【完結】【R18】あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

鷹槻れん

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11.お買い物デート

大葉の「課長」時代

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「だって……た、いよ……ぶちょぉ、が……」

「俺は誰にもされた覚えはない。もっとスムーズに呼べ」

「もぉ! 上司の下の名前を呼び捨てするのがどれだけハードル高いと思ってるんですかっ。意地悪ですか! ドSですかっ!」

「なっ。お、俺は極めて温厚だぞ? なぁ、う、……り。いつものお前ならそんなの楽々越えられるはずだろ。――ほ、ほら、遠慮せず越えて来い!」

 大葉たいようは、自身も羽理うりのことを呼ぶのがしどろもどろなくせに、あくまでも羽理が「大葉たいよう」と呼ぶまで許してくれる気はないみたいで。

(どうしてこうなったの!)

 羽理は「うーーー」とうなり声を上げながら、先程の会話の中の敗因を必死に探る。
 だが、これと言って思いあたる節はなくて、早々に諦めた。

(ホント、部長は何をそんな、ムキになってるんでしょうね!?)

 代わりの心の中。
 盛大に大葉たいように不平不満をぶちまけた。


***


荒木あらき倍相ばいしょうからのディナーの誘い――荒木は「夕飯」と言ったけれど、絶対相手はディナーという感覚に違いない!――を断ったと言ったが、一度断られたくらいで倍相ヤツが引き下がるとは思えん!)

 羽理うり倍相ばいしょう岳斗がくとの誘惑に屈しなかったと言うのは大葉たいようにとって物凄く喜ばしいことだったけれど、その反面、そう危機感を募らせた大葉たいようだ。

倍相岳斗あの男は油断ならんからな)

 のほほんとしているように見えるけれど、あの若さで管理職になるくらいだ。一筋縄でいく男でないのは容易に推察できる。

(まぁ、それを言うと俺もか)

 岳斗がくととは六つ違いだが、大葉たいようも彼ぐらいの年齢の頃には課長職にいた。
 とはいえ、自分は優しくて話しかけやすいと評判の倍相ばいしょう岳斗がくととは違って、取っつきにくいことで有名な仏頂面ぶっちょうづら課長だったのだけれど。

(いや、俺だって別に部下に対してにこやかに接したくなかったわけじゃねぇぞ? ただ……)

 羽理うりの手を引きながら化粧品売り場までやって来た大葉たいようは、一人色々と頭の中で考え事をしていたのだけれど。

「そう言えばぶちょ、じゃなくて……えっと……あ、……は昔、倍相ばいしょう課長と違って人を――特に女性社員を寄せ付けない鬼課長さんだったって……人事課の那須なすさんがおっしゃってたんですけど……」

 立ち止まったことで、やっと呼吸が整ってきたらしい羽理から話しかけられて、慌てて彼女に意識を戻した。

(おい、荒木あらき羽理うり! お前いま、しれっと名前呼び回避で変な呼称持って来やがったな!?)
 などと思いつつ、羽理の口から出た〝那須〟という名にあからさまに眉をしかめた大葉たいようだ。

 というのも、人事課にいる〝那須みのり〟は大葉たいようと同期の女性社員の名で、割と美人だが圧が強すぎて大葉たいようは余り得意じゃないからだ。

「私もこうやって話せるようになるまでは、……たっ、たっ、……た、い……よぉ?……のこと、取っつきにくい雲上の部長様だと思っていたんですけど……」
 と、やたら名前のところだけしどろもどろで前置きをしてから、羽理がすぐそばの大葉たいようを猫のような大きな目でじっと見上げてくる。
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