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18.勝者のつもりで
どこまで知っているか知りたいか?
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「それは構わないが、セレン公はノアール侯爵家の跡取りではない。……ついでに言えば我が家は一代限りの侯爵家。お前がセレン公を婿養子に取りたいと言ってきたところで、家督の継承権はないのだよ。もし仮に……王からそれを認められたとしても、そんな彼と結婚すれば、お前は北の辺境に居を構えることになるだろうな。――それはいいのか?」
ライオール家の養女にすると申し入れられた時、寒いところは苦手だという理由でランディリックの治めるニンルシーラには行きたくないとごねたのは他ならぬダフネ自身だ。
それを指摘するだけならまだしも、侯爵家嫡男との婚姻にはならないし、ライオール家の家督を継ぐことも出来ないがいいのか? と重ねられたダフネは、言葉に詰まった。
(でも――私にはセレン様に初めてを捧げたと言う切り札がある! まだ負けたわけじゃないわ!)
ダフネは、そう思い込もうとした。
だが――。
「話は終わったようだな。――リリーが家で待ってる。僕はこれで失礼するよ」
何も言えないダフネをしばし見つめたのち、ランディリックが何の躊躇いもないみたいに席を立ってしまう。
「ライオール様!」
これといって言いたいことがあるわけではなかった。ただ、リリアンナの名を出されて、自分が彼女と天秤にかけられ、当然のように軽視されたと感じて悔しかっただけ。このままランディリックを立ち去らせるのだけは何としても阻止したかった。
「わ、私、リリアンナお義姉様に会いたい!」
立ち上がるなり、何の考えもなしに口をついて出た言葉に、場の空気が一瞬にして凍りついたのが分かった。
「――どの口がそれを言う?」
今までどんなに言葉を重ねても、さして感情的にならなかったランディリックが、初めて嫌悪感に満ちた表情でダフネを見下ろしている。
ダフネはその視線にひゅっと喉の奥が潰れるような錯覚に陥ったけれど、すぐさま自分を鼓舞して言葉を重ねた。
「あ、謝りたいんです、リリアンナお義姉様に!」
言って、ランディリックの顔色を窺ったけれど、表情がいまいち読めない。それで、ダフネはさらに必死になって言い募った。
「私たち、ライオール様を介してまた姉妹みたいになるのでしょう? わだかまりは消しておきたいのです!」
「ダフネ嬢!」
さすがにまずいと思ったのかもしれない。何も言わずにダフネを見下ろすランディリックを制するように、今までだんまりを決め込んでいたウィリアムが割って入った。
だがランディリックはそんな友を押し退けると、ダフネのすぐ横へ立った。
そうして少し身体を屈めると、ダフネの耳元で、ダフネにだけ聞こえる声音で囁く。
「ウィルのペンを使ったお前の愚行――、私がどこまで知っているか、知りたいか?」
「――っ!?」
その囁きは、脅しでも忠告でもなかった。
ただ事実を、確かめるための問いだった。
ダフネは、なにも答えられなかった。
ライオール家の養女にすると申し入れられた時、寒いところは苦手だという理由でランディリックの治めるニンルシーラには行きたくないとごねたのは他ならぬダフネ自身だ。
それを指摘するだけならまだしも、侯爵家嫡男との婚姻にはならないし、ライオール家の家督を継ぐことも出来ないがいいのか? と重ねられたダフネは、言葉に詰まった。
(でも――私にはセレン様に初めてを捧げたと言う切り札がある! まだ負けたわけじゃないわ!)
ダフネは、そう思い込もうとした。
だが――。
「話は終わったようだな。――リリーが家で待ってる。僕はこれで失礼するよ」
何も言えないダフネをしばし見つめたのち、ランディリックが何の躊躇いもないみたいに席を立ってしまう。
「ライオール様!」
これといって言いたいことがあるわけではなかった。ただ、リリアンナの名を出されて、自分が彼女と天秤にかけられ、当然のように軽視されたと感じて悔しかっただけ。このままランディリックを立ち去らせるのだけは何としても阻止したかった。
「わ、私、リリアンナお義姉様に会いたい!」
立ち上がるなり、何の考えもなしに口をついて出た言葉に、場の空気が一瞬にして凍りついたのが分かった。
「――どの口がそれを言う?」
今までどんなに言葉を重ねても、さして感情的にならなかったランディリックが、初めて嫌悪感に満ちた表情でダフネを見下ろしている。
ダフネはその視線にひゅっと喉の奥が潰れるような錯覚に陥ったけれど、すぐさま自分を鼓舞して言葉を重ねた。
「あ、謝りたいんです、リリアンナお義姉様に!」
言って、ランディリックの顔色を窺ったけれど、表情がいまいち読めない。それで、ダフネはさらに必死になって言い募った。
「私たち、ライオール様を介してまた姉妹みたいになるのでしょう? わだかまりは消しておきたいのです!」
「ダフネ嬢!」
さすがにまずいと思ったのかもしれない。何も言わずにダフネを見下ろすランディリックを制するように、今までだんまりを決め込んでいたウィリアムが割って入った。
だがランディリックはそんな友を押し退けると、ダフネのすぐ横へ立った。
そうして少し身体を屈めると、ダフネの耳元で、ダフネにだけ聞こえる声音で囁く。
「ウィルのペンを使ったお前の愚行――、私がどこまで知っているか、知りたいか?」
「――っ!?」
その囁きは、脅しでも忠告でもなかった。
ただ事実を、確かめるための問いだった。
ダフネは、なにも答えられなかった。
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