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18.勝者のつもりで
希望を申し上げてもよろしいですか?
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(少しは嫌がる素振りを見せなさいよ。面白くない男ね!)
今までなら絶対に自分がこんな態度を取ることは許さなかったはずなのに、嫌な顔すらせず、淡々と言葉を紡いでくるところがなんとも憎らしい。
「呼び名はライオールで頼む。父と呼ばれるのには抵抗があるのでね。――で、用件は何かな? 時間がない。単刀直入に話して欲しい」
感情の一切感じられない淡々とした声音。
これ以上無駄話をすると、一線ひかれてしまいそうなピリピリとした空気が漂っていた。
だからこそ、ダフネは〝本題〟から入ることにした。
「先日のお話で、私がライオール家の養女になることは、すでに決まっていると理解しています」
確認するような言い方ではなかった。
事実をなぞるだけの、穏やかな声音。
ランディリックは否定しない。
「その認識で構わない。――すでに王城への手続きは済んでいる」
眼前の辺境伯から養女にしたいという打診があってから、まだ数日しか経っていない。そんなわずかな時間で、このすました顔の男がすでに王城まで出向いているのだと思うと、彼の本気度が伝わってくるようで、ダフネはティーカップの陰でひそかに口角を上げた。
(そうまでして私に取り入って口止めをしておきたいほど、私のことが重要なのね)
ダフネとしては、リリアンナを好きだとバレバレなセレンの意識を、束の間でもいいから自分へ向けさせたかっただけ。実際にはその目論見は叶わなかったわけだけれど、自衛のために吐いた嘘がこんなに大きな効果をもたらすだなんて思ってもみなかった。
(リリアンナお義姉様に、彼女の婿候補の不祥事を知られるのがそんなにも嫌ってこと?)
ランディリックがリリアンナを溺愛しているというのは風の噂に聞いてはいたけれど、ここまで過保護とは思っていなかった。
(ま、お義姉様は世間知らずな上に潔癖そうだものね)
自分より年上だが、きっとリリアンナは男を知らないのではないだろうか。
そう思い至ると、そういう部分でも自分のほうが女性として優位に立てている気がしてなんだか気分がいい。
(どこまでだったら許されるのかしら?)
自分のワガママが、どこまでなら通るのか試してみたくなったダフネである。
(あわよくば、と思っていたけど……この感じだと断られる可能性もあるかも……?)
そこでダフネは視線を一度、すぐ隣に座るセレンへと流した。
彼は何も言わず、ただ静かにティーカップへ物憂げな視線を落としている。
その横顔の美しさに一瞬見惚れて、ダフネは小さく吐息を落とした。
「でしたら、ライオール様。――今後の扱いについて、少しだけ希望を申し上げてもよろしいですか?」
「希望、か」
「ええ。侯爵家の養女として迎えていただく以上、社交の場に出る準備も必要になりますもの」
言葉を選びながらも、躊躇はない。
「セレン様は今年のデビュタントにご参加なさるために王都へいらしてるんですよね?」
いきなり話の水を向けられて、セレンは胡乱げな表情をダフネへ向ける。
そんなセレンに代わって答えたのはランディリックだ。
「その通りだが、それがなにか?」
さして抑揚はないまでも、声音に少し強張りが感じられると思ったダフネは、一度だけ呼吸を整えると要求を口にした。
今までなら絶対に自分がこんな態度を取ることは許さなかったはずなのに、嫌な顔すらせず、淡々と言葉を紡いでくるところがなんとも憎らしい。
「呼び名はライオールで頼む。父と呼ばれるのには抵抗があるのでね。――で、用件は何かな? 時間がない。単刀直入に話して欲しい」
感情の一切感じられない淡々とした声音。
これ以上無駄話をすると、一線ひかれてしまいそうなピリピリとした空気が漂っていた。
だからこそ、ダフネは〝本題〟から入ることにした。
「先日のお話で、私がライオール家の養女になることは、すでに決まっていると理解しています」
確認するような言い方ではなかった。
事実をなぞるだけの、穏やかな声音。
ランディリックは否定しない。
「その認識で構わない。――すでに王城への手続きは済んでいる」
眼前の辺境伯から養女にしたいという打診があってから、まだ数日しか経っていない。そんなわずかな時間で、このすました顔の男がすでに王城まで出向いているのだと思うと、彼の本気度が伝わってくるようで、ダフネはティーカップの陰でひそかに口角を上げた。
(そうまでして私に取り入って口止めをしておきたいほど、私のことが重要なのね)
ダフネとしては、リリアンナを好きだとバレバレなセレンの意識を、束の間でもいいから自分へ向けさせたかっただけ。実際にはその目論見は叶わなかったわけだけれど、自衛のために吐いた嘘がこんなに大きな効果をもたらすだなんて思ってもみなかった。
(リリアンナお義姉様に、彼女の婿候補の不祥事を知られるのがそんなにも嫌ってこと?)
ランディリックがリリアンナを溺愛しているというのは風の噂に聞いてはいたけれど、ここまで過保護とは思っていなかった。
(ま、お義姉様は世間知らずな上に潔癖そうだものね)
自分より年上だが、きっとリリアンナは男を知らないのではないだろうか。
そう思い至ると、そういう部分でも自分のほうが女性として優位に立てている気がしてなんだか気分がいい。
(どこまでだったら許されるのかしら?)
自分のワガママが、どこまでなら通るのか試してみたくなったダフネである。
(あわよくば、と思っていたけど……この感じだと断られる可能性もあるかも……?)
そこでダフネは視線を一度、すぐ隣に座るセレンへと流した。
彼は何も言わず、ただ静かにティーカップへ物憂げな視線を落としている。
その横顔の美しさに一瞬見惚れて、ダフネは小さく吐息を落とした。
「でしたら、ライオール様。――今後の扱いについて、少しだけ希望を申し上げてもよろしいですか?」
「希望、か」
「ええ。侯爵家の養女として迎えていただく以上、社交の場に出る準備も必要になりますもの」
言葉を選びながらも、躊躇はない。
「セレン様は今年のデビュタントにご参加なさるために王都へいらしてるんですよね?」
いきなり話の水を向けられて、セレンは胡乱げな表情をダフネへ向ける。
そんなセレンに代わって答えたのはランディリックだ。
「その通りだが、それがなにか?」
さして抑揚はないまでも、声音に少し強張りが感じられると思ったダフネは、一度だけ呼吸を整えると要求を口にした。
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