235 / 342
235話 鬼王
しおりを挟む
乾闥婆、毘舎闍、鳩槃荼、薛茘多、那伽、富單那、素戔嗚。
皆、羅刹に勝るとも劣らぬ兵つわものぞろいだった。
しかし、所詮は一個体。
集団としての白狼隊は徹底してしっかりとした仕事をこなせば、堅実に勝利を重ねることは難しくなかった。
羅刹の言った通り、この8匹の鬼が万が一、パーティでも組んだら恐ろしいことになる。
「このダンジョン、ボスが多すぎませんか師匠……」
緊張感満載な戦闘の連続で、皆の疲労もピークを迎えている。
超えても超えても次の門があり、変わらない風景に強力なボス。
ユキムラでも少ししんどくなるほどだ。
「ボスラッシュって呼ばれる奴だね、実際に自分が戦うとしんどいね……」
VOでも回復材と重量の問題でかなり戦略を練らないとクリアできない高難易度MDが多い。
戦闘に参加せず皆の補給物資を運ぶパーティメンバーを用意することもあった。
得られる報酬も多いが、非常に長時間拘束されるために人気は低い、ただ、パーティ戦闘用のエンドコンテンツ的に利用される場所が多かった。
もちろんユキムラはほぼ全てのボスラッシュMDをソロクリアしている。
物理的に人数制限があるMDは無理だが、PTでのクリアは当然している。
「でも苦労した分みんな強くなってるよね。まぁ九と朧は見違えたけど……」
九は稲荷大明神、朧は火雷天神。
二人とも神様になっている。
「我等の開祖と言われる方々のお姿になると、身が引き締まります」
「里へ帰ったら眩しいとかいじめられないか心配になりまする……」
「まぁ、神様といっても全知全能ってわけじゃなくて、非常に強いってだけだからね。
中身も一緒だし……」
相変わらずレンは九に悩まされているし、朧はソーカに頭が上がらない。
「ははは、まぁ八部鬼衆も倒したし。これで親玉のはずだよ」
「やっと城ね……こっからも長いのかしら……」
「確か城はボスだけのはずだから、最後の休憩をしっかりとって万全の状態で進もう」
久しぶりに自らを追い込み気味の戦闘に、ユキムラは疲労を感じていたが、同時に研ぎ澄まされていくのも感じていた。
ギラギラとVOをプレイした時代を思い出させられるような思いだった。
どうしても長年プレイを続けていくと、作業感のようなものは否めない。
無駄を省き、効率を追い求める。そういう工夫はもちろん重ねていたが、プレイヤースキルを必死になって求めていたのは対人に燃えていたころだった。
あとは操作方法を自分のものにするために没頭していたころだったなぁ……
ユキムラは明日の戦いを思い浮かべながら布団をかぶり、なんとなく過去のことを思い出していた。
「でも、こうやって仲間と激戦を潜り抜けるなんて……想像もできなかったなぁ……」
目頭が熱くなることを感じたユキムラは布団を頭までかぶって、明日の激戦のために無理やり眠りにつく……
「うおっ! みんな早いね!」
普段の起きる時間よりも早く目が覚めてしまったユキムラは軽く体を動かすために外に出た。
するとすでにソーカは素振りをして、すぐにレン、ヴァリィ、九に朧と全員が早朝から活動を始めていた。
「今までのボスの親玉ってことで、緊張してしまって……」
「眠れはしたんですが、妙に頭がさえてしまって……」
みんな似たようなものだった。
今までのボス戦、安定していたし、危なげもないと言っていい戦闘だったが、一瞬でも気を抜けば容易にひっくり返る可能性を秘めていた。
その全てを根底で支えていたのはユキムラだ。
あまりに巨大な大黒柱が存在するせいで、みんな自分自身に不安を持ってしまったのだ。
「勘違いしないでね。俺が全力で戦えるのはみんながいるからだから。
俺がいるから勝てたわけじゃない、むしろみんながいなければあんな戦い方はできないよ。
もっともっと安全域をとってそれこそ日をまたぐような長期戦になっていただろうし、そうなってたらとてもじゃないけどここまではたどり着いていないよ。
みんな自信を持っていいよ。大丈夫、俺たちは一つのパーティになってるよ」
ユキムラにしては結構臭いことを言っている。
過去の熱かったころを思い出した影響だろう。
