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12.家はどうするの?
予期せぬ訪問者
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***
「ごめんね、お母さん、お父さん。私たち夫婦がここに住めたら良かったんだけど……」
自分たちが移り住むことは出来ない、と初めて伝えた瞬間はひどく残念がらせてしまった母・美鳥だったけれど、結葉の説明ももっともだと思ったらしい。
「通勤っていうのは意外に労力を削られるからな。あの立地じゃ、偉央くんのことを考えたらおいそれとは動けんの、父さんも分かるよ」
何十年もずっと勤め人をしてきた茂雄の言葉も後押しして、思ったほどごねられることもなく実家に住めないことを了承してもらえたことに、結葉はホッと胸を撫で下ろした。
今日は茂雄も一緒だから、独身時代毎日夕飯のたびにそうしていたように、ダイニングテーブルに家族水入らずで座って、美鳥が淹れてくれたコーヒーを飲みながら談笑している。
平日なので、偉央は昼休みに結葉をここまで送り届けてくれたあと、いつも通り夕方に迎えに来る旨を告げて病院に戻って行った。
ただ、いつもと違うのは、診察後に一件、新しく搬入することになった医療器具のことで業者が来ることになっていて、いつもより迎えが遅くなるということだった。
「ついでだから夕飯もご両親と食べてくるといいよ」
でも、と言い募ろうとした結葉に、偉央が「これからそういう事、おいそれとは出来なくなるんだから、――ね?」と言ってくれて。
偉央は「自分の夕飯のことも、気にしなくていいよ」とも言ってくれたけれど、さすがにそれは出来なかった結葉だ。
午前中のうちに偉央のためだけにいくつかのおかずをこしらえて、いま、実家に来ている。
(マンションに戻ってくる時は偉央さんと一緒だし、彼がお風呂に入っている間に最後の仕上げをして温かい料理を出せるようにしておこう)
そう思って、味が染み込むように最後までしっかり仕上げた煮物などとは別に、下処理までを済ませた鶏もも肉が、火を通さないままに冷蔵庫に入れてある。
***
「――で、この家はどうすることになったの?」
ふとそのことを聞いていなかったと思い出した結葉が、コーヒーカップをソーサーに戻しながらそう問いかけたと同時――。
ピンポーン……とチャイムが鳴って、美鳥がいそいそと立ち上がる。
宅配か何かが来たのかな?とそんな美鳥の後ろ姿を見送った結葉だったけれど――。
「公宣さん、お忙しいのにお呼び立てしてしまってごめんなさいね」
という声が玄関先から聞こえてきて、結葉はドキッとしてしまう。
公宣、といえば想と芹の父親の名前だったからだ。
「呼び立てるも何も。お隣じゃないですか」
廊下を歩く足音とともに、そんな声が聞こえて来て、結葉の心臓はドキドキと忙しなく鼓動を刻む。
別に想が来たわけではないのに、偉央に無断で両親以外の人間と会うことを、とても後ろめたく感じてしまった結葉だ。
偉央がおかしくなってしまったきっかけだって、偶然同級生の男の子たちと出会って合流してしまったことだったのを思い出す。
(でも……公宣さんは既婚者だし……うちの両親と同年代だから……きっと大丈夫、だよ、ね?)
結葉はそう思って、必死に気持ちを落ち着けようとした。
なのに――。
「それにこちらこそ勝手に倅まで連れて来てしまって」
そこでガチャリとリビングのドアが開いて――。
「想……ちゃんっ」
美鳥の後ろ、公宣より頭ひとつ分背が高いからすぐに見えてしまった相手に、結葉は思わず席を立ってしまっていた。
「ごめんね、お母さん、お父さん。私たち夫婦がここに住めたら良かったんだけど……」
自分たちが移り住むことは出来ない、と初めて伝えた瞬間はひどく残念がらせてしまった母・美鳥だったけれど、結葉の説明ももっともだと思ったらしい。
「通勤っていうのは意外に労力を削られるからな。あの立地じゃ、偉央くんのことを考えたらおいそれとは動けんの、父さんも分かるよ」
何十年もずっと勤め人をしてきた茂雄の言葉も後押しして、思ったほどごねられることもなく実家に住めないことを了承してもらえたことに、結葉はホッと胸を撫で下ろした。
今日は茂雄も一緒だから、独身時代毎日夕飯のたびにそうしていたように、ダイニングテーブルに家族水入らずで座って、美鳥が淹れてくれたコーヒーを飲みながら談笑している。
平日なので、偉央は昼休みに結葉をここまで送り届けてくれたあと、いつも通り夕方に迎えに来る旨を告げて病院に戻って行った。
ただ、いつもと違うのは、診察後に一件、新しく搬入することになった医療器具のことで業者が来ることになっていて、いつもより迎えが遅くなるということだった。
「ついでだから夕飯もご両親と食べてくるといいよ」
でも、と言い募ろうとした結葉に、偉央が「これからそういう事、おいそれとは出来なくなるんだから、――ね?」と言ってくれて。
偉央は「自分の夕飯のことも、気にしなくていいよ」とも言ってくれたけれど、さすがにそれは出来なかった結葉だ。
午前中のうちに偉央のためだけにいくつかのおかずをこしらえて、いま、実家に来ている。
(マンションに戻ってくる時は偉央さんと一緒だし、彼がお風呂に入っている間に最後の仕上げをして温かい料理を出せるようにしておこう)
そう思って、味が染み込むように最後までしっかり仕上げた煮物などとは別に、下処理までを済ませた鶏もも肉が、火を通さないままに冷蔵庫に入れてある。
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「――で、この家はどうすることになったの?」
ふとそのことを聞いていなかったと思い出した結葉が、コーヒーカップをソーサーに戻しながらそう問いかけたと同時――。
ピンポーン……とチャイムが鳴って、美鳥がいそいそと立ち上がる。
宅配か何かが来たのかな?とそんな美鳥の後ろ姿を見送った結葉だったけれど――。
「公宣さん、お忙しいのにお呼び立てしてしまってごめんなさいね」
という声が玄関先から聞こえてきて、結葉はドキッとしてしまう。
公宣、といえば想と芹の父親の名前だったからだ。
「呼び立てるも何も。お隣じゃないですか」
廊下を歩く足音とともに、そんな声が聞こえて来て、結葉の心臓はドキドキと忙しなく鼓動を刻む。
別に想が来たわけではないのに、偉央に無断で両親以外の人間と会うことを、とても後ろめたく感じてしまった結葉だ。
偉央がおかしくなってしまったきっかけだって、偶然同級生の男の子たちと出会って合流してしまったことだったのを思い出す。
(でも……公宣さんは既婚者だし……うちの両親と同年代だから……きっと大丈夫、だよ、ね?)
結葉はそう思って、必死に気持ちを落ち着けようとした。
なのに――。
「それにこちらこそ勝手に倅まで連れて来てしまって」
そこでガチャリとリビングのドアが開いて――。
「想……ちゃんっ」
美鳥の後ろ、公宣より頭ひとつ分背が高いからすぐに見えてしまった相手に、結葉は思わず席を立ってしまっていた。
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