112 / 228
18.臨界点
すれ違う思い
しおりを挟む
偉央のことは怖いし、酷いことも沢山されてきたけれど、確かに自分はこの人に愛されているんだ、と胸の奥がズキッと疼いた結葉だ。
そうしてその痛みがときめきとは違うことに気が付いて切なくなる。
(私は偉央さんのこと――)
嫌いじゃないし、昔のように愛したいと思っている。
だけど――。
そう思う時点で、もう彼のことを〝愛せていない〟自分に気付かされてハッとした。
偉央の気持ちに報いることが出来ない自分が凄くダメな存在に思えて、思わず眉根を寄せて偉央を見つめてから、「あ、だからなんだ」と直感した結葉だ。
(偉央さんは、私の気持ちが自分から離れつつあることに気が付いていらっしゃる。……だからこそ、こんなにも私のことを力で支配しようとしておられるのね)
と。
きっと結葉が偉央を不安にさせないくらい彼のことを愛せたなら、今の関係を変えられる気がする。
でも――。
偉央が今みたいに自分を支配するのをやめてくれないと無理だ、とも思って。
それは相反する事柄だから、擦り合わせなんて出来っこないとも痛感してしまった。
***
結局結葉は偉央に促されるまま、スパークリングワインも飲んでしまって。
食事が終わる頃にはかなり酔いが回っていた。
かろうじて倒れずに済んでいたのは偉央に対する緊張感と、外食の場という雰囲気の相乗効果だったのだろう。
「結葉、大丈夫?」
食事を終えて席を立つ時、フラッとよろめいた結葉の腕を掴んで偉央が尋ねてきた。
「足が……。偉央、さ……、ごめ、なさ……」
〝足に力が入らなくて歩けそうにありません、ごめんなさい〟と言いたいのにうまく言えなくて、頭に霞がかかったようにぼんやりしている。
「謝らなくてもいいよ? 飲ませたのは僕だから。遠慮せず僕に掴まって?」
偉央に対する恐怖心がお酒のお陰で薄れていた結葉は、言われるままに偉央に身をゆだねて――。
「こんな風に結葉が甘えてくれるの、久しぶりだね」
耳元で偉央に小さな声でしみじみとつぶやかれた。
結葉は確かにそうかも、とふわふわとした意識の中で思って。
そのまま車までの道のりを偉央とともに歩く。
その道すがら、鼻先に冷たいものが落ちて、結葉は空から雪がちらちらと舞い落ちているのに気が付いた。
この降り方なら積もったりはしないだろうけれど、グッと冷え込んでいるのを感じる。
ブルッと身体を震わせながらも、偉央と触れ合った箇所の温もりを痛感して。
偉央が帰ってきたら伝えようと思っていたのに、ずっと言いそびれていたことを思い出した結葉だ。
そうしてその痛みがときめきとは違うことに気が付いて切なくなる。
(私は偉央さんのこと――)
嫌いじゃないし、昔のように愛したいと思っている。
だけど――。
そう思う時点で、もう彼のことを〝愛せていない〟自分に気付かされてハッとした。
偉央の気持ちに報いることが出来ない自分が凄くダメな存在に思えて、思わず眉根を寄せて偉央を見つめてから、「あ、だからなんだ」と直感した結葉だ。
(偉央さんは、私の気持ちが自分から離れつつあることに気が付いていらっしゃる。……だからこそ、こんなにも私のことを力で支配しようとしておられるのね)
と。
きっと結葉が偉央を不安にさせないくらい彼のことを愛せたなら、今の関係を変えられる気がする。
でも――。
偉央が今みたいに自分を支配するのをやめてくれないと無理だ、とも思って。
それは相反する事柄だから、擦り合わせなんて出来っこないとも痛感してしまった。
***
結局結葉は偉央に促されるまま、スパークリングワインも飲んでしまって。
食事が終わる頃にはかなり酔いが回っていた。
かろうじて倒れずに済んでいたのは偉央に対する緊張感と、外食の場という雰囲気の相乗効果だったのだろう。
「結葉、大丈夫?」
食事を終えて席を立つ時、フラッとよろめいた結葉の腕を掴んで偉央が尋ねてきた。
「足が……。偉央、さ……、ごめ、なさ……」
〝足に力が入らなくて歩けそうにありません、ごめんなさい〟と言いたいのにうまく言えなくて、頭に霞がかかったようにぼんやりしている。
「謝らなくてもいいよ? 飲ませたのは僕だから。遠慮せず僕に掴まって?」
偉央に対する恐怖心がお酒のお陰で薄れていた結葉は、言われるままに偉央に身をゆだねて――。
「こんな風に結葉が甘えてくれるの、久しぶりだね」
耳元で偉央に小さな声でしみじみとつぶやかれた。
結葉は確かにそうかも、とふわふわとした意識の中で思って。
そのまま車までの道のりを偉央とともに歩く。
その道すがら、鼻先に冷たいものが落ちて、結葉は空から雪がちらちらと舞い落ちているのに気が付いた。