事実、みんなは少し感動した面持ちでユキムラの言葉を噛みしめているが、言い終わったユキムラは耳まで真っ赤にして照れている。
ユキムラの思案はともかく、皆最高の発破をかけてもらった。
皆の顔つきさえ変わったように見えた。
きちんと朝食も取り、万全の態勢で城門に手をかける。
「それじゃ、行きますか!」
「はい!」「はい!」「はーい!」「ワン!」「応!」「はいな~!」
開かれた扉から城内へと侵入すると、まっすぐな板張りの廊下が正面の襖まで続く。
襖を勢いよく開くと畳の間、さらに襖が続く。
襖には物語が描かれている。
鬼が人にやられる昔話のようだ。
次から次へと襖をあけて奥に進むと、だんだんとおどろおどろしい物語に代わる。
地獄の物語のようだ。
8個の地獄、どんどんと深くなっていく。
「阿鼻叫喚……みんな気を付けて、たぶんこの次だ……」
ユキムラの言葉通り、最後の襖を開くと城の中のはずだったが、丸石が敷き詰められた河原になっていた。
「賽の河原ってことか……」
【よくぞここまで来たな……】
頭に直接届くかのような低い恐ろしい声が響く。
「夜叉姫を返してもらいに来た、姿を見せろ!」
朧の声がこだまする。
【返してほしくば、我を倒すのだな!】
ごうっ、と突風が吹き小型の竜巻を作る。
その竜巻に雷が降り注ぎ、炎をあげる。
炎が燃え上がり、人型を作り上げる。
全身は炎のような深紅、白目まで漆黒の瞳、巨大な牙、金色の髪が風を受けてたなびいている。
体躯は巨大で4mほどはある。
腕は4本、金属のリングのような武器と巨大なこん棒をもち、筋骨隆々の身体が大地に降りるとどーーーんと鈍い振動があたりに響く。
【我が名は鬼の王、鬼王! 全ての鬼の頂点に立つ者だ。
夜叉は我が預かっておる! 我が決めればそれは何人にも覆せぬ。
それを覆すなら、力だ、力を示してみよ!
今までのものと同じと思うなよ?
体を動かすのは久しぶりだが、準備運動ぐらいにはして見せよ】
「なんというか、わかりやすいラスボスだね」
ユキムラは鬼王の異形を見ても怯む事無く平常心だ。
今の言葉だけでも白狼隊のメンバーは心強く冷静でいられる。
「行くぞ!!」
皆、羅刹に勝るとも劣らぬ兵つわものぞろいだった。
しかし、所詮は一個体。
集団としての白狼隊は徹底してしっかりとした仕事をこなせば、堅実に勝利を重ねることは難しくなかった。
羅刹の言った通り、この8匹の鬼が万が一、パーティでも組んだら恐ろしいことになる。
「このダンジョン、ボスが多すぎませんか師匠……」
緊張感満載な戦闘の連続で、皆の疲労もピークを迎えている。
超えても超えても次の門があり、変わらない風景に強力なボス。
ユキムラでも少ししんどくなるほどだ。
「ボスラッシュって呼ばれる奴だね、実際に自分が戦うとしんどいね……」
VOでも回復材と重量の問題でかなり戦略を練らないとクリアできない高難易度MDが多い。
戦闘に参加せず皆の補給物資を運ぶパーティメンバーを用意することもあった。
得られる報酬も多いが、非常に長時間拘束されるために人気は低い、ただ、パーティ戦闘用のエンドコンテンツ的に利用される場所が多かった。
もちろんユキムラはほぼ全てのボスラッシュMDをソロクリアしている。
物理的に人数制限があるMDは無理だが、PTでのクリアは当然している。
「でも苦労した分みんな強くなってるよね。まぁ九と朧は見違えたけど……」
九は稲荷大明神、朧は火雷天神。
二人とも神様になっている。
「我等の開祖と言われる方々のお姿になると、身が引き締まります」
「里へ帰ったら眩しいとかいじめられないか心配になりまする……」
「まぁ、神様といっても全知全能ってわけじゃなくて、非常に強いってだけだからね。
中身も一緒だし……」
相変わらずレンは九に悩まされているし、朧はソーカに頭が上がらない。
「ははは、まぁ八部鬼衆も倒したし。これで親玉のはずだよ」
「やっと城ね……こっからも長いのかしら……」
「確か城はボスだけのはずだから、最後の休憩をしっかりとって万全の状態で進もう」
久しぶりに自らを追い込み気味の戦闘に、ユキムラは疲労を感じていたが、同時に研ぎ澄まされていくのも感じていた。
ギラギラとVOをプレイした時代を思い出させられるような思いだった。
