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24.デビュタントの夜
平常心でいられる理由
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両親の視線の先に、自分と同じようにウールウォード伯爵令嬢の姿を認めたアレクトは内心でほくそ笑んだ。
オルディス王は、マーロケリー国を目の敵にしている。
ウールウォード伯爵令嬢が、イスグラン帝国民の血を引いていると知っていても尚、母方の血があそこまで色濃く出てしまっていては、目障りに思えて仕方がないのだろう。
国王であるがゆえに滅多なことで何も罪を犯していない者を裁くことはできないが、ウールウォード家が王都エスパハレに邸宅を構えていることも知っているだろうから、どうにかして彼女を排したいと思っているはずだ。
吐息交じりにウールウォード伯爵令嬢を見守る銀髪の男――ニンルシーラ辺境伯ランディリック・グラハム・ライオールへ視線を投げていることからも、〝あの男さえいなければ〟――。そう考えているのだと、アレクトには容易に想像がついて、全てが自分の掌の上で踊っているように感じられた。
***
一方で、同じ光景を、まったく異なる思いで見守っている者がいた。
(リリー)
ランディリックは、あくまでもリリアンナの付添人として定められた距離を取って、踊る二人の様子を静かに見守っている。
だが、胸の奥に、渦巻くざらつきがどうしても消化しきれない。
ぐっと手指を握りしめることで何とか体面を保っているけれど、本当は今すぐにでも二人の間に割って入って、リリアンナを連れ帰りたい。
それを踏みとどまらせているのは、一見セレンに身をゆだねているように見えるリリアンナが、本当の意味では彼に心を開ききっていないと、分かっているからだ。
詳しいことを話したわけではない。
それでも、聡いリリアンナのことだ。
勝手にダフネとセレンの関係を勘違いしてくれているのだろう。
その想いが、セレンに向けられるリリアンナのどこか距離感のある態度に出ている。
それが、ランディリックに何とか冷静さを保たせていた。
(……リリー、本当はセレンと踊りたくないんだろう?)
救いを求めるように時折一瞬だけ自分へ投げかけらえるリリアンナからの視線に、気付かないランディリックではない。
その認識が、ランディリックの胸に、ほんのわずかな安堵をもたらす。
リリアンナは、自分を頼ってくれている――。
彼女の心が、簡単に他へ移るものではないと分かるから、ランディリックは平常心でいられた。
***
セレンは自分よりかなり小柄なリリアンナの歩幅に合わせるように、ゆっくりとリリアンナを導いた。
その動きは、貴族として、というより皇太子として身に染みついたものだった。
(――やっぱり……セレン様は誠実な方に思える……)
そう感じながらも、リリアンナの胸の奥は晴れない。
オルディス王は、マーロケリー国を目の敵にしている。
ウールウォード伯爵令嬢が、イスグラン帝国民の血を引いていると知っていても尚、母方の血があそこまで色濃く出てしまっていては、目障りに思えて仕方がないのだろう。
国王であるがゆえに滅多なことで何も罪を犯していない者を裁くことはできないが、ウールウォード家が王都エスパハレに邸宅を構えていることも知っているだろうから、どうにかして彼女を排したいと思っているはずだ。
吐息交じりにウールウォード伯爵令嬢を見守る銀髪の男――ニンルシーラ辺境伯ランディリック・グラハム・ライオールへ視線を投げていることからも、〝あの男さえいなければ〟――。そう考えているのだと、アレクトには容易に想像がついて、全てが自分の掌の上で踊っているように感じられた。
***
一方で、同じ光景を、まったく異なる思いで見守っている者がいた。
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ランディリックは、あくまでもリリアンナの付添人として定められた距離を取って、踊る二人の様子を静かに見守っている。
だが、胸の奥に、渦巻くざらつきがどうしても消化しきれない。
ぐっと手指を握りしめることで何とか体面を保っているけれど、本当は今すぐにでも二人の間に割って入って、リリアンナを連れ帰りたい。
それを踏みとどまらせているのは、一見セレンに身をゆだねているように見えるリリアンナが、本当の意味では彼に心を開ききっていないと、分かっているからだ。
詳しいことを話したわけではない。
それでも、聡いリリアンナのことだ。
勝手にダフネとセレンの関係を勘違いしてくれているのだろう。
その想いが、セレンに向けられるリリアンナのどこか距離感のある態度に出ている。
それが、ランディリックに何とか冷静さを保たせていた。
(……リリー、本当はセレンと踊りたくないんだろう?)
救いを求めるように時折一瞬だけ自分へ投げかけらえるリリアンナからの視線に、気付かないランディリックではない。
その認識が、ランディリックの胸に、ほんのわずかな安堵をもたらす。
リリアンナは、自分を頼ってくれている――。
彼女の心が、簡単に他へ移るものではないと分かるから、ランディリックは平常心でいられた。
***
セレンは自分よりかなり小柄なリリアンナの歩幅に合わせるように、ゆっくりとリリアンナを導いた。
その動きは、貴族として、というより皇太子として身に染みついたものだった。
(――やっぱり……セレン様は誠実な方に思える……)
そう感じながらも、リリアンナの胸の奥は晴れない。
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