【完結】【R18】あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

鷹槻れん

文字の大きさ
164 / 342
25.持つ者と持たざる者

身代わり?

しおりを挟む
 誰のお父さんだろう?と思いながら、お母さんに来てもらえないとき、よそのお家ならお父さんという選択肢もあるんだな?とぼんやり思った岳斗がくとだったけれど、彼が岳斗の父親だとするならば、もしかしてあれは自分のことを見に来ていたのだろうか?

 大粒の雨が容赦なく叩きつけてくるなか手渡された小さな紙きれには、子供だった岳斗でも知っているような大企業の名が印字されていた。

 その社名の横、ひときわ存在を誇示こじするみたいに『代表取締役社長 花京院かきょういん岳史たかふみ』と書かれたその名刺と、自分によく似た面差しをした男の容姿をまじまじと見比べた岳斗は、名乗られるまでもなく目の前の男は死んだと聞かされてきた自分の父親だと思い知らされた。

 だって……。

(そっか。母さんは僕の名前をこの男性ひとの名から一字取ってたんだ……)

 日頃女の顔なんて微塵みじんも見せなかった母親の中に、眼前の男への恋着のようなものを感じ取って、やけにゾクリと寒気がしたのを覚えている。

 何が原因にせよ、男と別れることを決めたのなら、子に男の名から一字入れるだなんて未練がましいことをしないで欲しかった。

 それと同時、
『お母さんね、お父さんにそっくりの岳斗のお顔が大好きなのよ』
 そう言ってはしょっちゅう岳斗の頬をスリスリと愛し気に撫でてきた母親の手の感触がまざまざと蘇ってくるようで、岳斗は今まで純粋に自分に対する愛情だと思っていたものが崩れていくのを感じて、思わず傘を握る手にギュッと力を込めた。

 ツツツ……と頬を撫でる母親からのソフトタッチを想起させたのは、傘から滴り落ちた雨だれが肌を伝っている感触だった。

(お母さん、僕はこの男性ひとの身代わりですか?)

 涙なのか雨なのか分からない水気に濡れた息子の顔を冷めた目でじっと見下ろしながら花京院かきょういん岳史たかふみが事務的な声で淡々と告げた。

倍相ばいしょう岳斗がくとくん。キミには私の息子として、今日からうちで暮らしてもらう』


***


 若い頃は家柄と金、そうして恵まれた容姿にかせて様々な女と遊んできた花京院かきょういん岳史たかふみだったが、家業を継ぐことになり、家格・財力ともに伴侶として申し分のない娘・麻由まゆと婚約したのを機に一度、女性関係をリセットした。

 そうなる以前に付き合っていた女の数なんて覚えていないが、今目の前にいる、自分によく似た容姿を持った子供の母親のことはよく覚えている。

 両親を早くに亡くしたという倍相ばいしょう真澄ますみという女は天涯孤独の身の上だったからか、やけに貧乏臭いところがあった。だが逆にそこが新鮮で……とにかく家事能力の高いところが、そういうものとは無縁の岳史たかふみにはやけに新鮮に感じられたのだ。

 真澄は見た目もそれほど悪くなかったから、世にいう〝家庭の味〟とやらが恋しくなった時に呼び出しては遊んでやっていた。

 だが、遊びで手を出すには真澄という女はやけに執着心が強く、それが怖いくらいに鼻につく女で――。

 岳史たかふみの父親が庶民には破格の手切れ金を提示して息子との別れを迫っても、がんとして首を縦に振らなかったらしい。

 当時父親から『遊ぶ女は選べ』としつこく言われたから、この女のことはやたら鮮明に記憶にこびりついたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...