どうしても長年プレイを続けていくと、作業感のようなものは否めない。
無駄を省き、効率を追い求める。そういう工夫はもちろん重ねていたが、プレイヤースキルを必死になって求めていたのは対人に燃えていたころだった。
あとは操作方法を自分のものにするために没頭していたころだったなぁ……
ユキムラは明日の戦いを思い浮かべながら布団をかぶり、なんとなく過去のことを思い出していた。
「でも、こうやって仲間と激戦を潜り抜けるなんて……想像もできなかったなぁ……」
目頭が熱くなることを感じたユキムラは布団を頭までかぶって、明日の激戦のために無理やり眠りにつく……
「うおっ! みんな早いね!」
普段の起きる時間よりも早く目が覚めてしまったユキムラは軽く体を動かすために外に出た。
するとすでにソーカは素振りをして、すぐにレン、ヴァリィ、九に朧と全員が早朝から活動を始めていた。
「今までのボスの親玉ってことで、緊張してしまって……」
「眠れはしたんですが、妙に頭がさえてしまって……」
みんな似たようなものだった。
今までのボス戦、安定していたし、危なげもないと言っていい戦闘だったが、一瞬でも気を抜けば容易にひっくり返る可能性を秘めていた。
その全てを根底で支えていたのはユキムラだ。
あまりに巨大な大黒柱が存在するせいで、みんな自分自身に不安を持ってしまったのだ。
「勘違いしないでね。俺が全力で戦えるのはみんながいるからだから。
俺がいるから勝てたわけじゃない、むしろみんながいなければあんな戦い方はできないよ。
もっともっと安全域をとってそれこそ日をまたぐような長期戦になっていただろうし、そうなってたらとてもじゃないけどここまではたどり着いていないよ。
みんな自信を持っていいよ。大丈夫、俺たちは一つのパーティになってるよ」
ユキムラにしては結構臭いことを言っている。
過去の熱かったころを思い出した影響だろう。
事実、みんなは少し感動した面持ちでユキムラの言葉を噛みしめているが、言い終わったユキムラは耳まで真っ赤にして照れている。
ユキムラの思案はともかく、皆最高の発破をかけてもらった。
皆の顔つきさえ変わったように見えた。
きちんと朝食も取り、万全の態勢で城門に手をかける。
「それじゃ、行きますか!」
「はい!」「はい!」「はーい!」「ワン!」「応!」「はいな~!」
開かれた扉から城内へと侵入すると、まっすぐな板張りの廊下が正面の襖まで続く。
襖を勢いよく開くと畳の間、さらに襖が続く。
襖には物語が描かれている。
鬼が人にやられる昔話のようだ。
次から次へと襖をあけて奥に進むと、だんだんとおどろおどろしい物語に代わる。
地獄の物語のようだ。
8個の地獄、どんどんと深くなっていく。
「阿鼻叫喚……みんな気を付けて、たぶんこの次だ……」
ユキムラの言葉通り、最後の襖を開くと城の中のはずだったが、丸石が敷き詰められた河原になっていた。
「賽の河原ってことか……」
【よくぞここまで来たな……】
頭に直接届くかのような低い恐ろしい声が響く。
「夜叉姫を返してもらいに来た、姿を見せろ!」
朧の声がこだまする。
【返してほしくば、我を倒すのだな!】
ごうっ、と突風が吹き小型の竜巻を作る。
その竜巻に雷が降り注ぎ、炎をあげる。
炎が燃え上がり、人型を作り上げる。
全身は炎のような深紅、白目まで漆黒の瞳、巨大な牙、金色の髪が風を受けてたなびいている。
体躯は巨大で4mほどはある。
腕は4本、金属のリングのような武器と巨大なこん棒をもち、筋骨隆々の身体が大地に降りるとどーーーんと鈍い振動があたりに響く。
【我が名は鬼の王、鬼王! 全ての鬼の頂点に立つ者だ。
夜叉は我が預かっておる! 我が決めればそれは何人にも覆せぬ。
それを覆すなら、力だ、力を示してみよ!
今までのものと同じと思うなよ?
体を動かすのは久しぶりだが、準備運動ぐらいにはして見せよ】
「なんというか、わかりやすいラスボスだね」
ユキムラは鬼王の異形を見ても怯む事無く平常心だ。
今の言葉だけでも白狼隊のメンバーは心強く冷静でいられる。
「行くぞ!!」
10
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる