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私の好きな人

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「お、お父様っ!」

 思わず熱くなったほっぺを覆うように隠して抗議の声をあげたら、お父様はふっと真顔になって私を見つめていらして。

「なぁ日織ひおり。お前、本当に修太郎しゅうたろうくんのことを愛しているのか?」

 私が手にしたままだった、報告書という名の恋文をスッと抜き取りながら、尋ねていらっしゃる。

「はい、もちろんです」

 私もそんなお父様の目を真っすぐに見つめて真剣にそうお応えすると、お父様は安心なさったように表情を緩められた。

「この手紙を読めば、修太郎くんがお前のことをとても大切に思ってくれているのは一目瞭然だ。しかしお前と彼は年齢もひとまわり以上離れているし……いくら好かれているからといって、お前にその気がないのなら、いつまでも彼に気を持たせるようなことをするのは酷だと思ってね。それこそ、日織の気持ち如何いかんによっては修太郎くんからお前を離すことも考えていたんだよ。――なぁ日織、お前は本当に修太郎くんと一緒にいたいんだよな?」

(そんなに何度も確認していらっしゃらなくても……)

 そう思った途端、お父様は私が修太郎さんとお付き合いすることにもしかして反対なのかな?と不安になる。

 思わず腿の上でギュッと手を握りしめたら、横に座っていらしたお母様が、私の右手にご自分の手をそっと重ねていらした。

 私はお母様の手に左手を添えると、ほんの少しだけ力を込めて握りかえす。お母様から勇気を頂いたような気がして。

「――愚問です、お父様。私も修太郎さんと同じぐらい、いいえもしかしたらそれ以上に……彼のことが大好きです。だから……どうかお願いします。私から……修太郎さんを奪わないでくださいっ」

 一度もお父様から視線を逸らすことなく、私は凛とした声音でそう言い切った。

 二十年間生きてきて、こんなにハッキリと自分の気持ちを両親に伝えたことはなかったかも知れない。

「そうか。分かったよ、日織。――ならば、父さんと母さんは、お前と修太郎くんを全力で応援しよう」

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