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(1)真夜中の通販

シロネコさん、すっごい力持ち!

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 しかし実は日和美ひなみが買った布団、中身が木綿コットンなのは、掛け布団も変わらない。

 今まで羽毛布団を愛用していた日和美は知らない。

 コットン入りの布団は、掛け布団もヘビー級。羽毛よりも大体二キロぐらい重いのだ。

 因みにコットン百パーセントの掛け布団は平均四.五キロ、敷布団は六キロくらいの重量があると言われている。

 いま日和美がえっちらおっちら運んでいるのは六キロぐらいある敷布団ということで。

 身長一五三センチの小柄な日和美がふらつくのも無理はなかった。


 祖母から、木綿の布団は陰干し推奨、直射日光に当てて干すのは生地を劣化させるからあまり良くないと聞いたことがある。でも今日ぐらいいいよね?と日和美は自分を甘やかしてみたり。

 きっとカバーを掛ければ布団自体の生地が傷むのだって防げるはずだ。

 どうせ枕だって新調しないと心機一転にはなりそうにないし、あとで『ファッションセンターしまむた』で買ってこよう、と心に決める。

 日和美ひなみは太陽光をたっぷり浴びたふかふかのぬくぬくお布団が大好きなのだ。

 うんしょ、うんしょと掛け声を掛けながら敷布団をベランダに持ち出す。

 一旦ベランダの柵に重い敷布団を立てかけてから、先に掛け布団を干そうと思い至った日和美は、「かっけぶとん~♪」と謎の歌を口ずさみながら一旦部屋の中に戻った。

 そうして軽い気持ちで「よっ」と掛け布団を持ち上げようとして「え!?」と声を上げた。

「何これ、こっちも重いじゃん!」

 そういえばこの布団一式を持ち運んでくれた配送業者のシロネコヤマトさん、めちゃくちゃ息が上がっていた気がする、と思い至る。

 単に一階から階段を使ったからかな?とか思っていたけれど、エレベーターがあるのに大荷物を持った彼がそれを使わなかったとは考えにくいではないか。

 日和美の部屋は西側に設置された、階段にもエレベーターにも一番近い角部屋だ。

 なのに――。

「わぁ~。めっちゃ重かったんだ」

 今更のようにそんなことに気がついた日和美だ。

 掛け敷き二セットが、圧縮されていたとはいえ、ひとまとめに梱包されていたのだから重くないわけがない。

「シロネコさん、すっごい力持ち!」

 今度から通販で買ったものが届くたび、シロネコのお兄さんの二の腕の筋肉とかチェックしてしまいそうだよぅ!とニマニマした日和美ひなみだ。

(けど……今はそんなことを考えている場合じゃないっ)

 日和美はフルフルと頭を振ると、ふかふかぬくぬくお布団ミッションを完遂かんすいすべく行動しなくては!と思い直した。 
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