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233話 積み重ね
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「おお、すげーなお前ら、すぐに雰囲気と顔つきが変わったじゃねーか!」
「そりゃ、ビリビリ貴方の強さが空気から伝わってくるからね……」
ユキムラは相手の武器を見て刀の両手持ちを選択する。
攻撃に特化してそうだが、実は攻防バランスが取れていたりする。
もちろんソーカの様に一瞬の刹那に全てをかけて火力に注ぎ込むスタイルもあるが、ユキムラは攻防の打合いの間に生じた隙に攻撃を叩き込んでいくスタイルを好む。
この方法なら自身が敵と立ち合っている間に仲間への攻撃が行きにくい、それは利点でもあり欠点で、仲間の攻撃もまた敵を捉えにくい。
それでもこのスタイルを選択した。
味方を信頼していないわけではない、冷静に分析して一番味方に被害が出ない方法を考えた結果だ。
「大層な評価をいただいちまったなぁ……それに答えねぇと、な!」
突然目の前の羅刹の姿が消える。
全員油断していたわけではないが、一瞬状況判断が遅れてしまう。
それが一瞬でパーティ全体を崩壊させてしまうことにつながることは口を酸っぱくしてユキムラが言い続けていたこと。つまり、その認識を持ってして見失うほどのスピードなのだ。
落ち着けばわずかに影が揺らいだ方向は把握出来ている。
ようやく意識がそちらへ向いたとき、すでに時は遅すぎるのだ。
ユキムラがいなかったら、そうなっていただろう。
皆が消えた影の行方を追えた時、その視線の先ではユキムラと羅刹が鍔迫り合いで膠着している。
「やっぱすげぇな! あれについてくるどころか、まさかここまで肉薄するとはな!」
羅刹は状況とは裏腹に非常に上機嫌な声だ。
「肝が冷えるからあまり異常な速度で移動しないでほしいなぁ……」
「ははっ! よく言うぜ、結構今も腹いてぇんだぞ!」
よく見れば羅刹の腹部が薄っすらと斬られている。
羅刹と鍔迫り合いに持ち込む寸前に一閃攻撃をユキムラが決めているのだ。
「こ、これがユキムラ殿の実力……」
「レン様のお師匠様……」
朧も九もわかってはいたが、再確認させられる。
「二人とも、出来る事をしっかりとしよう」
レンが二人に、そしてパーティメンバー全員にもそして自分自身にも言い聞かせる。
ユキムラと実力が違うことに嘆いてもなにも成長はしない。
自分にできることを最大限行って成長していくことが師匠に近づく最短の方法だとレンは理解している。
味方強化、陣形強化、敵弱体化、敵阻害。
やれる選択肢は無数にある。
「ちっ!」
羅刹はレンたちが明確な意図をもってパーティとして動き始めたことに嫌がっている。
「すげぇな、実力はあんたが一番だが、いいチームだ。俺たちとはちげぇな」
「自慢のパーティだからな」
「あんた、名前は?」
「ユキムラだ」
「ユキムラ、ちょびっとお前さんがうらやましいぜ!」
会話をしながらも二人の剣戟は激しくぶつかり合う。
大気を震わせ地面を揺らし、空気を切り裂く。
それでも実力的に差がない二人に、片方には助力がある。
戦局的には一方的であると言ってもいい状態だった。
「長期戦の勝ち目は0だな。ばくちを打つしかねぇなぁ!」
「打たせないのが戦術だよ」
「ちぃ!! どこまでも徹底してやがる!」
羅刹が少しでも何かをしようとすればことごとくそれを開始前につぶしていく。
安全策ともいえるが、それを行うための洞察力、実行力は計り知れない。
ユキムラの実力が突出しているのも当然凄いことだが、それを完璧に援助する仲間も素晴らしかった。
「まじか!? 俺が完封されるのか! これが仲間か!!」
いくつもの斬撃を重ね、徹底して距離を詰めて何もさせず、確定のタイミングで攻撃。
