老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

文字の大きさ
253 / 342

253話 赤い宝石

しおりを挟む
 ユキムラ達は大盛況で終えた宴のあとのんびりとした時間を過ごすことが出来た。

 町の人達の笑顔が彼らに活力を与えてくれたことは間違いなかった。



「次のダンジョンを終えれば、残すところはケラリス神国だけだね……」



 ユキムラはソーカと拠点のテラスでゆったりと杯を傾けていた。

 さすがのソーカも会場で大量の料理を胃に収めて来ており、ここでは軽いツマミと酒を楽しんでいる。

 

「次のダンジョンは龍の巣ですよね、名前の通り龍系の魔物が多いんですか?」



「そうだね、ただ、ドラゴン系じゃなくて龍系なんだよね。

 大きくは変わらないし龍耐性、特攻で問題ないんだけど、浮いてたり物理法則無視してるから少し驚くかもね」



「トウヨウのドラゴンでしたっけ?」



「そうそう。ふふふ、装備も張り切ったからかっこいいよー」



 ユキムラの言うかっこいいは、龍の刺繍やらキンキラの装飾やらでゴテゴテとした方向性だ。

 ヴァリィがデザインしているので、全体として確かにかっこよくまとまってはいる。

 とくにソーカの中華風ドレスっぽい鎧は大変ソーカによく似合った。

 武器もユキムラは青龍刀の二刀流を選択しており、武器の名前も黒竜と白竜と、なんというか、ユキムラ節全開の装備だった。

 本人はこれ以上無いほど上機嫌だったので誰も触れることはない。



「それにしても、いか人参は日本酒とも焼酎とも合いすぎて飲み過ぎちゃうなぁ……」



人参を細かくスライスしたものと、スルメイカを干して乾燥させたものを同じようにスライスして、酒、みりん、さとう、醤油につけた料理。いか人参。日本では福島のあたりの郷土料理になる。

 イカが多く取れるこのあたりでは昔から干したいかを炙って食べたり汁ものの出汁に利用している。



「この町、少し塩っ辛いおつまみが多くて、ご飯の上に乗せるともう……何杯でも……モグモグ」



 言ったそばから漬物やらタラコやら明太子をご飯の上に乗っけて食べている。

 もう何杯目か、ユキムラは両手で数えられなくなった時点で数えるのを諦めた。

 しかし、ソーカでなくてもこの町で昔から食べられている料理やユキムラが持ち込んだ料理は白米の親友たちが多かった。

 スキルがアレばなんでも作成できるため、この町には無かったタラコやら明太子なんかも用意してある。

 たくあんや漬物も一瞬で作成可能だ。

 山を少し歩けば様々な種類のキノコや山菜も手に入る。

 漬物やきゅうり、キノコ類を細かく刻んで出しと味を調節して一晩つけて作る山形のだしなんかも、スキルの力で直ぐにできる。

 これを炊きたての御飯に乗せて食べるとユキムラでさえ3杯くらいはぺろりと食べてしまう。

 時間のかかる料理や調味料も一瞬で作成できるスキルは素晴らしい。欲しい。

 お腹も満ちて幸せな気分になった二人は素敵な夜を過ごすのでありました。









「さて、それじゃぁ今後のことを決めていこう」



 翌朝、朝食を終えた白狼隊メンバーは朝のミーティングを始める。

 

「すでに帝都テンゲンでは商店の開設が完了しています。

 売れ行きは大変好調で、さすが首都ですね。

 テンゲン和国の王である帝との面会は師匠が到着後に取り付けていく手はずで、まずは実政を執り行っている役人との顔つなぎから始めています。

 ギルドへたっぷりとダンジョンの宝という点で恩を売っていますし、あれらが帝都に届けばあちらからアクションがあることは間違いないだろう、と報告が上がってきています」



「そりゃそうよね~、合計6箇所。さらにもう一箇所も攻略するであろうパーティ。

 帝都側からすればつなぎ留めておきたくなるわよね~」



「まぁ、俺達はダンジョン終わったらケラリスへ行くけどね」



「でも、その後を考えるためにもきちっと顔を通して壁とGUは配備したいので、師匠には頑張ってもらいます!」



「はーい……」



「そうすると、和装も作ろうかしらね~」



「あ、いいねー。幾つか型作るよー」



「師匠、そこら辺はあとにしてください。まずは出立の日取りはどうしましょう?」



「はいはいはーい! あと2日待ってほしいです!」



「珍しいね。ソーカが積極的に……」



「実はですね『赤い宝石』明日レッドイーセシュリンプが入荷するそうなので、明後日予約してあるんです!」



「おお、ソーカナイス!」



「それはぜひ食べたいですね。ソーカねーちゃんさすが!」



「そしたら私とユキムラちゃんも2日で服作っちゃいましょう」



 ソーカの胃袋を基準に予定が決められていく白狼隊。

 それからユキムラとヴァリィは服飾に籠って、レンは帝都への指示、ソーカはまだ行っていない飲食店の物色に残りの日数を生かすのでありました。



「これがレッドイーセシュリンプ……」



 以前食べたサファイアシュリンプと並んでレア食材の一つだ。

 目の前に置かれたのは単純に茹でただけのレッドイーセシュリンプ。

 燃え上がるように真っ赤な甲羅が輝いている。



「まずは単純に塩ゆでです。これが一番赤い宝石の旨さを感じられると言われています」



 店の名前赤い宝石はレッドイーセシュリンプの別名から取られている。

 鮮やかな甲羅を外すとうっすらとピンク色の白い身がぶりんっと飛び出してくる。

 海老の香りが湯気とともに鼻孔を刺激し、唾液腺が猛烈に仕事を開始する。

 

「いただきます」



 溢れ出る唾液に注意をしながらかぶりつく。

 歯を弾き返すほどの弾力を一瞬感じるが、ブツリと歯が侵入するとあっさりと身の一部が口の中に転がり込んでくる。同時に大量の旨味を含んだエビのジュースが舌を包み込む。

 小さくなった身を噛むと先程の弾力は少し弱くなっているがしっかりとした噛みごたえが小気味いい。

 噛みしめるたびに大量の旨味が溢れ出し口の中を満たす。

 叩きつけるような強烈な旨味がひくと、あとを引くような上品な甘みが残る。

 ゴクリと身を咀嚼した後にも口の中では優雅な後味が食べるものを喜ばしてくれる。



「ん~~~~~。旨い……」



 ほうっ、とため息が出てしまう旨さだ。

 そして、そのため息に交じる香りでさえも嗅覚を小躍りさせてくれる。

 これが赤い宝石と謳われるレッドイーセシュリンプの破壊力。

 あのソーカも、そのエビの一片一片を大事にじっくりと味わっている。

 それから、エビチリ、エビ餃子、エビチャーハンと堪能した。

 どの料理もそれがはいるだけで何段階も上等な料理に変化する。

 それでも、最初の塩ゆでの衝撃は一番だった。



 ユキムラはこの町にスキルによる赤い宝石の安定供給を一つの目標と掲げることをこの日、決めた。

 

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...