【完結】【R18】結婚相手を間違えました

鷹槻れん

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29.公宣からの提案

うちのほうだったらどうだろう?

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「俺が……あのアパートを出たらいいのか?」

 憮然ぶぜんとした口調でそう公宣きみのぶに問うて。

 結葉ゆいはは「そうちゃんっ!」とそんなそうを心配そうに見つめた。

そう。お前は結葉ゆいはちゃんを一人ぼっちであのアパートに置いておけるほど薄情な男なのかい?」

 だけど公宣に全てを見透かされたような目で見つめられて、そうは言葉に詰まってそっぽを向く。

 それが出来なかったから今みたいなことになっているのだ。


「じゃあ。親父は結葉ゆいはに実家にでも行けって言うのかよ」

 そうが腹立たしげにつぶやいたのを見て、公宣が小さく吐息を落とした。


「それ、お前は結葉ゆいはちゃんに言えるの?」

 そこで結葉ゆいはに視線を移した公宣が、「結葉ゆいはちゃん、旦那さんに知られてる実家に一人で住める?」と問いかけてきて。

 結葉ゆいはは頷くべきだと分かっていても、どうしてもそうすることが出来なかった。


「親父っ! 何てこと言うんだよ!」

 それを見たそうが、思わずと言った感じで立ち上がって父親に抗議するのを、結葉ゆいははそっと彼の手に触れて止める。


「すみ、ませ……。いまはまだ………無理……です」

 それでも結葉ゆいはは泣きそうになりながら、か細い声でそう言うのが精一杯だった。

 そんな結葉ゆいはの頭を、公宣が優しく撫でてくる。


 その感触が、余りにもそうの手に似ていたから。

 結葉ゆいははハッとして顔を上げて、ソワソワと公宣を見遣った。

 やっぱりそうと公宣は親子なんだと痛感させられた結葉ゆいはだ。


 そうがそんな公宣の手を腹立たしげに掴んで結葉ゆいはの頭から引き剥がして。

 公宣は苦笑しながら手を引っ込めた。



「ねぇ結葉ゆいはちゃん。例えば、なんだけどね? ……それが結葉ゆいはちゃんの実家じゃなくて、我が家うちのほうだったらどうだろう?」

 優しい声音で問いかけられた結葉ゆいはは、「え……?」とつぶやいて、すぐ前に座る公宣を見詰めた。


「それなら……大丈夫だと、思います」

 山波家やまなみけには常に誰かがいてくれる。

 そういう状況ならきっと、結葉ゆいはは恐怖に打ち勝てると思って。

「だったらうちにおいで。幸い部屋はたくさん余ってる」

 何でもないことのように公宣が言うから、結葉ゆいはは瞳を見開いた。

「いい……ん、です、か?」

 恐る恐る問いかけたら公宣きみのぶがニコッと笑って「もちろん。むしろ大歓迎だよ」と言ってくれた。


「ちょっ、親父……だったら俺もっ」

「ん? もしかしてそうもうちに帰って来たくなった?」

 クスッと笑って公宣が息子を見て。

 そうは決まり悪そうに「お、俺はっ。結葉ゆいはを守るって決めたからっ! 結葉ゆいはがそうするってんなら戻るしかねぇだろっ?」と唇を尖らせる。


「もちろん父さんはお前がうちで寝泊まりするのも歓迎するよ。久しぶりにせりそうがひとつ屋根の下とか……母さんが知ったらきっと大喜びだね」


 二人のやりとりを見て、結葉ゆいははせっかく一人暮らしを楽しんでいるかもしれないそうが、自分のせいで不自由を強いられるのではないかと不安になって。

そうちゃん、いい、の?」

 ソワソワと瞳を揺らせながら問いかけた。

「いいも何も……近くにいなきゃいざって時にお前を守ってやれねぇだろ?」

 そうに言われて、結葉ゆいははウルッとしてしまう。


そうちゃん、ごめ……」

 いつもの癖でつい謝りそうになって、今朝そうから言われた言葉を思い出した結葉ゆいはが、「ありがとう」と言い直したら「おう」と頭を撫でられた。




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章の変わり目のため、今日は文字数が少なめです。
すみません!
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