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193話 巨龍、堕つ
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目の前に流れてくるボコボコと泡立つ液体……石棺が消えるとともに溢れ出す……
「……師匠……」
「言うな……俺もやりすぎたと反省している……」
「流れるように連携してしまいました……」
「身体が勝手に動いちゃったのよ……仕方なかったの……」
ユキムラが魔法でその液体を蒸発させる。
なんとも後味の悪い戦闘になってしまった。
「……コア、壊そう」
短くそう告げるとユキムラは魔法で作り出した槍をコアに向かって投擲する。
美しい心臓に槍が突き刺さりその拍動が停止する。
心臓コアは色を失いサラサラと灰のようになって風に流されて消えていく。
心臓が置かれていた台座部分に光り輝く扉が現れたので白狼隊は移動する。
ユキムラはなんとなく手を合わし、皆もそれに倣い手を合わし、戦いの場を後にするのだった。
「いつもの部屋ですね」
白い部屋に宝箱と奥に転送装置。
いつもと違うのは外の巨龍の状態が見られるモニターが中央についている。
ドドーンと四肢が崩れ落ち、巨龍が今まさにその生を終える姿が映し出されていた。
不思議とこの部屋には振動が伝わってこない、別次元なのかもしれない。
そしてその下に座禅を組んでいるようなサムライのような格好をした男がいる。
巨龍が崩れ落ちてしばらくするとその男性の頭の上で回転していたリングが回転を止めて静かに地面へと落ちて転がる。
【ほう、ここに来るものが現れるとはな】
片目を開き、白狼隊を見回しながらその男性が立ち上がる。
身の丈は180ほど、体つきはよく鍛えられ引き締められていることが着物の上からでもわかる。
【お初にお目にかかる。拙者は武と鍛冶の神 アカツキ。この場に縛られて幾月幾千の時が流れたが、よもや開放される日が来るとは思わなんだ。感謝する】
ちょんまげというよりは長髪を後ろで乱暴に結んでいる。
着流しから片手を袖を通さずあごひげをいじっている。
細目で周囲を見回す姿はなんとなく大物な匂いがする。
「アカツキ様はどうして巨龍の中に?」
【うーん、どうしてじゃったかのぉ……忘れた。気がついたらここにおったわ】
ケラケラと笑い出す。
【目覚めたのねアカツキ……】
光が集まりアルテスが降臨する。
相変わらずちゃんとしている時は優雅で美しい女神なのは間違いない。
【あ、あ、アルテスさん!? こ、こん……にちは……】
アルテスが現れるとアカツキは挙動不審になる。
直立不動で落ち着き無く目だけが泳いでいる。
【どうしたの? 久しぶりで緊張してるのかしら、アカツキは昔からそういう所あるわよね?】
【いえ、その。はい。すみません】
「あ、そうだアルテス様、ちょっと聞きたいことが……」
ユキムラは竜人の中にいた人物についてアルテスに問うた。
【この世界に干渉してきたの? ……ありえるのかしら……クロノスいるー?】
【……何か用?】
アルテスがクロノスを呼ぶとタロのぶら下げている時計からクロノスの声が聞こえる。
それからアルテスはユキムラが伝えたことをクロノスへ伝へる。
【うーん……考えにくいけど、あっちがこちらの力に干渉できるのならありえるかも……】
【それが事実だと、思ったよりあちらの力が上がっているわね……】
【クロノス殿もいるのか、懐かしいメンバーが集っているのじゃな】
【他にもたくさんいるからアカツキもあとで一緒に行きましょう】
【ぶふっ! 一緒に……、あ、はい一緒ですな、はははは……】
どうやらアカツキはアルテスに対してだけ緊張してしまうようだ。
甘酢っぺぇ世界が神にもあるんですね。
