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22.結葉の告白
結葉のことを熟知した幼なじみだから
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「お前んトコにあったような専用のでっかいアクリルケースはさすがに無理だけどさ……。ホームセンターで衣装ケース買って帰ってちぃーと細工したら結構いい感じのが作れると思うぞ?」
言って、「行くか?」と結葉に問いかけてくる。
その申し出にうなずきかけて。
ハッとしたように揺れる瞳で想を見上げると、結葉は恥ずかしそうにつぶやいた。
「……想ちゃん、ごめんなさい。私、お金、持ってない……」
***
実際結葉は、雪日を連れ出すだけで精一杯だったのだ。
いつも持ち歩いていた財布や化粧ポーチなどが入ったバッグも、偉央に隠されてしまっていて見当たらなかったから。
とにかく逃げることだけを考えて、無一文で飛び出してきてしまった。
「バーカ。そんなん気にすることねぇよ。金なら俺が持ってる」
言って、想がニッと笑ってくれたけれど、結葉はソワソワと落ち着かない。
「……ごめんね、想ちゃん。私、バイトとかしてちゃんと返すから」
眉根を寄せて想を見上げたら、一瞬だけ押し黙った想だったけれど。
そこは結葉の性格を熟知した幼なじみ。「返さなくていい」とか言わずに、「ん、それで良いよ」と再度頭を撫でてくれた。
それが、結葉にはとても有り難かったのだ。
マンションを出るとき、結葉が手に出来たのは雪日入りのキャリーと、封の開いた彼のご飯。
それから首輪がわりに偉央から持たされていたGPS機能付のキッズ携帯と、身体を隠すために使ったバスタオルのみ。
キッズ携帯は、想の車に乗り込む直前にバスタオルに包んでマンションを出てすぐの植え込みのそばへ隠すように置いてきた。
コンシェルジュルームに置き去りにすることも考えた結葉だったけれど、それでは親切にしてくれた斉藤と白木に迷惑がかりそうで申し訳がないと思ったから。
(でも……結局私があのマンションを逃げ出した時点で、彼女たちが無関係ではいられないこと、明白だよね……)
あのマンションを出入りする人間が、正面入り口にいるコンシェルジュらの視線をかいくぐることは構造上不可能なのだから。
ましてや結葉がキッズ携帯を置き去りにしたのはエントランスを出てすぐの辺り。
偉央が彼女たちの関与を疑わないわけがない。
でも――。
言って、「行くか?」と結葉に問いかけてくる。
その申し出にうなずきかけて。
ハッとしたように揺れる瞳で想を見上げると、結葉は恥ずかしそうにつぶやいた。
「……想ちゃん、ごめんなさい。私、お金、持ってない……」
***
実際結葉は、雪日を連れ出すだけで精一杯だったのだ。
いつも持ち歩いていた財布や化粧ポーチなどが入ったバッグも、偉央に隠されてしまっていて見当たらなかったから。
とにかく逃げることだけを考えて、無一文で飛び出してきてしまった。
「バーカ。そんなん気にすることねぇよ。金なら俺が持ってる」
言って、想がニッと笑ってくれたけれど、結葉はソワソワと落ち着かない。
「……ごめんね、想ちゃん。私、バイトとかしてちゃんと返すから」
眉根を寄せて想を見上げたら、一瞬だけ押し黙った想だったけれど。
そこは結葉の性格を熟知した幼なじみ。「返さなくていい」とか言わずに、「ん、それで良いよ」と再度頭を撫でてくれた。
それが、結葉にはとても有り難かったのだ。
マンションを出るとき、結葉が手に出来たのは雪日入りのキャリーと、封の開いた彼のご飯。
それから首輪がわりに偉央から持たされていたGPS機能付のキッズ携帯と、身体を隠すために使ったバスタオルのみ。
キッズ携帯は、想の車に乗り込む直前にバスタオルに包んでマンションを出てすぐの植え込みのそばへ隠すように置いてきた。
コンシェルジュルームに置き去りにすることも考えた結葉だったけれど、それでは親切にしてくれた斉藤と白木に迷惑がかりそうで申し訳がないと思ったから。
(でも……結局私があのマンションを逃げ出した時点で、彼女たちが無関係ではいられないこと、明白だよね……)
あのマンションを出入りする人間が、正面入り口にいるコンシェルジュらの視線をかいくぐることは構造上不可能なのだから。
ましてや結葉がキッズ携帯を置き去りにしたのはエントランスを出てすぐの辺り。
偉央が彼女たちの関与を疑わないわけがない。
でも――。
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