属ですか?」
「そういや名乗っていなかったな。私はリンガー。そろそろ警戒を解いてくれるとありがたいのだが?」
「質問に答えてください」
レンの声色が強くなる。その人物はにやりと笑うとレンに近づいてくる。
「身分証を見せればいいだろ、ほら?」
『私の話に合わせろ、さもないと私の手のものが君たち商会のやっていることを皇帝に報告する』
差し出された身分証にはそう書かれていた。レンは心臓が握られるような気分になるが、動揺は出さない。
「ああ、なるほど巡回ご苦労様です」
「レン、大丈夫なの?」
「ええ、地方の衛兵の方です。師匠少々お待ち下さい。話をつけて参ります」
レンは3人と少し距離を取ってその兵士と向き合う。
その瞳は冷静さとドス黒さが同居している。
この人間が敵なら自分がなんとかしないと師匠を守らないといけない。強い意志がそれを覆っている。
『僕に何をさせたい』
レンが小声で話す。魔法を使った短距離通話だ。
『君の噂は聞いている。君の鴉と言ったっけ? 優秀だな。
私は第二皇子に親しいものだ。君たちが支援してくれていると聞いているが、敵にはならないはずだが?』
鴉の名前まで把握されている。思っている以上に情報を握られている。
しかし動揺するわけにはいかない、レンにとって大事なのはユキムラに迷惑をかけないことだ。
『繰り返す、何をさせたい』
『君たちは何をするんだ?』
『隠しても無駄でしょうね、我々は風龍の洞窟へ侵入します。
我らのリーダーは来訪者です。その力で異界の門を開いて特別なダンジョンへ行きます。
強力な敵がいますが得られるものは莫大です。
僕たちはこれから先の戦いのためにそれが必要なんです』
『なるほどね……君は僕を殺す気だね』
レンは自分の覚悟を正確に読まれていたことに驚くが、その覚悟は揺るぎない。
『だとしたら?』
『それは困るな。言い忘れたが私は皇位継承権をもつ』
「え!?」
思わぬ不意打ちに思わず声が出てしまった。
「いやー、レンくんに相談していたら僕もそのダンジョンへ連れてってくれるって。
凄いんだろ? 宝。ちょっと一緒に入らせてくれよー」
「レン、そこまで話したのか? 珍しいな。まぁレンがそこまで話すなら信用に値するんだろ。
ただ、かなり危険な道になります。我々で守りきれるか保証はできませんよ、えーっと……」
「リンガーです。私も自分で言うのもあれですが結構やりますから、よろしくお願いしますユキムラさん」
ユキムラと握手をするリンガー。
深い美しい青い髪を腰まで伸ばした、改めて見ると非常に整った顔立ちをしている。
色気を感じさせる美青年。少しきつい目つきが逆に女性を虜にする。
ソーカをみてパチリとウィンクする。ユキムラの警戒心があがる。
「師匠、すみません。そういう話になりました」
額に脂汗を流しながらレンがユキムラの側へと戻る。
「まぁ、こうなっては仕方ないさ。最後までちゃんと隠れていなかったのが悪かった、俺の判断ミスだ」
ユキムラのレンへの信頼がレンにとっては痛かった。
『レンちゃん、いざとなったら私がやるわよ?』
秘匿通信がヴァリィから来る。経験豊かなヴァリィは異変に気がついているようだ。
『いえ、警戒は必要ですが、敵ではないです。すみません今はこれだけで……』
回線が閉じる。
わかったわ。ヴァリィの声がレンの耳に届いたような気がした。
謎の人物リンガーが加わった一行は装備などを確認する。
リンガーの装備は驚くほど、いや異質なほどに上等なものだった。
ユキムラもこの人物が只者ではないことは気がつく。
属性防御を完璧にするマントを貸すだけで済んだほどだ。
あと緊急時の防御壁を作るリング。それを貸し与え暗雲立ち込めるダンジョンへと侵入していく。
目の前にいつもの違和感のある空間がある。
「ヴァリィが最後のイベント分レベルが低いけど、一番高い自分が作るね。
ヴァリィは大丈夫だと思うけど十分に注意してね」
「ええ、わかってるわ。命は大事に!」
振り上げた拳になんとなく全員が拳を合わせる。
「それじゃぁ、行こうか」
参考までにユキムラはLv287、レンはLv285、ソーカはLv280、ヴァリィがLv180だ。
やはり一度女神絡みのダンジョンをこなすと大きくレベルが上がる。
まさにダンジョンへと侵入しようとした瞬間、タロが唸りを上げる。
「ん? どうしたのタロ?」
「ガウ!!」
タロが戦闘態勢をとる。
「皆気をつけて!」
全員臨戦態勢になる。タロが見つめているのは山道だ。
俯瞰視点で見ても異常は見当たらない。
「タロ、何か居るの?」
「グルルルルル……」
タロの警戒が解けない、しかも普段なら単騎でかけるタロが飛び込まない。
「全員で注意して様子を確認する。俺が先頭に立つ」
何が来てもすぐに対応できるように槍に装備を変える。
「まったまった! 敵じゃない、出て行くから警戒を解いてくれきちんと説明する!」