ただそれを積み上げるだけ、だけなのだ。
ただ、一点でも、一度でもしくじれば一刀のもとで命を刈られる状態で、淡々とその『作業』を続けられる。それがユキムラの比類なき、地味で異常で単純で複雑な強さなのだ。
「すまないね、人数でごり押したみたいで」
羅刹の剣の煌めきも輝きを失っている。
動きも鈍くなり、喰らう攻撃も増え、弱体化も進んでいく。
それでも一切の妥協せず淡々とおなじ事を繰り返す。
ある意味羅刹からすれば最も冷徹な方法をとられている。
「言い訳のしようもねーよ。ユキムラっつったな。
他の奴らもこんな感じでガツンとやってくれや、そうすりゃ少しはチームプレイを考えるだろうさ」
大降りになったひと振りを避け、ユキムラの刀が深々と羅刹の胸板を貫く。
羅刹の刀がとうとう手から零れ落ち、黒色の身体は光となって空中に舞っていく。
最後まで背を見せずに戦う、武人として立派な最後だった。
「ふぅ……敵ながら最後まで立派だったね」
「一瞬も気が抜けませんでした……
少しでも隙を見せればどんな状態からでも一発逆転を狙ってましたね……」
ユキムラは少しレンの発言に驚いてしまう。
いつまでも可愛い弟子だと思っていたが、そこまでわかるようになっているほど成長している。
ワシワシと頭をなでる。
「そこまでしっかりと状況を把握して、理解して。
そして最善の方法を成し遂げたんだ。
合格だよレン」
ユキムラにとって一人前といっていい弟子の成長は過去感じたことがないほどの充足感とうれしさがこみあげてくる。
レンもまたユキムラからの明確なここまでの賛辞に胸が熱くなる思いだった。
「師匠! ありがとうございます!」
ユキムラに抱き着き、その喜びを全身で表す。
こういうところはまだ、レンの子供らしさと、弟子としての部分が表れている。
ヴァリィの創作意欲にガソリンを注いだところで、大門が開き始める。
大門の先には中ボス撃破の宝箱があり、レストエリアになっていた。
白狼隊は激戦の疲れを落とし、次の戦いへの英気を養うのであった。
「そりゃ、ビリビリ貴方の強さが空気から伝わってくるからね……」
ユキムラは相手の武器を見て刀の両手持ちを選択する。
攻撃に特化してそうだが、実は攻防バランスが取れていたりする。
もちろんソーカの様に一瞬の刹那に全てをかけて火力に注ぎ込むスタイルもあるが、ユキムラは攻防の打合いの間に生じた隙に攻撃を叩き込んでいくスタイルを好む。
この方法なら自身が敵と立ち合っている間に仲間への攻撃が行きにくい、それは利点でもあり欠点で、仲間の攻撃もまた敵を捉えにくい。
それでもこのスタイルを選択した。
味方を信頼していないわけではない、冷静に分析して一番味方に被害が出ない方法を考えた結果だ。
「大層な評価をいただいちまったなぁ……それに答えねぇと、な!」
突然目の前の羅刹の姿が消える。
全員油断していたわけではないが、一瞬状況判断が遅れてしまう。
それが一瞬でパーティ全体を崩壊させてしまうことにつながることは口を酸っぱくしてユキムラが言い続けていたこと。つまり、その認識を持ってして見失うほどのスピードなのだ。
落ち着けばわずかに影が揺らいだ方向は把握出来ている。
ようやく意識がそちらへ向いたとき、すでに時は遅すぎるのだ。
ユキムラがいなかったら、そうなっていただろう。
皆が消えた影の行方を追えた時、その視線の先ではユキムラと羅刹が鍔迫り合いで膠着している。
「やっぱすげぇな! あれについてくるどころか、まさかここまで肉薄するとはな!」
羅刹は状況とは裏腹に非常に上機嫌な声だ。
「肝が冷えるからあまり異常な速度で移動しないでほしいなぁ……」
「ははっ! よく言うぜ、結構今も腹いてぇんだぞ!」
よく見れば羅刹の腹部が薄っすらと斬られている。
