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158話 大岩壁
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「世話になった。良い経験を積ませてもらった。
こんな世界があるとはな……その時が来たら兄とともに協力は惜しまない!
また会おう!!」
リンガーは近くに伏せていた仲間と共に帰っていく。
その部隊は大隊規模にも達しており、全体としての組織の巨大さを想像させた。
レンは情報戦での敗北に少なからずショックを受けていたが、組織力の差をまざまざと見せつけられた。
「慢心は禁物。これを教訓に謙虚に頑張ろう」
小さく決意を新たにする。
「さて、そしたら次は帝国のへそ、大岩壁の底に行くよー」
大岩壁。帝国を左右に二分する巨大な谷だ。
その果てしない底は地獄につながっているとされ、帝国の子供達は悪いことすると大岩壁からお迎えがくるよ! と小さい頃から言われたりする。
壁面に露出した鉱石なども豊富だが、谷の内部には魔物も豊富で危険が伴う。
大小様々な橋がかけられている。不思議なことに魔物は谷からは積極的には出てこない性質がある。
「あそこに降りるんですか?」
「うん。大陸中央部まで進んでいくとダンジョンがあるんだよね。
まぁ、まずは中央部へいこう」
「そしたら向かいましょうか」
もうユキムラとの付き合いの長い皆はなぜそんなことを知っているのか? などの疑問は覚えない。
ユキムラだから知っているのだ。
移動拠点内部で各装備の魔改造や今回有効性が証明された魔道具の補充。
それに全員にクロノスの時計によって得られた能力を説明する。
「なんか、タロちゃんの時計が光ったらユキムラちゃんが加速したように見えたわー」
唯一あの場面を離れた位置から見ることの出来たヴァリィが説明する。
「そう、で女神いわくあの瞬間の加速は皆、可能になっているはずなんだ。
予想なんだけど、クリティカルガード、カウンター時に自分たちが加速するんだと思う。
だから、あの超高速攻撃を冷静にきちんとしたタイミングで受ける。それが大事だ」
ユキムラだからこそ簡単に言うが、カウンターに関してはユキムラ自身が固執しないように伝えているくらい、リスクが高いのだ。
「クリティカルガードを体に叩き込むしか無いよね……」
ユキムラでもそれ以上の改善点を見つけられなかった。
カウンターのタイミングよりは遥かにクリティカルガードの入力受付時間は長い。
慣れたプレイヤーならそれなりに通常戦闘中にも実用できる。
「でも、師匠。練習しようにもあの超高速攻撃をできる人がいませんよね……」
「そこなんだよねぇ……」
「ばう!」
タロが一吠えすると。
あの感覚が広がる。時間が極限まで濃縮されたようなあの超感覚……
「ワン!」
もう一鳴きすると感覚がもとに戻る。
「タロ!? 今のは? もしかして……」
「わーうん!」
「そっか! あの攻撃が来たらタロが助けてくれるのか!
あの時間の中なら普通の感覚でガードできる! 凄いよタロ!!」
こうして白狼隊は超高速攻撃に対する対抗策を身につけることが出来た。
もちろんタロのいないところであの敵達に会ったら全力で逃げる。それしかない。
この日からヴァリィも変なプライドは捨てて皆と混じって鍛錬に打ち込むことになる。
「装備はかなり良くなってきたなぁ。もし帝国クリアできてもまた最初からになるんだよなぁ……
せめてヘパ鍛冶だけでも持ち込みたいなぁ……」
「そう言えば巻き戻る前の装備とか、王国で作ったやつとかどうなるんですか?」
「たぶん全ての大陸攻略を終えると戻ってくると思う。
そこからは世界を股にかけての大冒険だ」
「凄い話ですね……王国から出たこともないので……南の国にはどんな食べ物が……」
ソーカは車を操作しながら溢れるよだれを飲み込んでいる。
「昔は世界中を旅したけど、また新たな刺激を受けに巡れるのね……」
「まぁ、まずはこの国を救わないとね」
こうして次なる目的地、大岩壁に向かって進んでいく。
「しかし、凄い深さですね……」
現在大岩壁沿いを北上している。
大岩壁は幅は1キロぐらいの谷になっている。
救いとしてはV字型の作りになっているので崩落事故とかはあまり起きない。
もちろん崖のすぐ脇を走るようの無駄なチャレンジもしないが。
「ねー、レン。これ底はどうなってるの?」
ソーカはハンドルを握りながらドーナッツを咥えている。
さっきお昼を食べたばかりだと言うのに……
「帝国では神話時代の戦いの傷跡とか言われているんですよね。
北端と南端は浅くなっていくので、そこから腕試しで侵入したりするようになっています」
「ある程度深くなると強力な魔物が増えてくるらしくて、段階的な修行の場所としても人気よねー」
「帝都の兵たちは1週間谷の底でキャンプするって訓練もあるそうですよ」
「一番深いって言われている中央部にはダンジョンがあるって噂だけど、ユキムラちゃんがあるって言うからにはあるのよね?」
「ええ、大岩壁の中央、最も深い場所にあります。ただどうしても北端や南端から侵入すると、かなりの距離を移動するのでつくまでに数日かかってしまうでしょうね」
「ユキムラさん、帝国の大橋が見えてきました。ここが中央部だと思います」
帝国の大橋。大岩壁にかけられた橋の中でも最大の石橋。
幅は500m、その重厚な作りは帝国兵全員がこの上で軍事行動をしても崩れないと言われている。
「そしたら、ソーカ運転変わってー」
ユキムラが運転席に乗り込む。先程までソーカが運転していたぬくもりが残っていて、なぜか少し恥ずかしかった。
「おっほん、それでは今から秘匿モードで谷底まで降ります」
ユキムラは車の姿を魔道具で隠すと谷へと向かってアクセルを踏んだ。
こんな世界があるとはな……その時が来たら兄とともに協力は惜しまない!
