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283話 ウーノの奇跡
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ウーノの街の一番高台に佇む大聖堂。
純白の3つの塔のような作りに赤い屋根。
正面から見るとステンドグラスで女神様が優しく微笑んでいるように見える。
岬に太陽がかかる時、その姿が教会前の白レンガの広間に映し出される姿は絶景で多くの巡礼者が集まる。
太陽の位置とステンドグラスの配置を緻密に計算された素晴らしい過去の遺産の一つだ。
「え……もしかしてあれ……」
「大司教も待ちきれなかったようですね!」
嬉しそうに答えるデリカだが、ユキムラの引きつった笑顔はより一層歪むことになる。
聖堂前の広場に大司教を始めとして司教、司祭、シスター全ての人々がまるで土下座をしているように待機していたのだ。
「真の聖騎士、ユキムラ殿が我らが聖堂へ到着なされたぞ!」
デリカの啖呵で場が悲鳴にも似た歓声に包まれる。
流石に後ろについていたレンもうわぁ……って表情になってしまう。
付いてきたダッゾ達はもう抜け殻のようになっている。
現状を理解することを脳みその容量がオーバーしてしまっているようだった。
コウとナオはまるで自分の事のように誇らしげだ。ほーらやっぱりユキムラにーちゃん達は只者ではないんだよ、とでも言いたげだ。
「はははは、大司教様、過分な歓迎恐縮であります」
ユキムラは下馬しながらあまり使い慣れない丁寧な言葉を一生懸命脳で紡いでいく。
「真なる聖騎士様をこの目に見ることが出来るとは……この老骨、ここまで生きてきた甲斐がございました。遅ればせながらユキムラ様、このウーノの街で大司教を勤めさせていただいておりますキーミッツと申します」
地面に頭を擦り付けんばかりに深々と礼をしてくるキーミッツと言う男性。
老骨とは言っているが、フードに覆われた顔つきは立派な口ひげと顎髭はくろぐろとしており、エネルギッシュな初老の男性、むしろ大司教と言うよりは老獪な戦士の様に見える。
その理由は体つきだ。
司教以上の職種は悪しきものとの戦いの能力も必要なため、皆腕利きの冒険者でもある事が多い。
キーミッツも幾度も不浄なるものと戦い抜いてきた戦士なのだ。
「ユキムラです。白狼隊というパーティのリーダをやっています。今仲間はこちらのレンだけですが、他の仲間は森の中の不審な場所を調べています。
その話も含めていくつかお話したいことがありますのでよろしくお願いします」
「ユキムラ殿、頭をお上げください! 我らで協力できることはなんでもおっしゃってください。
それと……たいへんご無礼なお願いなのですが、女神の腕輪を拝見させて頂いてもよろしいですか?」
キーミッツは我慢ができないと言いたげに自身が持つタリスマンに祈りを捧げ始める。
ユキムラが腕輪をタリスマンに近づけると、以前よりも神々しい光が迸る。
「おおおおおお……アルテス様……」
キーミッツがボロボロと涙を流し始める。
周囲の人々もその光を恍惚とした表情で眺めながら、自身の持つタリスマンや聖道具を掲げて祈りをあげている。
すると周囲の人々の持つ道具も同じような光が溢れ出してくる。
目の前で起こる変化に驚き、そして感涙を流す。
アルテス教は偶像的な物はあまりないが、タリスマン、お守りのようなものが配布される。
功徳や善行を積むことでその与えられた物に溜まっていくという教えだ。
人によっては石であったり、宝石であったり、木片であったり、聖騎士は鎧がそれに当たる。
あまり複雑な教えはなく、女神様はいつも見ていらっしゃるから、それに恥じない行動をしよう。
困っているものには手を貸そう、皆で手を取り合って幸せになろう。
教えを要約するとこれぐらいしかない。
お酒もOK、法に触れなければ娯楽も問題ない。
比較的おおらかな宗教と言える。
ユキムラがアルテス本人からもらった腕輪は、初代国王が女神アルテスより賜った物で、悪しき物達に蹂躙され滅ぼされかけていたケラリス王国を救った英雄が持っていたもの。
真に女神の使いとして世界を救う役目を担う人物に、女神が与える聖遺物と伝えられている。
女神の使いのみが持つことを許されるアイテムということになる。
すなわち、この国の人間からすれば、ユキムラはアルテスと同等に敬うべき人物となる。
本物の女神の腕輪は、女神の加護を受けた道具から祈りの力を具現化させる力があると伝えられている。
聖都ケラリスに祀られている女神の腕輪に祈りを捧げる名誉は、6箇所の大聖堂の大司教と教皇である国王しか許されていない。
今のこの状態は、その名誉をこの場に居るすべての人々が賜っているようなものなのだ。
敬虔な信者たちもすぐにその噂を聞きつけて大聖堂周囲にはまるで女神の記念日の様な人だかりが出来ていた。皆それぞれの聖道具を手に祈りを捧げている。
淡い光がまるで川のように空に立ち上るこの日は、後にウーノの奇跡と呼ばれることになる。
おとぎ話の様なユキムラ達の登場で熱狂した街をどうしようかと頭を悩ませていると、ヴァリィから連絡が入る。
「ユキムラちゃん、やっぱり原因あったわよー。でもいつものダンジョン化はしていない普通のダンジョンみたい……」
「わかった。俺もすぐに向かう」
ユキムラは、取り急ぎ目の前にある危機を除くのが優先と判断する。
「大司教、申し訳ないですが可及的速やかに解決しないといけない問題が起きました」
