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19.僕じゃダメかな?
違和感
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「あ、あのっ! ……紅茶っ! すっごく美味しいですねっ!?」
二人のピリピリしたムードに耐え切れなくなった羽理が、紅茶を褒めてマグを口元に持って行ったのだけれど。
「熱っ」
動揺のあまり、よく冷ましもせずにコップを傾けてしまった。
「大丈夫か!?」
「大丈夫ですか!?」
途端、二人から滅茶苦茶心配されて、居た堪れなくなった羽理だ。
「へ、平気です、ので」
ちやほやされ過ぎて、何だか落ち着かない。
慣れないことに所在なくうつむいたら、変な沈黙が落ちて――。
***
「で、倍相課長。今日は何をしにここまでいらしたんですか?」
そんな気まずい沈黙を破ったのは大葉だったのだが。
発せられたセリフは決して雰囲気が良くなりそうな話題ではなかったから。
羽理の緊張は絶賛継続中のままだ。
「何って……。見てわかりませんか? お見舞いですよ。実はどこかの誰かさんの浮気疑惑のせいで、今日は彼女、会社ですっごくしんどそうだったんです」
それに対する岳斗の返しも、いつもののほほんとした空気感はどこへやら……なギスギスしたものだったから、羽理はますます針の筵の上に座らされているような気分に陥ってしまう。
「直属の上司として、早退させた可愛い部下のことを気に掛けるのは当然のことでしょう?」
岳斗の言葉に羽理がソワソワと顔を上げたら、岳斗が「ね?」と付け加えてニコッと微笑んだ。
羽理は春風のような岳斗の笑顔と、北風のようにムスッと不機嫌そうな大葉の顔とを交互に見比べて。
そこでふと思い出したように「あ……」とつぶやくと、
「そう言えば倍相課長! あの受付けで見た綺麗な女性! 大……じゃなくて……えっと……や、屋久蓑部長のお姉さんだったんです! 課長が心配なさったような〝カノジョさん〟とかじゃありませんでした!」
そう打ち明けたのだけれど。
それを聞いた大葉が、一瞬だけ岳斗に鋭い視線を投げ掛けてから何か言おうとして。
でもあえて気持ちを切り替えるみたいに視線を羽理へ戻すと、不機嫌そうに「おい、羽理。俺の呼び方」と異議申し立てをしてきた。
羽理は大葉の態度に違和感を覚えたのだけれど、すぐにそんな大葉のセリフに重ねるようにして、
「わざわざ言い直さなくても大丈夫ですよ?」
クスッと笑った岳斗から「けど……会社では気を付けてくださいね?」と指摘されて、小さな引っ掛かりがポンッと吹っ飛んで行ってしまう。
「あ、はい! ……あ、有難う、ござい、ます……?」
今まで散々岳斗の前でも無意識に〝大葉〟呼びをしていた羽理だったけれど、改めてその呼び方を肯定されると何だか照れてしまうではないか。
お礼を言うのも違うよね?と思いながらも、つい「有難う」を言ってしまった。
「何で礼……」
わざわざ掘り下げなくてもいいのに、すかさず大葉が突っ込みを入れてきて、ついでのように「ところで倍相……」と、こちらはとうとう敬称も役職名もなしで呼び掛ける。
二人のピリピリしたムードに耐え切れなくなった羽理が、紅茶を褒めてマグを口元に持って行ったのだけれど。
「熱っ」
動揺のあまり、よく冷ましもせずにコップを傾けてしまった。
「大丈夫か!?」
「大丈夫ですか!?」
途端、二人から滅茶苦茶心配されて、居た堪れなくなった羽理だ。
「へ、平気です、ので」
ちやほやされ過ぎて、何だか落ち着かない。
慣れないことに所在なくうつむいたら、変な沈黙が落ちて――。
***
「で、倍相課長。今日は何をしにここまでいらしたんですか?」
そんな気まずい沈黙を破ったのは大葉だったのだが。
発せられたセリフは決して雰囲気が良くなりそうな話題ではなかったから。
羽理の緊張は絶賛継続中のままだ。
「何って……。見てわかりませんか? お見舞いですよ。実はどこかの誰かさんの浮気疑惑のせいで、今日は彼女、会社ですっごくしんどそうだったんです」
それに対する岳斗の返しも、いつもののほほんとした空気感はどこへやら……なギスギスしたものだったから、羽理はますます針の筵の上に座らされているような気分に陥ってしまう。
「直属の上司として、早退させた可愛い部下のことを気に掛けるのは当然のことでしょう?」
岳斗の言葉に羽理がソワソワと顔を上げたら、岳斗が「ね?」と付け加えてニコッと微笑んだ。
羽理は春風のような岳斗の笑顔と、北風のようにムスッと不機嫌そうな大葉の顔とを交互に見比べて。
そこでふと思い出したように「あ……」とつぶやくと、
「そう言えば倍相課長! あの受付けで見た綺麗な女性! 大……じゃなくて……えっと……や、屋久蓑部長のお姉さんだったんです! 課長が心配なさったような〝カノジョさん〟とかじゃありませんでした!」
そう打ち明けたのだけれど。
それを聞いた大葉が、一瞬だけ岳斗に鋭い視線を投げ掛けてから何か言おうとして。
でもあえて気持ちを切り替えるみたいに視線を羽理へ戻すと、不機嫌そうに「おい、羽理。俺の呼び方」と異議申し立てをしてきた。
羽理は大葉の態度に違和感を覚えたのだけれど、すぐにそんな大葉のセリフに重ねるようにして、
「わざわざ言い直さなくても大丈夫ですよ?」
クスッと笑った岳斗から「けど……会社では気を付けてくださいね?」と指摘されて、小さな引っ掛かりがポンッと吹っ飛んで行ってしまう。
「あ、はい! ……あ、有難う、ござい、ます……?」
今まで散々岳斗の前でも無意識に〝大葉〟呼びをしていた羽理だったけれど、改めてその呼び方を肯定されると何だか照れてしまうではないか。
お礼を言うのも違うよね?と思いながらも、つい「有難う」を言ってしまった。
「何で礼……」
わざわざ掘り下げなくてもいいのに、すかさず大葉が突っ込みを入れてきて、ついでのように「ところで倍相……」と、こちらはとうとう敬称も役職名もなしで呼び掛ける。
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