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12.苦しい言い訳
さすが営業マン?
五代に死ぬほど苦しい言い訳をしている羽理だって、化粧品売り場でファンデーション片手にそんなことを言っている時点で、相当無理があるではないか。
(生鮮食品はあっちの方ですよ、荒木さん♪)
そんなあれやらこれやらを忙しなく考えながら意地悪く生鮮食品売り場の方を指さした大葉に、羽理が、『分かってます! 分かってますけど……ごり押しで誤魔化すしかないじゃないですかぁっ!』と口パクで懸命に訴えてくる……。
「うっ」
そのやや釣り気味の潤んだ目に一瞬で心を奪われてしまった大葉だ。
(くそぅ! 困り顔の羽理、めちゃくちゃ可愛いじゃねぇかっ!)
惚れた弱みというべきか。オロオロする羽理の様子に、大葉は愛する彼女のため、一肌脱いでやらねば!という方向へ、ぐらりと天秤を傾けた。
「営業のくせに知らないのか。ドラッグストアにも最近は生鮮コーナーがある」
――しかも下手したらスーパーより安い、と心の中で付け加えつつ。
(卵とか牛乳とかお買い得品も多いからな)
などと、ついつい主夫目線でものを考えてしまった大葉だ。
「マジですか」
「ああ、大マジだ。嘘だと思うならキミも後で見てみるといい。――案外近所のスーパーより安い食材とかあるぞ」
(おすすめは卵や牛乳だが、そこまでは教えてやらん)
「へぇー。俺、料理しないんであんま関係ないっすけど……」
そこでちらりと羽理に熱い視線を送った懇乃介が、「けど……彼女が出来た時、飯作ってもらう際の参考にさせてもらいます!」とにこやかに笑う。
(残念だったな。そいつは食うの専門だぞ?)
その視線が憎たらしく感じられて、つい心の中で悪態をついた大葉だ。
「うん、うん。そうするといいよぉ~。前に仁子が卵とか牛乳なんかがお買い得だって話してたから。――参考にして?」
(バカっ! あえて伝えなかった機密情報を簡単にバラすな、荒木羽理!)
大葉が羽理を恨みがましい目で見詰めたと同時。
「五代くんに一日も早く料理上手な彼女が出来るよう応援してるね!」
鈍感娘羽理がヘヘッと笑いながら、懇乃介の好意に満ちた視線をいとも簡単に叩き潰してしまう。
それでもさすが、断られるのには慣れっこ。マイナススタートからの相手でも上手く取り入り粘って何ぼのバイタリティ溢れる営業職と言うべきか。
「あ、あのっ。荒木先輩は料理とか……」
懲りない懇乃介がさらに食い下がって来て。
大葉は内心、(こいつ、すげぇな)と思わずにはいられない。
(生鮮食品はあっちの方ですよ、荒木さん♪)
そんなあれやらこれやらを忙しなく考えながら意地悪く生鮮食品売り場の方を指さした大葉に、羽理が、『分かってます! 分かってますけど……ごり押しで誤魔化すしかないじゃないですかぁっ!』と口パクで懸命に訴えてくる……。
「うっ」
そのやや釣り気味の潤んだ目に一瞬で心を奪われてしまった大葉だ。
(くそぅ! 困り顔の羽理、めちゃくちゃ可愛いじゃねぇかっ!)
惚れた弱みというべきか。オロオロする羽理の様子に、大葉は愛する彼女のため、一肌脱いでやらねば!という方向へ、ぐらりと天秤を傾けた。
「営業のくせに知らないのか。ドラッグストアにも最近は生鮮コーナーがある」
――しかも下手したらスーパーより安い、と心の中で付け加えつつ。
(卵とか牛乳とかお買い得品も多いからな)
などと、ついつい主夫目線でものを考えてしまった大葉だ。
「マジですか」
「ああ、大マジだ。嘘だと思うならキミも後で見てみるといい。――案外近所のスーパーより安い食材とかあるぞ」
(おすすめは卵や牛乳だが、そこまでは教えてやらん)
「へぇー。俺、料理しないんであんま関係ないっすけど……」
そこでちらりと羽理に熱い視線を送った懇乃介が、「けど……彼女が出来た時、飯作ってもらう際の参考にさせてもらいます!」とにこやかに笑う。
(残念だったな。そいつは食うの専門だぞ?)
その視線が憎たらしく感じられて、つい心の中で悪態をついた大葉だ。
「うん、うん。そうするといいよぉ~。前に仁子が卵とか牛乳なんかがお買い得だって話してたから。――参考にして?」
(バカっ! あえて伝えなかった機密情報を簡単にバラすな、荒木羽理!)
大葉が羽理を恨みがましい目で見詰めたと同時。
「五代くんに一日も早く料理上手な彼女が出来るよう応援してるね!」
鈍感娘羽理がヘヘッと笑いながら、懇乃介の好意に満ちた視線をいとも簡単に叩き潰してしまう。
それでもさすが、断られるのには慣れっこ。マイナススタートからの相手でも上手く取り入り粘って何ぼのバイタリティ溢れる営業職と言うべきか。
「あ、あのっ。荒木先輩は料理とか……」
懲りない懇乃介がさらに食い下がって来て。
大葉は内心、(こいつ、すげぇな)と思わずにはいられない。
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