また会おう!!」
リンガーは近くに伏せていた仲間と共に帰っていく。
その部隊は大隊規模にも達しており、全体としての組織の巨大さを想像させた。
レンは情報戦での敗北に少なからずショックを受けていたが、組織力の差をまざまざと見せつけられた。
「慢心は禁物。これを教訓に謙虚に頑張ろう」
小さく決意を新たにする。
「さて、そしたら次は帝国のへそ、大岩壁の底に行くよー」
大岩壁。帝国を左右に二分する巨大な谷だ。
その果てしない底は地獄につながっているとされ、帝国の子供達は悪いことすると大岩壁からお迎えがくるよ! と小さい頃から言われたりする。
壁面に露出した鉱石なども豊富だが、谷の内部には魔物も豊富で危険が伴う。
大小様々な橋がかけられている。不思議なことに魔物は谷からは積極的には出てこない性質がある。
「あそこに降りるんですか?」
「うん。大陸中央部まで進んでいくとダンジョンがあるんだよね。
まぁ、まずは中央部へいこう」
「そしたら向かいましょうか」
もうユキムラとの付き合いの長い皆はなぜそんなことを知っているのか? などの疑問は覚えない。
ユキムラだから知っているのだ。
移動拠点内部で各装備の魔改造や今回有効性が証明された魔道具の補充。
それに全員にクロノスの時計によって得られた能力を説明する。
「なんか、タロちゃんの時計が光ったらユキムラちゃんが加速したように見えたわー」
唯一あの場面を離れた位置から見ることの出来たヴァリィが説明する。
「そう、で女神いわくあの瞬間の加速は皆、可能になっているはずなんだ。
予想なんだけど、クリティカルガード、カウンター時に自分たちが加速するんだと思う。
だから、あの超高速攻撃を冷静にきちんとしたタイミングで受ける。それが大事だ」
ユキムラだからこそ簡単に言うが、カウンターに関してはユキムラ自身が固執しないように伝えているくらい、リスクが高いのだ。
「クリティカルガードを体に叩き込むしか無いよね……」
ユキムラでもそれ以上の改善点を見つけられなかった。
カウンターのタイミングよりは遥かにクリティカルガードの入力受付時間は長い。
慣れたプレイヤーならそれなりに通常戦闘中にも実用できる。
「でも、師匠。練習しようにもあの超高速攻撃をできる人がいませんよね……」
「そこなんだよねぇ……」
「ばう!」
タロが一吠えすると。
あの感覚が広がる。時間が極限まで濃縮されたようなあの超感覚……
「ワン!」
もう一鳴きすると感覚がもとに戻る。
「タロ!? 今のは? もしかして……」
「わーうん!」
「そっか! あの攻撃が来たらタロが助けてくれるのか!
あの時間の中なら普通の感覚でガードできる! 凄いよタロ!!」
こうして白狼隊は超高速攻撃に対する対抗策を身につけることが出来た。
もちろんタロのいないところであの敵達に会ったら全力で逃げる。それしかない。
この日からヴァリィも変なプライドは捨てて皆と混じって鍛錬に打ち込むことになる。
「装備はかなり良くなってきたなぁ。もし帝国クリアできてもまた最初からになるんだよなぁ……
せめてヘパ鍛冶だけでも持ち込みたいなぁ……」
「そう言えば巻き戻る前の装備とか、王国で作ったやつとかどうなるんですか?」
「たぶん全ての大陸攻略を終えると戻ってくると思う。
そこからは世界を股にかけての大冒険だ」
「凄い話ですね……王国から出たこともないので……南の国にはどんな食べ物が……」
ソーカは車を操作しながら溢れるよだれを飲み込んでいる。
「昔は世界中を旅したけど、また新たな刺激を受けに巡れるのね……」
「まぁ、まずはこの国を救わないとね」
こうして次なる目的地、大岩壁に向かって進んでいく。
「しかし、凄い深さですね……」
現在大岩壁沿いを北上している。
大岩壁は幅は1キロぐらいの谷になっている。
救いとしてはV字型の作りになっているので崩落事故とかはあまり起きない。
もちろん崖のすぐ脇を走るようの無駄なチャレンジもしないが。
「ねー、レン。これ底はどうなってるの?」
ソーカはハンドルを握りながらドーナッツを咥えている。
さっきお昼を食べたばかりだと言うのに……
「帝国では神話時代の戦いの傷跡とか言われているんですよね。
北端と南端は浅くなっていくので、そこから腕試しで侵入したりするようになっています」
「ある程度深くなると強力な魔物が増えてくるらしくて、段階的な修行の場所としても人気よねー」
「帝都の兵たちは1週間谷の底でキャンプするって訓練もあるそうですよ」
「一番深いって言われている中央部にはダンジョンがあるって噂だけど、ユキムラちゃんがあるって言うからにはあるのよね?」
「ええ、大岩壁の中央、最も深い場所にあります。ただどうしても北端や南端から侵入すると、かなりの距離を移動するのでつくまでに数日かかってしまうでしょうね」
「ユキムラさん、帝国の大橋が見えてきました。ここが中央部だと思います」
帝国の大橋。大岩壁にかけられた橋の中でも最大の石橋。
幅は500m、その重厚な作りは帝国兵全員がこの上で軍事行動をしても崩れないと言われている。
「そしたら、ソーカ運転変わってー」
ユキムラが運転席に乗り込む。先程までソーカが運転していたぬくもりが残っていて、なぜか少し恥ずかしかった。
「おっほん、それでは今から秘匿モードで谷底まで降ります」
ユキムラは車の姿を魔道具で隠すと谷へと向かってアクセルを踏んだ。
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