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僕は今日どうしても
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私がジタバタと悪足掻きのような薄化粧を終えた頃、修太郎さんがお迎えに来てくださいました。
チャイムの音に、お父様とお母様が玄関に出て応対して下さっている気配がします。
私は結局そんなに減らせなかった荷物に、さっき使ったパウダーを更に追加していそいそと立ち上がりました。
重くなってしまった荷物を持って、ふらつきながらも小走りで玄関に向かうと、すぐにお父様と目が合いました。
「日織、修太郎くんにあまり迷惑を掛けないようにな? それから……良かったな」
ぽんっ、と頭に手を載せられて、そう声を掛けられました。
「はい」
ニコッと笑ってそうお答えしたら、荷物の重みで身体がぐらりと傾きました。
と、お父様よりも先に修太郎さんの手が伸びてきて、私を支えて下さってから、すぐに荷物を引き取られてしまって。
「あっ、あのっ」
重いので……と手を伸ばしたら、「転ばれたら困ります」とたしなめられました。
はい、弁解の余地もありません。
私は修太郎さんに重い荷物をお任せして、これ、と決めていた厚底の白いスニーカーを履きました。
ヒールと違って安定感はあるのであまり疲れませんが、気をつけないと足首を捻ってしまいます。
靴を履き終わってそろりと立ち上がると、修太郎さんが、一瞬だけほんの少し縮んだ身長差に瞳を見開かれてから、私の足元を確認なさいました。それから何も言わずに荷物を持っていらっしゃらない方の腕をスッと差し出していらして。
戸惑う私に「転ばないように腕、組みましょう」とニッコリなさる。
ひゃー、修太郎さんはなんでもお見通しみたいですっ。
私は照れながら修太郎さんの腕につかまりました。
「行って参ります」
そのまま振り返って両親にあいさつをすると、修太郎さんが「お嬢さんをお預かりします」と言葉を重ねていらして。
お父様とお母様に見送られて、私はドキドキしながら修太郎さんと家を後にしました。
修太郎さんをがっかりさせないように頑張りますっ!
「日織さん、今日は何だかいつもと雰囲気が違いますね」
修太郎さんは、家の前の駐車場に停めていらした愛車に私をエスコートしてくださると、車内に乗り込むなりそうおっしゃいました。
「もしかして、変……ですか?」
イメチェンをはかったくせに、修太郎さんに指摘された途端、ソワソワと胸騒ぎを感じてしまう。
不安に思いながら彼のお顔をじっと見つめたら、「まさか。とても素敵です」と言ってくださって、ホッとする。
「それに――」
そこで私の頬に手を伸ばしていらっしゃると、修太郎さんの指先がそっと耳たぶに触れる。その感触に思わず「んっ」と小さく声が漏れてしまって、私は恥ずかしくて頬に熱がこもるのを感じた。
「僕がプレゼントしたイヤリングも付けて来て下さって……本当に嬉しいです」
そんな私の耳元に、運転席側から身を乗り出すようにして唇を寄せていらっしゃると、修太郎さんが耳朶に吐息がかかる距離で囁かれる。
そのまま耳たぶにチュッとキスをされた私は、
「ひゃっ」
思わず耳を押さえて変な声を出してしまってから、真っ赤になって修太郎さんの方を見遣る。
「ごめんなさい、あんまり可愛らしいお耳だったので、つい」
言いながらクスクスと笑っていらっしゃる修太郎さんは、絶対に確信犯だと思いますっ。
チャイムの音に、お父様とお母様が玄関に出て応対して下さっている気配がします。
私は結局そんなに減らせなかった荷物に、さっき使ったパウダーを更に追加していそいそと立ち上がりました。
重くなってしまった荷物を持って、ふらつきながらも小走りで玄関に向かうと、すぐにお父様と目が合いました。
「日織、修太郎くんにあまり迷惑を掛けないようにな? それから……良かったな」
ぽんっ、と頭に手を載せられて、そう声を掛けられました。
「はい」
ニコッと笑ってそうお答えしたら、荷物の重みで身体がぐらりと傾きました。
と、お父様よりも先に修太郎さんの手が伸びてきて、私を支えて下さってから、すぐに荷物を引き取られてしまって。
「あっ、あのっ」
重いので……と手を伸ばしたら、「転ばれたら困ります」とたしなめられました。
はい、弁解の余地もありません。
私は修太郎さんに重い荷物をお任せして、これ、と決めていた厚底の白いスニーカーを履きました。
ヒールと違って安定感はあるのであまり疲れませんが、気をつけないと足首を捻ってしまいます。
靴を履き終わってそろりと立ち上がると、修太郎さんが、一瞬だけほんの少し縮んだ身長差に瞳を見開かれてから、私の足元を確認なさいました。それから何も言わずに荷物を持っていらっしゃらない方の腕をスッと差し出していらして。
戸惑う私に「転ばないように腕、組みましょう」とニッコリなさる。
ひゃー、修太郎さんはなんでもお見通しみたいですっ。
私は照れながら修太郎さんの腕につかまりました。
「行って参ります」
そのまま振り返って両親にあいさつをすると、修太郎さんが「お嬢さんをお預かりします」と言葉を重ねていらして。
お父様とお母様に見送られて、私はドキドキしながら修太郎さんと家を後にしました。
修太郎さんをがっかりさせないように頑張りますっ!
「日織さん、今日は何だかいつもと雰囲気が違いますね」
修太郎さんは、家の前の駐車場に停めていらした愛車に私をエスコートしてくださると、車内に乗り込むなりそうおっしゃいました。
「もしかして、変……ですか?」
イメチェンをはかったくせに、修太郎さんに指摘された途端、ソワソワと胸騒ぎを感じてしまう。
不安に思いながら彼のお顔をじっと見つめたら、「まさか。とても素敵です」と言ってくださって、ホッとする。
「それに――」
そこで私の頬に手を伸ばしていらっしゃると、修太郎さんの指先がそっと耳たぶに触れる。その感触に思わず「んっ」と小さく声が漏れてしまって、私は恥ずかしくて頬に熱がこもるのを感じた。
「僕がプレゼントしたイヤリングも付けて来て下さって……本当に嬉しいです」
そんな私の耳元に、運転席側から身を乗り出すようにして唇を寄せていらっしゃると、修太郎さんが耳朶に吐息がかかる距離で囁かれる。
そのまま耳たぶにチュッとキスをされた私は、
「ひゃっ」
思わず耳を押さえて変な声を出してしまってから、真っ赤になって修太郎さんの方を見遣る。
「ごめんなさい、あんまり可愛らしいお耳だったので、つい」
言いながらクスクスと笑っていらっしゃる修太郎さんは、絶対に確信犯だと思いますっ。
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