ユキムラの提言ですぐに話し合いの場所が持たれることになる。
純白の3つの塔のような作りに赤い屋根。
正面から見るとステンドグラスで女神様が優しく微笑んでいるように見える。
岬に太陽がかかる時、その姿が教会前の白レンガの広間に映し出される姿は絶景で多くの巡礼者が集まる。
太陽の位置とステンドグラスの配置を緻密に計算された素晴らしい過去の遺産の一つだ。
「え……もしかしてあれ……」
「大司教も待ちきれなかったようですね!」
嬉しそうに答えるデリカだが、ユキムラの引きつった笑顔はより一層歪むことになる。
聖堂前の広場に大司教を始めとして司教、司祭、シスター全ての人々がまるで土下座をしているように待機していたのだ。
「真の聖騎士、ユキムラ殿が我らが聖堂へ到着なされたぞ!」
デリカの啖呵で場が悲鳴にも似た歓声に包まれる。
流石に後ろについていたレンもうわぁ……って表情になってしまう。
付いてきたダッゾ達はもう抜け殻のようになっている。
現状を理解することを脳みその容量がオーバーしてしまっているようだった。
コウとナオはまるで自分の事のように誇らしげだ。ほーらやっぱりユキムラにーちゃん達は只者ではないんだよ、とでも言いたげだ。
「はははは、大司教様、過分な歓迎恐縮であります」
ユキムラは下馬しながらあまり使い慣れない丁寧な言葉を一生懸命脳で紡いでいく。
「真なる聖騎士様をこの目に見ることが出来るとは……この老骨、ここまで生きてきた甲斐がございました。遅ればせながらユキムラ様、このウーノの街で大司教を勤めさせていただいておりますキーミッツと申します」
地面に頭を擦り付けんばかりに深々と礼をしてくるキーミッツと言う男性。
老骨とは言っているが、フードに覆われた顔つきは立派な口ひげと顎髭はくろぐろとしており、エネルギッシュな初老の男性、むしろ大司教と言うよりは老獪な戦士の様に見える。
その理由は体つきだ。
司教以上の職種は悪しきものとの戦いの能力も必要なため、皆腕利きの冒険者でもある事が多い。
キーミッツも幾度も不浄なるものと戦い抜いてきた戦士なのだ。
「ユキムラです。白狼隊というパーティのリーダをやっています。今仲間はこちらのレンだけですが、他の仲間は森の中の不審な場所を調べています。
その話も含めていくつかお話したいことがありますのでよろしくお願いします」
「ユキムラ殿、頭をお上げください! 我らで協力できることはなんでもおっしゃってください。
それと……たいへんご無礼なお願いなのですが、女神の腕輪を拝見させて頂いてもよろしいですか?」
キーミッツは我慢ができないと言いたげに自身が持つタリスマンに祈りを捧げ始める。
ユキムラが腕輪をタリスマンに近づけると、以前よりも神々しい光が迸る。
「おおおおおお……アルテス様……」
キーミッツがボロボロと涙を流し始める。
周囲の人々もその光を恍惚とした表情で眺めながら、自身の持つタリスマンや聖道具を掲げて祈りをあげている。
すると周囲の人々の持つ道具も同じような光が溢れ出してくる。
目の前で起こる変化に驚き、そして感涙を流す。
アルテス教は偶像的な物はあまりないが、タリスマン、お守りのようなものが配布される。
功徳や善行を積むことでその与えられた物に溜まっていくという教えだ。
人によっては石であったり、宝石であったり、木片であったり、聖騎士は鎧がそれに当たる。
あまり複雑な教えはなく、女神様はいつも見ていらっしゃるから、それに恥じない行動をしよう。
困っているものには手を貸そう、皆で手を取り合って幸せになろう。
教えを要約するとこれぐらいしかない。
お酒もOK、法に触れなければ娯楽も問題ない。
比較的おおらかな宗教と言える。
ユキムラがアルテス本人からもらった腕輪は、初代国王が女神アルテスより賜った物で、悪しき物達に蹂躙され滅ぼされかけていたケラリス王国を救った英雄が持っていたもの。
真に女神の使いとして世界を救う役目を担う人物に、女神が与える聖遺物と伝えられている。
女神の使いのみが持つことを許されるアイテムということになる。
すなわち、この国の人間からすれば、ユキムラはアルテスと同等に敬うべき人物となる。
本物の女神の腕輪は、女神の加護を受けた道具から祈りの力を具現化させる力があると伝えられている。
聖都ケラリスに祀られている女神の腕輪に祈りを捧げる名誉は、6箇所の大聖堂の大司教と教皇である国王しか許されていない。
今のこの状態は、その名誉をこの場に居るすべての人々が賜っているようなものなのだ。
敬虔な信者たちもすぐにその噂を聞きつけて大聖堂周囲にはまるで女神の記念日の様な人だかりが出来ていた。皆それぞれの聖道具を手に祈りを捧げている。
淡い光がまるで川のように空に立ち上るこの日は、後にウーノの奇跡と呼ばれることになる。
おとぎ話の様なユキムラ達の登場で熱狂した街をどうしようかと頭を悩ませていると、ヴァリィから連絡が入る。
「ユキムラちゃん、やっぱり原因あったわよー。でもいつものダンジョン化はしていない普通のダンジョンみたい……」
「わかった。俺もすぐに向かう」
ユキムラは、取り急ぎ目の前にある危機を除くのが優先と判断する。
「大司教、申し訳ないですが可及的速やかに解決しないといけない問題が起きました」
ユキムラの提言ですぐに話し合いの場所が持たれることになる。
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