老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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292話 こだわり

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 サナダ商会は信頼できる幹部たちに任せて、白狼隊とコウ、ナオ。

 それにキーミッツとデリカは聖都へと向けて出発する。

 キーミッツとデリカはたくさんの護衛を引き連れてー……という話だったが。

 結局、最小限の人員にして、ユキムラはマイクロバスのような魔道具を作った。

 異形な馬の引かない馬車に、町の人間は少し驚くが、ユキムラがやったことであると驚くほど自然に受け入れられる。

 

 山道を颯爽と進むマイクロバス。

 車内の高位司教や衛兵の副隊長クラスは皆キョロキョロと落ち着かない。

 慣れていないと、窓から見える進行速度と、車内の状況との違和感が半端ない。

 

「ほう、この日本茶とみたらし団子というのは、素晴らしい組み合わせですね」



 キーミッツはニコニコしながらソーカが用意した和菓子を頬張っている。

 デリカも二本目のあんこに手を伸ばす。

 ユキムラは磯辺ラブだ。

 

「同じスキルで作っても個性出るって面白いよねー、ソーカの料理スキルは情熱を感じるよ」



「情熱っていうか執念じゃ……あいてっ!」



 余計なことを言ってげんこつをもらうレン、ソーカのことになると未だに村の少年であることが抜けない。

 ナオは少しその姿を羨ましそうに見ながらも、コウと一緒に他の方々にお茶を出したりと仕事に従事している。

 二人の凛々しい執事姿、可愛らしいメイド姿に皆の頬も緩む。

 しかし、誰が想像できるだろうか? 

 この二人の一見、洋服にしか見えない執事服、メイド服が、自分たちの持つ戦闘用の装備よりも遥かに強力な装備であることを……



 遥かに強力というか、天地程の差がある。

 キーミッツとデリカにしてもあの腕輪一つのエンチャントで規格外な能力を手に入れられるのに、こだわり抜いた一品だったらその装備の威力は計り知れない。

 ユキムラやヴァリィなんてある意味自分たちの武具よりも力を入れて制作しているほど、現状における白狼隊の技術と素材、情熱の粋を注ぎ込んだ一品となっている。



 それではそれぞれの装備を紹介していこう。

 コウ専用疑似知的反応搭載型燕尾服型戦闘用スーツ。

 所謂いわゆる英国風燕尾服仕立てのデザインになっている。

 色はまるで夜空を切り取ったような鮮やかな黒。

 ベストはグレイ。品よくまとめている。

 全体的に落ち着いた雰囲気を作るため、小物もシンプルにシルバーで統一している。

 ネクタイは蝶ネクタイではなくノーマルな形だ。そのせいで全体的にスタイリッシュな印象を与える。

 若いコウに合わせたコーディネートになっている。

 一見すると黒の革靴に見えるブーツも、実際には可動性にすぐれ、上着は体型に合わせた立体縫製により、激しい戦闘時でもまるで何も着ていないかのように動くことが出来る。

 それでいて見るものには服装に一ミリの乱れも感じさせない。

 ヴァリィの超絶技巧を惜しむこと無く注ぎ込んでいる。

 武器は武器と見えない真っ白な手袋だ。

 執事がつけている品のいい手袋。一見するとそうとしか見えない。

 しかし中身は最高で10種類の魔法を打撃攻撃に乗せることが出来る魔法武器。

 大地を叩けば地面を砕き、大岩をも粘土遊びのように砕いてしまう。

 魔法詠唱時には魔法陣が浮かび上がるデザインはユキムラのお気に入りだ。

 とっておきの秘密武器も仕込んであるが、まだ二人は内緒にしている。

 

 ユキムラは今回の装備に擬似知的反応。インテリジェンスアイテムの属性を付与している。

 執事の執事のような機能が備えられており、重要な会話の録音、メモなどその役割は多岐にわたり、コウの仕事をサポートしてくれる。

 戦闘時においてもデータベースから敵のデータを読み込んだり、周囲の状況を判断して助言をくれたりとこれからのコウの戦いにおいて力強い助力となるだろう。

 戦闘時の性能は、ユキムラがやりすぎたかな? と思うほどだ。説明は不要だろう。



 ナオ専用疑似知的反応搭載フレンチメイド型戦闘用メイド服。

 戦闘用メイド服というパワーワードからも分かる通り、強大な戦闘能力を持つ。

 エプロンにカチューシャ、フリフリのスカート、パフスリーブ、ペチコートを利用したボリュームのあるミニスカート。ただし、絶対に、どんな動きをしても、決して『見えない』。

 これはヴァリィとユキムラの心血を注いだ技術の結晶だ。

 ハッキリ言って10代前半にしか見えないナオが着るとまさにお人形のように可愛らしい。

 それでいてミニスカートから覗く足は見るものを例外なくドキリとさせる。

 実際には15歳だからすでに成人扱いされる頃なんだが……



 武器はフランシスカ、小型の投擲に適した斧だ。

 ユキムラが作り上げた魔道具によるシステムで、投擲した斧を任意のタイミングで手元に呼び戻すことが可能だ。最高6本の斧で近接・中距離において苛烈極まる攻撃を可能にしている。

 体術とセンスによって投げられる斧、斬りつけられる斧のコンビネーションは嵐のように敵を切り裂いていくだろう。



 なんにせよ、二人の装備には大きな夢と情熱が込められている。

 

「ユキムラ殿。聖都ケラリスが見えてきました」



 えっ!? もう!?

 と付いてきた人々は一斉に前方の窓に殺到する。

 間違いなく目の前には聖都ケラリスがその美しい姿を現していた。 



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