23 / 233
*キスのレッスン
4
しおりを挟む
「僕は……貴女の初めてのキスの相手が自分なのだと知って……そのことが余りに嬉しくて……その、年甲斐もなく、顔がにやけてしまったんです。それを、日織さんに見られるのが恥ずかしくて……思わず後ろを向いてしまいました」
貴女より一回り以上も年上なのに、僕もまだまだです、と付け加えてから、
「それでも日織さんをこんな風に不安にさせると分かっていたら、嬉しくて顔がにやけてしまいました、と素直に言った方がはるかにマシでした……。本当にごめんなさい」
言って、まだ乾き切らない私の頬をそっと撫でると、壊れ物を扱うように優しく抱きしめてくださった。
私は彼の言葉に心の底から安堵して……今まで生きてきて感じたことがないくらい異性――修太郎……さん――のことを狂おしいほどに愛しい、と思った。
それは、ずっと許婚だと言われ続けてきた健二さんにすら抱いたことのない感情で――。
いま目の前にいらっしゃる、彼以外の男性とお付き合いすることは考えられない、とはっきり自覚した。
私はきっと、健二さんや彼のご両親、そしてお父様やお母様と一度ちゃんと向き合わなくてはいけない……。
そこまで考えて、ふと中本さんが前に仰っていらした、『彼、親が決めた女性がいるとかで、誰にもなびかないから』という言葉を思い出す。
そういえば……自分のことに手一杯ですっかり失念していたけれど……。彼にも決められたお相手がいらっしゃったんじゃ?
そう気がついたら、その事が気になってたまらなくなってしまう。でも、意気地なしの私は、それを直接問いただすことが出来なくて……。
「塚……、しゅ、修太郎さん……。わ、私、その……同年代の女の子らちが普通に出来て当らり前のこと、殆ろ何も知りません。それれも……そんな私が……貴方の隣にいれも……構い……ませ、んか?」
本当は、貴方の隣は私じゃない誰かのために空けてあったのではないですか?と聞きたかった。
私の隣にずっと健二さんの居場所が設けられてきたように、修太郎さんのそばにも。
そう思ったら途端悲しくなって、思わずギュッと下唇を噛み締める。
自分のことを棚に上げて、私は本当に自分勝手だ。
そのことに自己嫌悪して、唇を食む力が、無意識に強くなる。
それに気づいた修太郎さんが、私の唇を指の腹で掠めるように優しく撫でてから、
「日織さん以外の女性を自分のそばに置くことなど、貴女と出会った日からずっと、一度も考えたことはありません」
言って、唇を噛み締めたことを諫めるように、口の中にそっと指を差し入れていらっしゃる。
「そんなに噛んではいけません。肌に傷がついてしまう」
言って、修太郎さんは私に優しく口付けた。
貴女より一回り以上も年上なのに、僕もまだまだです、と付け加えてから、
「それでも日織さんをこんな風に不安にさせると分かっていたら、嬉しくて顔がにやけてしまいました、と素直に言った方がはるかにマシでした……。本当にごめんなさい」
言って、まだ乾き切らない私の頬をそっと撫でると、壊れ物を扱うように優しく抱きしめてくださった。
私は彼の言葉に心の底から安堵して……今まで生きてきて感じたことがないくらい異性――修太郎……さん――のことを狂おしいほどに愛しい、と思った。
それは、ずっと許婚だと言われ続けてきた健二さんにすら抱いたことのない感情で――。
いま目の前にいらっしゃる、彼以外の男性とお付き合いすることは考えられない、とはっきり自覚した。
私はきっと、健二さんや彼のご両親、そしてお父様やお母様と一度ちゃんと向き合わなくてはいけない……。
そこまで考えて、ふと中本さんが前に仰っていらした、『彼、親が決めた女性がいるとかで、誰にもなびかないから』という言葉を思い出す。
そういえば……自分のことに手一杯ですっかり失念していたけれど……。彼にも決められたお相手がいらっしゃったんじゃ?
そう気がついたら、その事が気になってたまらなくなってしまう。でも、意気地なしの私は、それを直接問いただすことが出来なくて……。
「塚……、しゅ、修太郎さん……。わ、私、その……同年代の女の子らちが普通に出来て当らり前のこと、殆ろ何も知りません。それれも……そんな私が……貴方の隣にいれも……構い……ませ、んか?」
本当は、貴方の隣は私じゃない誰かのために空けてあったのではないですか?と聞きたかった。
私の隣にずっと健二さんの居場所が設けられてきたように、修太郎さんのそばにも。
そう思ったら途端悲しくなって、思わずギュッと下唇を噛み締める。
自分のことを棚に上げて、私は本当に自分勝手だ。
そのことに自己嫌悪して、唇を食む力が、無意識に強くなる。
それに気づいた修太郎さんが、私の唇を指の腹で掠めるように優しく撫でてから、
「日織さん以外の女性を自分のそばに置くことなど、貴女と出会った日からずっと、一度も考えたことはありません」
言って、唇を噛み締めたことを諫めるように、口の中にそっと指を差し入れていらっしゃる。
「そんなに噛んではいけません。肌に傷がついてしまう」
言って、修太郎さんは私に優しく口付けた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
131
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる