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2.突然の邂逅…しかも全裸で!
「痴女」とかあんまりじゃないですかっ⁉︎
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「あ、あれ!? どこ行ったの!?」
先日神社でぽっちゃりしたおばあさんから買った可愛い可愛い猫の縁結びキーホールダー。
早速普段仕事へ持参しているカバンのファスナー部分に取り付けていたのだけれど。
家に帰ってみたらさくらんぼ状態から、ただのおひとり様な招き猫キーホールダーになっていた。
ショック……。
買って二日目でこんな……。
(これは干物女に良縁なんてありませんよ、という暗示ですかね?)
羽理はガックリと肩を落とした。
とりあえず、残ったひとつが落っこちたりしないよう、お財布のファスナーに移動させたのだけれど。
(効力も半減かなぁ)
何となくそう思ってしまった。
***
その日は夏らしい、とってもとっても暑ぅーい夜で。
羽理はお守りを失くしたショックと、残業で疲れた身体に鞭打って、小さな浴室で一人今日一日の疲れと汚れを落としていた。
せっかくお風呂で汗を流しても、下手をすると身体が温もりすぎて、タオルで水気を拭き取っている間にも汗ばんできてしまうから。
もう、いっそのことお湯には浸からなくてもいいよね?って事で、湯船にお湯を溜めずにぬるめのシャワーで汗を流して。
さぁ上がってご飯にしましょ、と浴室のドアに手を伸ばした瞬間。
ガラガラ――。
一〇階建ての女性向けマンションの七階――1Kの一室――で一人暮らしのはずなのに、何故か脱衣所へ続く中折れ扉が勝手に開いて。
「え?」と思う間もなく全裸のびしょ濡れ男が「暑ぃー」とつぶやきながらこちらに向かって一歩を踏み出して来た。
「――っ‼︎」
羽理は、自身も真っ裸のまま、驚きの余り声にならない悲鳴を上げて、一人アレコレ思い悩んで悶絶する。
間近とはいえモアモアと湯気が立ち込める中でのパッと見なので絶対とは言えない。
けれど、一五五センチの羽理より二〇センチぐらい大きく見えたその男には、既視感があって。
「ぶ、ちょ……?」
自分の勤め先――青果専門に扱う商社『土恵商事』の総務部長・屋久蓑大葉に見えた。
(きっ、気のせいだよねっ⁉︎)
当たり前だけど、屋久蓑部長と羽理は、一緒に風呂に入るような、そんな艶めいた間柄ではない。
我が家へお招きしたこともなければ、社内で会話らしい言葉だってほとんど交わしたことすらないのだ。
むしろ同じフロアに居てさえも、雲の上の人。ほぼほぼ接点のない相手。
屋久蓑は、羽理の所属する財務経理課を取りまとめる総務部の部長様ではあるけれど、一介のペーペー社員である羽理が、部長様とお話をする機会なんて九分九厘ないわけで。
実際今まで遠目にチラリとお姿を拝見することはあっても、「おはようございます」の一言すら交わしたことがなかった。
***
突然の裸同士でのガチンコに驚いたのは、どうやら相手も同様だったらしい。
「ちっ、痴女!」
と失礼な言葉を残して、ピシャリと扉が閉ざされた。
(ちょっ、こっちは「部長」って呼ぼうとしたのに、「痴女」とかあんまりじゃないですかっ⁉︎)
まぁ、羽理は屋久蓑部長を知っていても、あちらは平社員の羽理のことなんて知らないだろうから仕方がない気もするのだが。
何となく悔しいではないか。
そう思ってムスくれた羽理の耳に、扉の向こうから「はぁ⁉︎ ちょっと待て。何だここはぁーっ!」という声が聞こえてくる。
先日神社でぽっちゃりしたおばあさんから買った可愛い可愛い猫の縁結びキーホールダー。
早速普段仕事へ持参しているカバンのファスナー部分に取り付けていたのだけれど。
家に帰ってみたらさくらんぼ状態から、ただのおひとり様な招き猫キーホールダーになっていた。
ショック……。
買って二日目でこんな……。
(これは干物女に良縁なんてありませんよ、という暗示ですかね?)
羽理はガックリと肩を落とした。
とりあえず、残ったひとつが落っこちたりしないよう、お財布のファスナーに移動させたのだけれど。
(効力も半減かなぁ)
何となくそう思ってしまった。
***
その日は夏らしい、とってもとっても暑ぅーい夜で。
羽理はお守りを失くしたショックと、残業で疲れた身体に鞭打って、小さな浴室で一人今日一日の疲れと汚れを落としていた。
せっかくお風呂で汗を流しても、下手をすると身体が温もりすぎて、タオルで水気を拭き取っている間にも汗ばんできてしまうから。
もう、いっそのことお湯には浸からなくてもいいよね?って事で、湯船にお湯を溜めずにぬるめのシャワーで汗を流して。
さぁ上がってご飯にしましょ、と浴室のドアに手を伸ばした瞬間。
ガラガラ――。
一〇階建ての女性向けマンションの七階――1Kの一室――で一人暮らしのはずなのに、何故か脱衣所へ続く中折れ扉が勝手に開いて。
「え?」と思う間もなく全裸のびしょ濡れ男が「暑ぃー」とつぶやきながらこちらに向かって一歩を踏み出して来た。
「――っ‼︎」
羽理は、自身も真っ裸のまま、驚きの余り声にならない悲鳴を上げて、一人アレコレ思い悩んで悶絶する。
間近とはいえモアモアと湯気が立ち込める中でのパッと見なので絶対とは言えない。
けれど、一五五センチの羽理より二〇センチぐらい大きく見えたその男には、既視感があって。
「ぶ、ちょ……?」
自分の勤め先――青果専門に扱う商社『土恵商事』の総務部長・屋久蓑大葉に見えた。
(きっ、気のせいだよねっ⁉︎)
当たり前だけど、屋久蓑部長と羽理は、一緒に風呂に入るような、そんな艶めいた間柄ではない。
我が家へお招きしたこともなければ、社内で会話らしい言葉だってほとんど交わしたことすらないのだ。
むしろ同じフロアに居てさえも、雲の上の人。ほぼほぼ接点のない相手。
屋久蓑は、羽理の所属する財務経理課を取りまとめる総務部の部長様ではあるけれど、一介のペーペー社員である羽理が、部長様とお話をする機会なんて九分九厘ないわけで。
実際今まで遠目にチラリとお姿を拝見することはあっても、「おはようございます」の一言すら交わしたことがなかった。
***
突然の裸同士でのガチンコに驚いたのは、どうやら相手も同様だったらしい。
「ちっ、痴女!」
と失礼な言葉を残して、ピシャリと扉が閉ざされた。
(ちょっ、こっちは「部長」って呼ぼうとしたのに、「痴女」とかあんまりじゃないですかっ⁉︎)
まぁ、羽理は屋久蓑部長を知っていても、あちらは平社員の羽理のことなんて知らないだろうから仕方がない気もするのだが。
何となく悔しいではないか。
そう思ってムスくれた羽理の耳に、扉の向こうから「はぁ⁉︎ ちょっと待て。何だここはぁーっ!」という声が聞こえてくる。
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