【あ、アカツキ。この時計に力入れて。この子達は私達の仲間。助けてあげて】
クロノスがアカツキへとお願いしてくれる。
【ふむ、この時計に力を込めればいいのじゃな!】
アカツキは時計に神力を注ぎ込む。
時計がよりいっそう力強く輝き出す。
【それにしても、貴方様も酔狂なお方だ】
アカツキのタロへのつぶやきは、ユキムラたちの耳には届くことはなかった。
【確かにこの場は少しおかしいみたいですね。あまり長居はしないほうがいいでしょう。
それでは白狼隊の皆様、次の場でお会いしましょう。
海底洞窟は長く苦しい戦いになるでしょうが、皆が超えることを信じています】
いつものように光りに包まれてアルテスの姿が消えていく。
アカツキも挙動不審のままアルテスと並んで光りに包まれていく。
「さて、宝を回収して俺たちも行こうか。ここの宝は大事に使わせてもらおう」
ユキムラはとりあえず宝を宝箱ごと回収して奥の転移装置へと移動する。
転送装置を抜けるとこのMDに入ってすぐの森だった。
「えーっと、外に出ると……朝になっちゃうかぁ、どうする? 中で時間合わせようか?」
「そうですね、あまり派手に時間がずれると体がきついので」
「今夕方だもんねぇ、早朝になるのは辛いわねぇー」
「ゆきむらさん宝の中を確かめて朝まで休みましょう!」
「そうだね、宝箱のチェックとかでかなり時間がかかるだろうから。今日はこのままここでキャンプを張ることにしよう」
時差ボケ防止のためにも内部での時間と外の時間が大きくズレる時は中でしっかりと休憩を取るようにしている。
コテージで、このダンジョンの報酬を確認して、汗を流し、攻略記念のささやかな宴を行う。
嬉しいことに持ち越し用のタロの時計付き宝箱の容量が結構増えていた。
これも神様たちの力添えのおかげだ。
(ありがとうアカツキ様)
ユキムラは宝箱の容量を増やしてくれた神様へ感謝を心のなかでこっそりと述べて、手に入れた新しい宝箱の開封の儀へと臨んでいく。
「……師匠……」
「言うな……俺もやりすぎたと反省している……」
「流れるように連携してしまいました……」
「身体が勝手に動いちゃったのよ……仕方なかったの……」
ユキムラが魔法でその液体を蒸発させる。
なんとも後味の悪い戦闘になってしまった。
「……コア、壊そう」
短くそう告げるとユキムラは魔法で作り出した槍をコアに向かって投擲する。
美しい心臓に槍が突き刺さりその拍動が停止する。
心臓コアは色を失いサラサラと灰のようになって風に流されて消えていく。
心臓が置かれていた台座部分に光り輝く扉が現れたので白狼隊は移動する。
ユキムラはなんとなく手を合わし、皆もそれに倣い手を合わし、戦いの場を後にするのだった。
「いつもの部屋ですね」
白い部屋に宝箱と奥に転送装置。
いつもと違うのは外の巨龍の状態が見られるモニターが中央についている。
ドドーンと四肢が崩れ落ち、巨龍が今まさにその生を終える姿が映し出されていた。
不思議とこの部屋には振動が伝わってこない、別次元なのかもしれない。
そしてその下に座禅を組んでいるようなサムライのような格好をした男がいる。
巨龍が崩れ落ちてしばらくするとその男性の頭の上で回転していたリングが回転を止めて静かに地面へと落ちて転がる。
【ほう、ここに来るものが現れるとはな】
片目を開き、白狼隊を見回しながらその男性が立ち上がる。
身の丈は180ほど、体つきはよく鍛えられ引き締められていることが着物の上からでもわかる。
【お初にお目にかかる。拙者は武と鍛冶の神 アカツキ。この場に縛られて幾月幾千の時が流れたが、よもや開放される日が来るとは思わなんだ。感謝する】
ちょんまげというよりは長髪を後ろで乱暴に結んでいる。