道の先から声がする。よく通る綺麗な声だ。
道の先の岩陰からすっと人影が出てくる。鎧で判断するに帝国の兵のような装いだ。
少し軽装ではあるが帝国の権威を示す黒色の鎧は通常の人には所持は許されない。
「一応このマントはそれなりの魔道具なんだがな、何をするか接近したのが失敗だったか……」
「それで、貴方は何者なのですか? どうやら帝国関係の人みたいですが……?」
レンが警戒しながら問う。
いつでも動けるように全員身構えている。
「待ってくれ待ってくれ、隠れていたのは謝るが、君たちが悪いんだぞ。このあたりは立入禁止なはずだ。そこに向かう一団を発見したらいくら非番とは言え見過ごせないだろ……?」
その人物はやはり帝国の衛兵らしい。
風龍の周囲のエリアは無駄な刺激を与えないために進入禁止となっている。
レンによる工作で目をつぶってもらっていたが、イレギュラーな出来事は仕方ない。
「貴方はどこの所属ですか?」
「そういや名乗っていなかったな。私はリンガー。そろそろ警戒を解いてくれるとありがたいのだが?」
「質問に答えてください」
レンの声色が強くなる。その人物はにやりと笑うとレンに近づいてくる。
「身分証を見せればいいだろ、ほら?」
『私の話に合わせろ、さもないと私の手のものが君たち商会のやっていることを皇帝に報告する』
差し出された身分証にはそう書かれていた。レンは心臓が握られるような気分になるが、動揺は出さない。
「ああ、なるほど巡回ご苦労様です」
「レン、大丈夫なの?」
「ええ、地方の衛兵の方です。師匠少々お待ち下さい。話をつけて参ります」
レンは3人と少し距離を取ってその兵士と向き合う。
その瞳は冷静さとドス黒さが同居している。
この人間が敵なら自分がなんとかしないと師匠を守らないといけない。強い意志がそれを覆っている。
『僕に何をさせたい』
レンが小声で話す。魔法を使った短距離通話だ。
『君の噂は聞いている。君の鴉と言ったっけ? 優秀だな。
私は第二皇子に親しいものだ。君たちが支援してくれていると聞いているが、敵にはならないはずだが?』
鴉の名前まで把握されている。思っている以上に情報を握られている。
しかし動揺するわけにはいかない、レンにとって大事なのはユキムラに迷惑をかけないことだ。
『繰り返す、何をさせたい』
『君たちは何をするんだ?』
『隠しても無駄でしょうね、我々は風龍の洞窟へ侵入します。
我らのリーダーは来訪者です。その力で異界の門を開いて特別なダンジョンへ行きます。
強力な敵がいますが得られるものは莫大です。
僕たちはこれから先の戦いのためにそれが必要なんです』
『なるほどね……君は僕を殺す気だね』
レンは自分の覚悟を正確に読まれていたことに驚くが、その覚悟は揺るぎない。
『だとしたら?』
『それは困るな。言い忘れたが私は皇位継承権をもつ』
「え!?」
思わぬ不意打ちに思わず声が出てしまった。
「いやー、レンくんに相談していたら僕もそのダンジョンへ連れてってくれるって。
凄いんだろ? 宝。ちょっと一緒に入らせてくれよー」
「レン、そこまで話したのか? 珍しいな。まぁレンがそこまで話すなら信用に値するんだろ。
ただ、かなり危険な道になります。我々で守りきれるか保証はできませんよ、えーっと……」
「リンガーです。私も自分で言うのもあれですが結構やりますから、よろしくお願いしますユキムラさん」
ユキムラと握手をするリンガー。
深い美しい青い髪を腰まで伸ばした、改めて見ると非常に整った顔立ちをしている。
色気を感じさせる美青年。少しきつい目つきが逆に女性を虜にする。
ソーカをみてパチリとウィンクする。ユキムラの警戒心があがる。
「師匠、すみません。そういう話になりました」
額に脂汗を流しながらレンがユキムラの側へと戻る。
「まぁ、こうなっては仕方ないさ。最後までちゃんと隠れていなかったのが悪かった、俺の判断ミスだ」
ユキムラのレンへの信頼がレンにとっては痛かった。
『レンちゃん、いざとなったら私がやるわよ?』
秘匿通信がヴァリィから来る。経験豊かなヴァリィは異変に気がついているようだ。
『いえ、警戒は必要ですが、敵ではないです。すみません今はこれだけで……』
回線が閉じる。
わかったわ。ヴァリィの声がレンの耳に届いたような気がした。
謎の人物リンガーが加わった一行は装備などを確認する。
リンガーの装備は驚くほど、いや異質なほどに上等なものだった。
ユキムラもこの人物が只者ではないことは気がつく。
属性防御を完璧にするマントを貸すだけで済んだほどだ。
あと緊急時の防御壁を作るリング。それを貸し与え暗雲立ち込めるダンジョンへと侵入していく。
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