羅刹と鍔迫り合いに持ち込む寸前に一閃攻撃をユキムラが決めているのだ。
「こ、これがユキムラ殿の実力……」
「レン様のお師匠様……」
朧も九もわかってはいたが、再確認させられる。
「二人とも、出来る事をしっかりとしよう」
レンが二人に、そしてパーティメンバー全員にもそして自分自身にも言い聞かせる。
ユキムラと実力が違うことに嘆いてもなにも成長はしない。
自分にできることを最大限行って成長していくことが師匠に近づく最短の方法だとレンは理解している。
味方強化、陣形強化、敵弱体化、敵阻害。
やれる選択肢は無数にある。
「ちっ!」
羅刹はレンたちが明確な意図をもってパーティとして動き始めたことに嫌がっている。
「すげぇな、実力はあんたが一番だが、いいチームだ。俺たちとはちげぇな」
「自慢のパーティだからな」
「あんた、名前は?」
「ユキムラだ」
「ユキムラ、ちょびっとお前さんがうらやましいぜ!」
会話をしながらも二人の剣戟は激しくぶつかり合う。
大気を震わせ地面を揺らし、空気を切り裂く。
それでも実力的に差がない二人に、片方には助力がある。
戦局的には一方的であると言ってもいい状態だった。
「長期戦の勝ち目は0だな。ばくちを打つしかねぇなぁ!」
「打たせないのが戦術だよ」
「ちぃ!! どこまでも徹底してやがる!」
羅刹が少しでも何かをしようとすればことごとくそれを開始前につぶしていく。
安全策ともいえるが、それを行うための洞察力、実行力は計り知れない。
ユキムラの実力が突出しているのも当然凄いことだが、それを完璧に援助する仲間も素晴らしかった。
「まじか!? 俺が完封されるのか! これが仲間か!!」
いくつもの斬撃を重ね、徹底して距離を詰めて何もさせず、確定のタイミングで攻撃。
ただそれを積み上げるだけ、だけなのだ。
ただ、一点でも、一度でもしくじれば一刀のもとで命を刈られる状態で、淡々とその『作業』を続けられる。それがユキムラの比類なき、地味で異常で単純で複雑な強さなのだ。
「すまないね、人数でごり押したみたいで」
羅刹の剣の煌めきも輝きを失っている。
動きも鈍くなり、喰らう攻撃も増え、弱体化も進んでいく。
それでも一切の妥協せず淡々とおなじ事を繰り返す。
ある意味羅刹からすれば最も冷徹な方法をとられている。
「言い訳のしようもねーよ。ユキムラっつったな。
他の奴らもこんな感じでガツンとやってくれや、そうすりゃ少しはチームプレイを考えるだろうさ」
大降りになったひと振りを避け、ユキムラの刀が深々と羅刹の胸板を貫く。
羅刹の刀がとうとう手から零れ落ち、黒色の身体は光となって空中に舞っていく。
最後まで背を見せずに戦う、武人として立派な最後だった。
「ふぅ……敵ながら最後まで立派だったね」
「一瞬も気が抜けませんでした……
少しでも隙を見せればどんな状態からでも一発逆転を狙ってましたね……」
ユキムラは少しレンの発言に驚いてしまう。
いつまでも可愛い弟子だと思っていたが、そこまでわかるようになっているほど成長している。
ワシワシと頭をなでる。
「そこまでしっかりと状況を把握して、理解して。
そして最善の方法を成し遂げたんだ。
合格だよレン」
ユキムラにとって一人前といっていい弟子の成長は過去感じたことがないほどの充足感とうれしさがこみあげてくる。
レンもまたユキムラからの明確なここまでの賛辞に胸が熱くなる思いだった。
「師匠! ありがとうございます!」
ユキムラに抱き着き、その喜びを全身で表す。
こういうところはまだ、レンの子供らしさと、弟子としての部分が表れている。
ヴァリィの創作意欲にガソリンを注いだところで、大門が開き始める。
大門の先には中ボス撃破の宝箱があり、レストエリアになっていた。
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