【完結】【R18】あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

鷹槻れん

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16.その女性(ひと)は誰ですか?

体調悪いのか!?

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 羽理うりは携帯の電源を切った覚えはなかったけれど、電池残量を確認したわけではない。
 今日は大葉たいようからの連絡を気にして何度も何度もスマートフォンを眺めてしまっていたから、もしかしたらそのせいで充電が尽きてしまったのかも知れない。

 それに、よもや電池があったとして……タイミング的に電話がかかっていた時刻はシャワー中で出られなかっただろう。


「そんなことしたらお姉さんは……」

「社で騒がれんのが嫌だったからとりあえず連れて帰っただけだ。……そこは飯でも食わせといて適当に放置で構わんだろ」

 大葉たいようにとっては、羽理の機嫌きげんうかがいの方がよっぽど大事なのだから。

 そのために柚子ゆずが風呂に入ってすぐ夕飯の支度したくをすべくキッチンに立っていた大葉たいようだ。
 柚子は、ご飯さえ出しておけば大人しく待つタイプだと長い付き合いで知っている。

「電話繋がんねぇし、怒ってんのかな?と思って内心すげぇ焦った。けど――」

 本当はすぐにでも会社へ乗り込んで「荒木あらきさん、ちょっと」とかやりたかったぐらいだ。
 だが、早退した身でノコノコ社屋へ戻って、羽理を部長室に呼び出せるほど、大葉たいよう厚顔無恥こうがんむちになり切れなかったのだ。

「あの。ごめんなさい。……実は私も今日は早退してて」

 多分社外で待ち伏せされていても会うことは叶わなかったはずだ。

 申し訳なさそうに自分を見上げてくる羽理を見て、大葉たいよう
「体調悪いのかっ!?」
 思わずポタポタと髪の毛から水滴をしたたらせたままの羽理の肩を掴んだのだけれど。

 羽理の身体が冷たく冷えているのが分かって自分のバカさ加減が心底嫌になった。

「あ、あの……別にそう言うわけでは」

 羽理は体調不良こそ否定したけれど、このままでは羽理に風邪をひかせてしまう。

「とりあえず着替え持ってくるから身体拭いて待ってろ。話はお前の身支度が整ってからゆっくりしよう。――な?」


***



羽理うりちゃんは?」

「いま脱衣所で身体拭いてる」

 大葉たいようが、今朝洗濯して先ほど取り込んだばかりの羽理うりの着替え――ルームウェア――を取りにリビングへ行くと、キッチンにいた柚子ゆずが興味津々と言った様子で身を乗り出してきた。

「何で女性ものの服があるんだろう?って思ってたら……あの子のだったかぁー」

 大葉たいようが抱えているルームウェアを見て、柚子がニマニマして。

 そんな姉の足元。
 柚子にもよく懐いている愛犬キュウリが、何故か大葉たいよう側に付くことなく柚子サイドから、姉と一緒にこちらをじーっと見上げてくるのが何とも居心地悪く感じられた大葉たいようだ。
 キュウリの顔を見詰め返しながら、(う、ウリちゃん! 何でそっちサイドなんでちゅか!? パパの味方して下ちゃい!)と、なげかずにはいられない。

 恐らく大葉たいようが泊まりがけで出張に行く際など、持ち家一軒家に旦那と二人暮らしの寧葵ねぎにキュウリのことをお願いしているのもあるんだろう。

 実際、羽理に入れ込んでからというもの、大葉たいようはほんのちょっとだけ最愛のキュウリを二の次ないがしろにしている自覚もあった。

 実は今から大葉たいようは、そんなキュウリのことを柚子に一晩ばかり託そうとも思っていたから。

(きっとウリちゃんにはパパのしようとしてる不義理が分かってるんでちゅね?)

 アイコンタクト。
 キュウリに心の中で「ごめんね」と謝ると、大葉たいようはそのことを柚子に伝えようと口を開きかけたのだけれど――。
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