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11.両親からの連絡
行かないで、と言えなくて
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「あの、でも……お母さん」
思わず眉根を寄せて不安を顔に出してしまった結葉に、
「あ、もちろん、ゆいちゃんに赤ちゃんが出来たらお母さん、お父さんを置いてすぐにでもすっ飛んで帰ってくるわよ?」
と間髪入れずに言われて。
「ほら。偉央さんや彼のご両親もいらっしゃるとはいえ、やっぱり子供を産むとなるとゆいちゃんも不安だろうから。そこは遠慮なくお母さんのこと、呼び戻してくれて構わないんだからね?」
顔を覗き込むようにして手を力強くギュッと握られてしまった。
「あっ! ねぇ、もしかして今日急に家に顔見せに来てくれたのって……」
結葉は美鳥の期待に満ちた目を見て、慌てて顔の前で手を振る。
「ごっ、ごめんなさい、お母さん。そう言うんじゃないの」
顔には出さないように努力はしてくれたみたいだけど、そんな結葉を見て、美鳥が明らかにがっかりしたのが分かって。
今日妊娠の報告とかそういうことでここを訪れられていたなら、どんなにか良かったのに、と思ってしまった結葉だ。
実際は「一人でいたら病んでしまいそうな気がして来ちゃったの」なんて今の美鳥の話を聞いたら、さすがに口が裂けても言えないと思った。
「――た、ただ、ちょっと暇だったから。お母さんと話したくなっちゃって。本当にそれだけ……」
結葉はそこまで言ってから、「でも、タイミング良過ぎて虫の知らせを感じたみたいだね」って何の気なしに付け加えて、そう言えば美鳥も電話でそんなことを言っていたっけ、とぼんやり思った。
美鳥がお茶請けに、と出してくれたクッキーを食べたら、ほろ苦いビターチョコの味がして。
結葉は今目の前にあるお菓子や紅茶は、母のお友達から美鳥への、餞別の品々なんだろうなとふと思って……。
美鳥が結葉になかなかこの話を切り出せずに躊躇していた期間は一体どのぐらいだったんだろう、と考えてしまう。
少なくとも美鳥が、自分の友人らには先に言えた話が、たった一人の娘である結葉には切り出せなかったというのは確かで。
結葉は、そんな母に向かって「『行かないで欲しい』だなんて言えないよね」と胸の奥で何かがつっかえたような息苦しさを感じてしまう。
そう思ったら、自分はこれから誰にも頼らず夫の顔色を窺いながら生きていくしかないんだと現実を突きつけられた気がして……それがすごくすごく不安に思えて。
(偉央さんに、私が抱えているこういう気持ちを吐露したら、どうなっちゃうんだろう? 少しは現状が打開出来たりするのかな?)
紅茶の水面に映ってゆらゆら揺れる、泣きそうな顔の自分を見つめながら、胃がキューッと痛くなってしまうぐらい怖くなった。
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「あ、もちろん、ゆいちゃんに赤ちゃんが出来たらお母さん、お父さんを置いてすぐにでもすっ飛んで帰ってくるわよ?」
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顔を覗き込むようにして手を力強くギュッと握られてしまった。
「あっ! ねぇ、もしかして今日急に家に顔見せに来てくれたのって……」
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「ごっ、ごめんなさい、お母さん。そう言うんじゃないの」
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