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29.公宣からの提案
うちのほうだったらどうだろう?
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「俺が……あのアパートを出たらいいのか?」
憮然とした口調で想が公宣に問うて。
結葉は「想ちゃんっ!」とそんな想を心配そうに見つめた。
「想。お前は結葉ちゃんを一人ぼっちであのアパートに置いておけるほど薄情な男なのかい?」
だけど公宣に全てを見透かされたような目で見つめられて、想は言葉に詰まってそっぽを向く。
それが出来なかったから今みたいなことになっているのだ。
「じゃあ。親父は結葉に実家にでも行けって言うのかよ」
想が腹立たしげにつぶやいたのを見て、公宣が小さく吐息を落とした。
「それ、お前は結葉ちゃんに言えるの?」
そこで結葉に視線を移した公宣が、「結葉ちゃん、旦那さんに知られてる実家に一人で住める?」と問いかけてきて。
結葉は頷くべきだと分かっていても、どうしてもそうすることが出来なかった。
「親父っ! 何てこと言うんだよ!」
それを見た想が、思わずと言った感じで立ち上がって父親に抗議するのを、結葉はそっと彼の手に触れて止める。
「すみ、ませ……。いまはまだ………無理……です」
それでも結葉は泣きそうになりながら、か細い声でそう言うのが精一杯だった。
そんな結葉の頭を、公宣が優しく撫でてくる。
その感触が、余りにも想の手に似ていたから。
結葉はハッとして顔を上げて、ソワソワと公宣を見遣った。
やっぱり想と公宣は親子なんだと痛感させられた結葉だ。
想がそんな公宣の手を腹立たしげに掴んで結葉の頭から引き剥がして。
公宣は苦笑しながら手を引っ込めた。
「ねぇ結葉ちゃん。例えば、なんだけどね? ……それが結葉ちゃんの実家じゃなくて、我が家だったらどうだろう?」
優しい声音で問いかけられた結葉は、「え……?」とつぶやいて、すぐ前に座る公宣を見詰めた。
「それなら……大丈夫だと、思います」
山波家には常に誰かがいてくれる。
そういう状況ならきっと、結葉は恐怖に打ち勝てると思って。
「だったらうちにおいで。幸い部屋はたくさん余ってる」
何でもないことのように公宣が言うから、結葉は瞳を見開いた。
「いい……ん、です、か?」
恐る恐る問いかけたら公宣がニコッと笑って「もちろん。むしろ大歓迎だよ」と言ってくれた。
「ちょっ、親父……だったら俺もっ」
「ん? もしかして想もうちに帰って来たくなった?」
クスッと笑って公宣が息子を見て。
想は決まり悪そうに「お、俺はっ。結葉を守るって決めたからっ! 結葉がそうするってんなら戻るしかねぇだろっ?」と唇を尖らせる。
「もちろん父さんはお前がうちで寝泊まりするのも歓迎するよ。久しぶりに芹と想がひとつ屋根の下とか……母さんが知ったらきっと大喜びだね」
二人のやりとりを見て、結葉はせっかく一人暮らしを楽しんでいるかもしれない想が、自分のせいで不自由を強いられるのではないかと不安になって。
「想ちゃん、いい、の?」
ソワソワと瞳を揺らせながら問いかけた。
「いいも何も……近くにいなきゃいざって時にお前を守ってやれねぇだろ?」
想に言われて、結葉はウルッとしてしまう。
「想ちゃん、ごめ……」
いつもの癖でつい謝りそうになって、今朝想から言われた言葉を思い出した結葉が、「ありがとう」と言い直したら「おう」と頭を撫でられた。
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章の変わり目のため、今日は文字数が少なめです。
すみません!
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憮然とした口調で想が公宣に問うて。
結葉は「想ちゃんっ!」とそんな想を心配そうに見つめた。
「想。お前は結葉ちゃんを一人ぼっちであのアパートに置いておけるほど薄情な男なのかい?」
だけど公宣に全てを見透かされたような目で見つめられて、想は言葉に詰まってそっぽを向く。
それが出来なかったから今みたいなことになっているのだ。
「じゃあ。親父は結葉に実家にでも行けって言うのかよ」
想が腹立たしげにつぶやいたのを見て、公宣が小さく吐息を落とした。
「それ、お前は結葉ちゃんに言えるの?」
そこで結葉に視線を移した公宣が、「結葉ちゃん、旦那さんに知られてる実家に一人で住める?」と問いかけてきて。
結葉は頷くべきだと分かっていても、どうしてもそうすることが出来なかった。
「親父っ! 何てこと言うんだよ!」
それを見た想が、思わずと言った感じで立ち上がって父親に抗議するのを、結葉はそっと彼の手に触れて止める。
「すみ、ませ……。いまはまだ………無理……です」
それでも結葉は泣きそうになりながら、か細い声でそう言うのが精一杯だった。
そんな結葉の頭を、公宣が優しく撫でてくる。
その感触が、余りにも想の手に似ていたから。
結葉はハッとして顔を上げて、ソワソワと公宣を見遣った。
やっぱり想と公宣は親子なんだと痛感させられた結葉だ。
想がそんな公宣の手を腹立たしげに掴んで結葉の頭から引き剥がして。
公宣は苦笑しながら手を引っ込めた。
「ねぇ結葉ちゃん。例えば、なんだけどね? ……それが結葉ちゃんの実家じゃなくて、我が家だったらどうだろう?」
優しい声音で問いかけられた結葉は、「え……?」とつぶやいて、すぐ前に座る公宣を見詰めた。
「それなら……大丈夫だと、思います」
山波家には常に誰かがいてくれる。
そういう状況ならきっと、結葉は恐怖に打ち勝てると思って。
「だったらうちにおいで。幸い部屋はたくさん余ってる」
何でもないことのように公宣が言うから、結葉は瞳を見開いた。
「いい……ん、です、か?」
恐る恐る問いかけたら公宣がニコッと笑って「もちろん。むしろ大歓迎だよ」と言ってくれた。
「ちょっ、親父……だったら俺もっ」
「ん? もしかして想もうちに帰って来たくなった?」
クスッと笑って公宣が息子を見て。
想は決まり悪そうに「お、俺はっ。結葉を守るって決めたからっ! 結葉がそうするってんなら戻るしかねぇだろっ?」と唇を尖らせる。
「もちろん父さんはお前がうちで寝泊まりするのも歓迎するよ。久しぶりに芹と想がひとつ屋根の下とか……母さんが知ったらきっと大喜びだね」
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「想ちゃん、いい、の?」
ソワソワと瞳を揺らせながら問いかけた。
「いいも何も……近くにいなきゃいざって時にお前を守ってやれねぇだろ?」
想に言われて、結葉はウルッとしてしまう。
「想ちゃん、ごめ……」
いつもの癖でつい謝りそうになって、今朝想から言われた言葉を思い出した結葉が、「ありがとう」と言い直したら「おう」と頭を撫でられた。
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章の変わり目のため、今日は文字数が少なめです。
すみません!
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