【完結】【R18】あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

鷹槻れん

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13.お医者様でも草津の湯でも

お泊り前提みたい?

 以前、一見いちげんさんとおぼしき読者様からエッチシーンにリアリティがないだの、恋愛感情がイマイチ伝わりにくいだの感想を書かれたことがあるけれど、それもそのはず。

 羽理うりの恋愛小説はみんな何かで読んだり見たり聞いたりしたものの受け売りなのだから。

 実体験に乏しい妄想小説である以上、リアリティなんて出せるわけがない。

 でも――。

 そこでちらりと愛犬キュウリを、目を細めて撫でさする屋久蓑やくみの大葉たいようを見遣ると、羽理はどこか落ち着かない気持ちをなだめた。

「あ、あのっ、屋久蓑やくみの部長」

「……大葉たいよう、な?」

 呼び掛けると同時、足元のキュウリを撫でていた大葉たいようが、ふと手を止めて鋭い眼光でこちらを睨み上げてくるから。
 その視線と自分のものがかち合った途端、羽理はまたしても心臓がトクン!と跳ねて、「うっ」と胸を押さえた。

(もぉ、怖いお顔するからまた心臓が痛くなっちゃったじゃないですかっ。不整脈で倒れたら治療費は部長に請求しちゃいますからね!?)

 胸元をギュッとしながら大葉たいようを睨んだら、そんな大葉たいよう越し。キュウリから純真無垢じゅんしんむくな曇りなきつぶらなまなこでじっと見上げられて……。
 何だか自分が彼女の飼い主様に対して良からぬ気持ちを抱いているような気になって、ソワソワと落ち着かなくなった羽理だ。

(だっ、大丈夫だよ? キュウリちゃん。私、貴方の飼い主さんに害をなす気は微塵もないからっ)

 そんな言い訳をしつつも心の中――。
(けど……今日の私、胸が痛くなり過ぎじゃない? 一度心電図をとり直して頂いた方がいいよね? もちろん原因は屋久蓑やくみの部長っぽいし、で!)
 なんて具合に、羽理は病院行きを決意した。

 その上で、羽理は先程の続きの言葉を言わずにはいられない。

「あ、あの、それだと何だかお泊り前提みたいになってると思うんですけど……」

「ん? もちろんそのつもりだが?」

 キョトンとした顔をした大葉たいようから「そもそも入浴後に片道二〇分の距離を、相手を送迎するためだけに費やすなんて馬鹿くさいだろ?」と、さも当たり前みたいに付け加えられて。

 そ、それは確かにその通りなんですがっ!と思いつつも反論したくてたまらない羽理うりだ。

大葉たいようのお家は広いからいいですよ? でもうちは……ご存知と思いますけどめっちゃ狭いワンルームマンションなんです! お部屋がひとつしかありません! 二人でお泊りしたら……その……あの……」

 別室へ……が出来ないから、一緒の部屋に寝るしかなくなるではないですか。

(それは困りますっ!)

 そう思って。


「ひょっとして大葉たいようは恋愛経験めっちゃ豊富な人ですか? 抱いた女性の数も、両手両足の指じゃ足りないくらいなんじゃないですかっ!?」

「は? 何だいきなりっ」

 キュウリを構うのをやめて慌てたように立ち上った大葉たいように、斜め上から困ったようにじっと見下ろされて。
 羽理は無意識に先程手渡されたばかりのスーツを抱く腕にギュウッと力を込めた。

(だってもしそうだとしたら……すっごくすっごくではないですかっ!)

 プレイボーイに手玉に取られるのはしゃくさわるから……。
 すぐさまそのモヤモヤの正体を、そう結論付けた羽理だ。

 大葉たいようが知ったら『誰がプレイボーイだ、バカ者め! 自慢じゃないが、俺はめちゃくちゃ奥手だぞ⁉︎』と要らぬ告白をしかねないことを思っているのだが、残念ながらに入っている羽理は気付けない。
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