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11.両親からの連絡
ついて行くことにしたの?
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「ここにゆいちゃんと二人で座ってゆっくりお茶を飲むの、久しぶりね」
考えてみたら結葉が嫁いでからは、なぜかリビングのテーブルで差し向かいに座ってお茶をすることばかりになっていた。
「そのほうがゆいちゃんの顔が見えるから……。毎日会えるわけじゃないしって思ったらお母さんついあっちにカップ置いちゃってたのよね~」
結葉のすぐ横で寂しそうにフフッと笑う美鳥の声が聞こえて、結葉はますます不安になった。
(じゃあ、今日は何でこっちを選んだの? 私の顔が見えない方がいい話をするつもりなのかな?)
そう思ってしまった。
「えっと……ごめんね。今日は何となくゆいちゃんのお顔を見て話せる気がしなくて……お母さん無意識にこっちに逃げちゃった……」
ポツンと、力なく美鳥からそんなことを言われて、結葉は思わず母の方を身体ごと向いて。
「ねぇ、お母さん、それって……どういう意味?」
そう問い掛けずにはいられなかった。
美鳥はティーカップを口元に上げて中身をひとくち口に含むと、ほぅっと吐息を落とす。
「――あのね、ゆいちゃん。お父さんがね、来月末からニューヨークの支社に異動することになったの」
別にそれは左遷とかそういうのものではなく、寧ろ栄転に近いのだと美鳥は言って。
一人娘の結葉が嫁いだことで、憂いなく旅立てるだろうと、新部門の立ち上げリーダーとして父・茂雄に白羽の矢が立ったらしい。
「お父さんね、最初は一人で行くって言ってたんだけど……ゆいちゃんも結婚して家を出て行っちゃった今、お母さん一人こんな広い家に残されるのも嫌だなって思っちゃって」
「ついて……行くことにしたの?」
恐る恐る問いかけたら美鳥がコクッとうなずいた。
「ゆいちゃんには偉央さんがいてくださるでしょう? 偉央さん、とっても素敵な旦那様だもの。お母さんもお父さんも偉央さんがゆいちゃんのそばにいてくれるから安心してここを離れられるねって話したの」
ニッコリ笑ってそう言われて。
結葉は、まさかその偉央との結婚生活に不安を感じているだなんて、間違っても言えないし、両親にそれを悟られてはいけないと思ってしまった。
そもそも、傍目に見れば、偉央は非の打ちどころのない素敵な旦那様なのだ。
そんな偉央が、妻を言葉巧みに押さえつけて家の中に閉じ込め、軟禁しているだなんて、きっと誰も思いはしない。
いや、よもや偉央と結葉の関係について何かおかしくない?と勘付いた相手がいたとしても、気が付けば――先の琳奈のときみたいに――自然と結葉のそばから排除されてしまうのが常になっていたから。
偉央はきっと、未来永劫両親たちからは「いい夫」だと持て囃されるんだろうなと結葉は思って。
そんな息が詰まるような日々の中にあって、それでも結葉は今みたいに両親と過ごせる時間だけが唯一の心の拠り所だと感じていた。
なのに――。
考えてみたら結葉が嫁いでからは、なぜかリビングのテーブルで差し向かいに座ってお茶をすることばかりになっていた。
「そのほうがゆいちゃんの顔が見えるから……。毎日会えるわけじゃないしって思ったらお母さんついあっちにカップ置いちゃってたのよね~」
結葉のすぐ横で寂しそうにフフッと笑う美鳥の声が聞こえて、結葉はますます不安になった。
(じゃあ、今日は何でこっちを選んだの? 私の顔が見えない方がいい話をするつもりなのかな?)
そう思ってしまった。
「えっと……ごめんね。今日は何となくゆいちゃんのお顔を見て話せる気がしなくて……お母さん無意識にこっちに逃げちゃった……」
ポツンと、力なく美鳥からそんなことを言われて、結葉は思わず母の方を身体ごと向いて。
「ねぇ、お母さん、それって……どういう意味?」
そう問い掛けずにはいられなかった。
美鳥はティーカップを口元に上げて中身をひとくち口に含むと、ほぅっと吐息を落とす。
「――あのね、ゆいちゃん。お父さんがね、来月末からニューヨークの支社に異動することになったの」
別にそれは左遷とかそういうのものではなく、寧ろ栄転に近いのだと美鳥は言って。
一人娘の結葉が嫁いだことで、憂いなく旅立てるだろうと、新部門の立ち上げリーダーとして父・茂雄に白羽の矢が立ったらしい。
「お父さんね、最初は一人で行くって言ってたんだけど……ゆいちゃんも結婚して家を出て行っちゃった今、お母さん一人こんな広い家に残されるのも嫌だなって思っちゃって」
「ついて……行くことにしたの?」
恐る恐る問いかけたら美鳥がコクッとうなずいた。
「ゆいちゃんには偉央さんがいてくださるでしょう? 偉央さん、とっても素敵な旦那様だもの。お母さんもお父さんも偉央さんがゆいちゃんのそばにいてくれるから安心してここを離れられるねって話したの」
ニッコリ笑ってそう言われて。
結葉は、まさかその偉央との結婚生活に不安を感じているだなんて、間違っても言えないし、両親にそれを悟られてはいけないと思ってしまった。
そもそも、傍目に見れば、偉央は非の打ちどころのない素敵な旦那様なのだ。
そんな偉央が、妻を言葉巧みに押さえつけて家の中に閉じ込め、軟禁しているだなんて、きっと誰も思いはしない。
いや、よもや偉央と結葉の関係について何かおかしくない?と勘付いた相手がいたとしても、気が付けば――先の琳奈のときみたいに――自然と結葉のそばから排除されてしまうのが常になっていたから。
偉央はきっと、未来永劫両親たちからは「いい夫」だと持て囃されるんだろうなと結葉は思って。
そんな息が詰まるような日々の中にあって、それでも結葉は今みたいに両親と過ごせる時間だけが唯一の心の拠り所だと感じていた。
なのに――。
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