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24.デビュタントの夜
やっぱりおかしい
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柔らかな笑みを向けられるたび、ダフネの姿が脳裏をよぎり、視線を合わせることを躊躇ってしまう。
(こんな誠実な方が何故、恋人を裏切るような真似を平気でなさってるの?)
それはリリアンナの勝手な思い込みかもしれない。
でも――。
今まで得た情報を精査するならば、セレンはダフネと関係を持っていることになる。
なのに、今こうして自分と触れ合っているセレンからは不誠実なことをする人という感じが全くしなかった。
そのギャップがリリアンナを戸惑わせる。
「リリアンナ嬢、もしかして……緊張なさっておられますか?」
セレンの問いかけに、リリアンナは一瞬だけ言葉に詰まった。
「……少しだけ」
正直な答えだった。
初めての舞踏会、初めての正式なダンス。
それだけでなく、頭の中の思考もぐちゃぐちゃなうえ、この場に満ちる無数の思惑が、彼女の心を落ち着かなくさせていた。
家庭教師のクラリーチェや、ランディリックに教え込まれた通りのステップを踏みながら、リリアンナは絶えずひな壇の上から注がれる視線の存在を感じ取っていた。
一方は何やら思惑を感じさせる雰囲気があり、また他方はリリアンナに対する嫌悪感のようなものをにじませているように感じる。
だけどそれらが何を意味するのかまでは、リリアンナには分からなかった。
ただ、彼女自身の意思とは無関係なところで、何かが動いているように感じられて……ひどく怖いと思った。
***
セレンは、リリアンナの歩調がわずかに乱れたのを見逃さなかった。
だが、それを指摘することも、理由を問いただすこともしない。
ただ、彼女が安心して動けるだけの距離を保ち、音楽に身を委ねるように導く。
その配慮は、押しつけがましさを一切感じさせないものだった。
近付き過ぎず、離れ過ぎず――。
リリアンナの呼吸に合わせるような、静かなリード。
(……やっぱり、おかしい)
心の中で、リリアンナはそう思ってしまう。
誠実で、丁寧で、礼を失さない。
少なくとも、今この場にいるセレンからは、誰かを裏切るような軽薄さは微塵も感じられなかった。
だからこそ、胸の奥に小さな棘のような違和感が残る。
(本当に、私が聞いた話は、……そうしてそこから導き出した推論は……間違っていないのかな……?)
ステップを踏み替えた瞬間、セレンがほんのわずかに手の位置を変えた。
触れ合う指先は相変わらず最低限で、そこに私的な感情を忍ばせる余地はない。
「……無理はしないでくださいね、リリアンナ嬢」
低く落ち着いた声が、耳元ではなく、あくまで社交の距離から届けられる。
(こんな誠実な方が何故、恋人を裏切るような真似を平気でなさってるの?)
それはリリアンナの勝手な思い込みかもしれない。
でも――。
今まで得た情報を精査するならば、セレンはダフネと関係を持っていることになる。
なのに、今こうして自分と触れ合っているセレンからは不誠実なことをする人という感じが全くしなかった。
そのギャップがリリアンナを戸惑わせる。
「リリアンナ嬢、もしかして……緊張なさっておられますか?」
セレンの問いかけに、リリアンナは一瞬だけ言葉に詰まった。
「……少しだけ」
正直な答えだった。
初めての舞踏会、初めての正式なダンス。
それだけでなく、頭の中の思考もぐちゃぐちゃなうえ、この場に満ちる無数の思惑が、彼女の心を落ち着かなくさせていた。
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一方は何やら思惑を感じさせる雰囲気があり、また他方はリリアンナに対する嫌悪感のようなものをにじませているように感じる。
だけどそれらが何を意味するのかまでは、リリアンナには分からなかった。
ただ、彼女自身の意思とは無関係なところで、何かが動いているように感じられて……ひどく怖いと思った。
***
セレンは、リリアンナの歩調がわずかに乱れたのを見逃さなかった。
だが、それを指摘することも、理由を問いただすこともしない。
ただ、彼女が安心して動けるだけの距離を保ち、音楽に身を委ねるように導く。
その配慮は、押しつけがましさを一切感じさせないものだった。
近付き過ぎず、離れ過ぎず――。
リリアンナの呼吸に合わせるような、静かなリード。
(……やっぱり、おかしい)
心の中で、リリアンナはそう思ってしまう。
誠実で、丁寧で、礼を失さない。
少なくとも、今この場にいるセレンからは、誰かを裏切るような軽薄さは微塵も感じられなかった。
だからこそ、胸の奥に小さな棘のような違和感が残る。
(本当に、私が聞いた話は、……そうしてそこから導き出した推論は……間違っていないのかな……?)
ステップを踏み替えた瞬間、セレンがほんのわずかに手の位置を変えた。
触れ合う指先は相変わらず最低限で、そこに私的な感情を忍ばせる余地はない。
「……無理はしないでくださいね、リリアンナ嬢」
低く落ち着いた声が、耳元ではなく、あくまで社交の距離から届けられる。
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