着流しから片手を袖を通さずあごひげをいじっている。
細目で周囲を見回す姿はなんとなく大物な匂いがする。
「アカツキ様はどうして巨龍の中に?」
【うーん、どうしてじゃったかのぉ……忘れた。気がついたらここにおったわ】
ケラケラと笑い出す。
【目覚めたのねアカツキ……】
光が集まりアルテスが降臨する。
相変わらずちゃんとしている時は優雅で美しい女神なのは間違いない。
【あ、あ、アルテスさん!? こ、こん……にちは……】
アルテスが現れるとアカツキは挙動不審になる。
直立不動で落ち着き無く目だけが泳いでいる。
【どうしたの? 久しぶりで緊張してるのかしら、アカツキは昔からそういう所あるわよね?】
【いえ、その。はい。すみません】
「あ、そうだアルテス様、ちょっと聞きたいことが……」
ユキムラは竜人の中にいた人物についてアルテスに問うた。
【この世界に干渉してきたの? ……ありえるのかしら……クロノスいるー?】
【……何か用?】
アルテスがクロノスを呼ぶとタロのぶら下げている時計からクロノスの声が聞こえる。
それからアルテスはユキムラが伝えたことをクロノスへ伝へる。
【うーん……考えにくいけど、あっちがこちらの力に干渉できるのならありえるかも……】
【それが事実だと、思ったよりあちらの力が上がっているわね……】
【クロノス殿もいるのか、懐かしいメンバーが集っているのじゃな】
【他にもたくさんいるからアカツキもあとで一緒に行きましょう】
【ぶふっ! 一緒に……、あ、はい一緒ですな、はははは……】
どうやらアカツキはアルテスに対してだけ緊張してしまうようだ。
甘酢っぺぇ世界が神にもあるんですね。
【あ、アカツキ。この時計に力入れて。この子達は私達の仲間。助けてあげて】
クロノスがアカツキへとお願いしてくれる。
【ふむ、この時計に力を込めればいいのじゃな!】
アカツキは時計に神力を注ぎ込む。
時計がよりいっそう力強く輝き出す。
【それにしても、貴方様も酔狂なお方だ】
アカツキのタロへのつぶやきは、ユキムラたちの耳には届くことはなかった。
【確かにこの場は少しおかしいみたいですね。あまり長居はしないほうがいいでしょう。
それでは白狼隊の皆様、次の場でお会いしましょう。
海底洞窟は長く苦しい戦いになるでしょうが、皆が超えることを信じています】
いつものように光りに包まれてアルテスの姿が消えていく。
アカツキも挙動不審のままアルテスと並んで光りに包まれていく。
「さて、宝を回収して俺たちも行こうか。ここの宝は大事に使わせてもらおう」
ユキムラはとりあえず宝を宝箱ごと回収して奥の転移装置へと移動する。
転送装置を抜けるとこのMDに入ってすぐの森だった。
「えーっと、外に出ると……朝になっちゃうかぁ、どうする? 中で時間合わせようか?」
「そうですね、あまり派手に時間がずれると体がきついので」
「今夕方だもんねぇ、早朝になるのは辛いわねぇー」
「ゆきむらさん宝の中を確かめて朝まで休みましょう!」
「そうだね、宝箱のチェックとかでかなり時間がかかるだろうから。今日はこのままここでキャンプを張ることにしよう」
時差ボケ防止のためにも内部での時間と外の時間が大きくズレる時は中でしっかりと休憩を取るようにしている。
コテージで、このダンジョンの報酬を確認して、汗を流し、攻略記念のささやかな宴を行う。
嬉しいことに持ち越し用のタロの時計付き宝箱の容量が結構増えていた。
これも神様たちの力添えのおかげだ。
(ありがとうアカツキ様)
ユキムラは宝箱の容量を増やしてくれた神様へ感謝を心のなかでこっそりと述べて、手に入れた新しい宝箱の開封の儀へと臨んでいく。
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