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サプライズ、成功?

7号とか…細いし、ホントちっこいな

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「――で、音芽おとめ。返事は?」

 ムスッとした顔で聞いてくるのは、温和はるまさが照れている証拠。

「そんなの……今更じゃない。私、小さい頃にもちゃんと返事してるよ?」

 クスッと笑って温和はるまさを見つめたら、赤い顔をして目をそらされた。

 やだ、温和はるまさ。可愛いっ。


***


「――でもね温和はるまささん。ひとつだけ困った事があるのです」

 わざと仰々ぎょうぎょうしくそう言って、左手を温和はるまさの前にさし出す。

「子供の頃にもらった花の指輪はことごとく枯れてなくなってしまいました。見たところナットも用意されていないようです。私、温和はるまさにプロポーズされたら、絶対ココに目印が欲しいのに……用意されていないみたいなんですが?」

 指輪を準備してプロポーズに臨まないところが、何だかひねくれ者の温和はるまさらしくて憎めないなって思ってしまう。

 でも、ちゃんとくれる、よね?

 佳乃花かのかたちの幸せそうな話を聞いて、温和はるまさ、私に聞いてくれたものね?

 指輪をもらったら音芽お前はつけるんだな?って。

 さり気なく彼女の指のサイズを測るとか……そういうことができないのが温和はるまさなんだとしたら……。
 貴方が、回りくどいプロポーズは性分じゃないって言うんだとしたら……。

 私、サプライズじゃなくてもいい。

「ここで不器用な温和はるまささんにスペシャルな情報です。――ジャジャーン! なんと私の左手薬指は7号サイズですっ!」

 温和はるまさに左手を見せてそう告げたら、その手をギュッと握られた。

「7号とか……細いし、ホントちっこいな」

 そのまま手の甲にそっと口付けられて、私は凄く照れてしまう。

 ちょ、さっきのプロポーズより今の方がよっぽどそれっぽいですよ!?

「は、温和はるまさ……?」

 恥ずかしくて、握られた手を引っ込めようとするのに、温和はるまさったら全然離してくれなくて。

 ばかりか、手をグイッと引っ張られて、真正面からきつく抱きしめられてしまう。

 温和はるまさは当然のように私の頭を彼の胸元に押さえつけて、温和じぶんの顔を振り仰げないようにして、
「その……指輪だけどな。――どんなのがいい?」
 って聞いてくるの。

 私、自分と同じボディソープの香りに包まれた、でもまとった服の柔軟剤の香りなんかが違うから、やっぱり温和はるまさなんだって実感させられる香りを胸一杯に吸い込みながら――。

 照れ屋さんで顔を見せてくれない温和はるまさに言うの。
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