老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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252話 ザンゲツの祭り

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「ユキムラ様、あの美しい石像が一瞬で消えてしまいました!!」



「あ、ああ。あれが女神の姿なんだよ。無事に解放できたよ」



「おお、アレが女神様のお姿。お話には聞いていましたが、本当にいらっしゃるのですね!」



「美人さんでびっくりしちゃったわよねぇ~ユキムラちゃん」



「何ていうか、オーラが半端ない女神でしたね師匠……」



「嫉妬も起きないほど、美しかったです……」



「ほんとにね……」



 女神と本当に出会っているという話は、白狼隊隊員の更に強い結束に結びついていく。

 自分たちのトップが神や女神と知己である。

 これ以上の求心力はあるだろうか? いや、ない。



 ダンジョンの宝物にはギルドの封印をして持ち帰る。

 帰り道はいつも通りワープで入り口側へと出てくることが出来た。

 特に、呪いが解けて美しい都アスカの復活……ということはなく、今後もダンジョンとして冒険者たちの生活の糧となっていくのであった。



 白狼隊が帰還するとザンゲツの町のギルドは大忙しになる。

 すでに隊員が派遣されており、ギルド職員とともに宝の算定などに協力できるようにしてある。

 これで、ザンゲツ町も息を吹き返すのは間違いない。

 残すはテンゲン国帝都テンゲン。そして龍の巣ダンジョンだけとなる。

 副隊長達は一旦各町へと向かい、それぞれの町での管理職として着任する。

 最後の龍の巣MDは各職のNo2を連れて行く予定になっている。

 呪われた古都MDと龍の巣MDは実は呪われた古都の方が厄介だ。

 難易度的には同等なのだが、死霊系モンスターが多いダンジョンはそれだけで難易度が上がる。

 そのために事前にこういう取り決めになっていたのだ。

 すでにダンジョン攻略班やサナダ商会の人間は帝都テンゲン入りしているはずだ。

 しばしの休息の後、白狼隊は帝都テンゲンへ向けて出発する。

 

「えーっとテンゲンまではー……」



「師匠、まずバツ町まで南下して、そこから直接帝都テンゲンのある島へ船か直接渡ることになります。

 南東へ進み海を渡れば帝都テンゲンは直ぐです」



「バツ町は結構距離があるので、飛ばして進んでも3日、そこから帝都までは1日でいけますね」



「ソーカちゃんなら2日でつけそうよねー」



「まぁ、ちょっと無理すれば……」



「いや、しなくていいから」



 ソーカが飛ばすと限界まで飛ばすのでユキムラが止める。



「師匠そうすると、初日の夜は野営になりますが、二日目はギイラ村で宿を取れると思います」



 詳細な地図の上にルートを示しながらレンが説明してくれる。

 街道はもちろん、フィールド・ダンジョン、採取場、各村や町の構成、名産などが事細かに記載されている。白狼隊にとっての財産と言っていい貴重な情報だ。



 取り敢えずは高難易度ダンジョンを攻略できた事を素直に喜ぶ。

 ザンゲツの町へと戻った白狼隊は久しぶりに盛大に宴を計画する。

 副隊長たちの各地への赴任する壮行会も兼ねている。

 ザンゲツ町は豊富な海産資源、山からの幸、そして米と大変素晴らしい食の宝庫になっている。

 スキルを利用すれば醤油や味噌、日本酒など時間がかかるものも一瞬で用意できる。

 ユキムラを筆頭に調理スキルを総動員でこの町に食文化を根付かせる。

 根付かせるのか根本から破壊してしまうのかは意見が別れる……



「おおおお、凄いですね師匠!」



 町の外に仮設で作られた、と言ってもオーバースペック要塞みたいな建物だが……、その建物内に用意された祝賀会と壮行会の会場の中央のテーブルには様々な料理が隙間なく埋められている。

 和食が中心となっているが、和洋折衷、様々な料理が用意されている。

 本日この会場は町の人々なら誰でもウェルカム、無料で料理や酒を楽しんでもらえるように通達している。

 サナダ商店として日頃お世話になっている方々への恩返しという体だ。

 各地のサナダ商店においても似たようなチャリティーを行うよう指示している。

 ダンジョン攻略は攻略として一生懸命。

 終わったらこういった祭り事を楽しむのも一生懸命。

『せっかくの人生思いっきりなんでも楽しまないと損だよ!』

 ユキムラのありがたいお言葉の一つだ。

 前世? で偏った人生を送ってしまったユキムラに与えられた今生を、全て思いっきり楽しむ!

 それがユキムラの目標だ。



「それでは、皆さん、遠慮せず楽しんでください!」



 ユキムラの挨拶で始まった宴は盛大なものとなった。

 巨大なホールぐらいの大きさがあった会場でも入り切らず、皆皿をもちながら外まで溢れ出していた。

 活気を失いかけていた町とは思えないほどに盛り上がり、人々の顔には例外なく心からの笑顔が満ち溢れていた。

 

「ユキムラ様、このような盛大な催しを無料で行っていただいて……

 町人を代表して心より御礼を申し上げます!」



 ユキムラに深々と頭を下げる男性はザンゲツ町の町長を務めるアガタ。

 白髪がダンディーな男性で、真面目で人当たりもよくユキムラも好感を持っている人物だ。



「アガタさん、頭を上げてください。

 せっかく楽しい祭りなんですからみんなで楽しみましょう!」



 ユキムラもみんなで大騒ぎすることが自分でもびっくりするほど心地よかった。



「ダンジョンの問題、町の問題、全てサナダ商店の皆様のおかげでいい方に進んで……

 なんとお礼を言えば……この御恩は決して忘れません」



「そしたら、街に来たら美味しいものでも食べさせてください。

 それだけでいいですよ!」



「ええ、ええ、ええ! おまかせください!」



 誰が始めたか夜空には花火が打ち上げられていた。

 その花火の光に照らされるようにユキムラとアガタは熱い握手を交わしていた。



 この年から、毎年この日をザンゲツ新誕生祭として祝われるようになっていくのであった。

 
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