この降り方なら積もったりはしないだろうけれど、グッと冷え込んでいるのを感じる。
ブルッと身体を震わせながらも、偉央と触れ合った箇所の温もりを痛感して。
偉央が帰ってきたら伝えようと思っていたのに、ずっと言いそびれていたことを思い出した結葉だ。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
【完】経理部の女王様が落ちた先には
Bu-cha
恋愛
エブリスタにて恋愛トレンドランキング4位
高級なスーツ、高級な腕時計を身に付け
ピンヒールの音を響かせ歩く
“経理部の女王様”
そんな女王様が落ちた先にいたのは
虫1匹も殺せないような男だった・・・。
ベリーズカフェ総合ランキング4位
2022年上半期ベリーズカフェ総合ランキング53位
2022年下半期ベリーズカフェ総合ランキング44位
関連物語
『ソレは、脱がさないで』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高4位
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高2位
『大きなアナタと小さなわたしのちっぽけなプライド』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位
『初めてのベッドの上で珈琲を』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位
『“こだま”の森~FUJIメゾン・ビビ』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 17位
私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。
伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。
物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。
私を抱かないと新曲ができないって本当ですか? 〜イケメン作曲家との契約の恋人生活は甘い〜
入海月子
恋愛
「君といると曲のアイディアが湧くんだ」
昔から大ファンで、好きで好きでたまらない
憧れのミュージシャン藤崎東吾。
その人が作曲するには私が必要だと言う。
「それってほんと?」
藤崎さんの新しい曲、藤崎さんの新しいアルバム。
「私がいればできるの?私を抱いたらできるの?」
絶対後悔するとわかってるのに、正気の沙汰じゃないとわかっているのに、私は頷いてしまった……。
**********************************************
仕事を頑張る希とカリスマミュージシャン藤崎の
体から始まるキュンとくるラブストーリー。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
お前が愛おしい〜カリスマ美容師の純愛
ラヴ KAZU
恋愛
涼風 凛は過去の恋愛にトラウマがあり、一歩踏み出す勇気が無い。
社長や御曹司とは、二度と恋はしないと決めている。
玉森 廉は玉森コーポレーション御曹司で親の決めたフィアンセがいるが、自分の結婚相手は自分で決めると反抗している。
そんな二人が恋に落ちる。
廉は社長である事を凛に内緒でアタックを開始するが、その事がバレて、凛は距離を置こうとするが・・・
あれから十年、凛は最悪の過去をいまだに引き摺って恋愛に臆病になっている。
そんな凛の前に現れたのが、カリスマ美容師大和颯、凛はある日スマホを拾った、そのスマホの持ち主が颯だった。
二人は惹かれあい恋に落ちた。しかし凛は素直になれない、そんなある日颯からドライブに誘われる、「紹介したい人がいるんだ」そして車から降りてきたのは大和 祐、颯の息子だった。
祐は颯の本当の息子ではない、そして颯にも秘密があった。
看取り人
織部
ライト文芸
宗介は、末期癌患者が最後を迎える場所、ホスピスのベッドに横たわり、いずれ訪れるであろう最後の時が来るのを待っていた。
後悔はない。そして訪れる人もいない。そんな中、彼が唯一の心残りは心の底で今も疼く若かりし頃の思い出、そして最愛の人のこと。
そんな時、彼の元に1人の少年が訪れる。
「僕は、看取り人です。貴方と最後の時を過ごすために参りました」
これは看取り人と宗介の最後の数時間の語らいの話し
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる