【完結】【R18】あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

鷹槻れん

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32.嫌だから、嫌なんです!

貴方にぴったりのお守り

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(そういえば……)

 屋久蓑やくみの大葉たいようとの電話を切った倍相ばいしょう岳斗がくとは、愛車のルームミラーに何気なく引っかけている黒猫のキーホールダーを見上げた。
 荒木あらき羽理うりが財布に招き猫のキーホールダーをつけているのをみて、猫グッズが好きな荒木さんらしいな? と思っていたら、先日羽理の家にケーキを持参したとき、帰りぎわ道端みちばた露店みせを広げているおばあさんから声を掛けられてものを売りつけられたのだ。

『これ、絶対貴方あニャたにぴったりのお守りだから』

 そう言われて、何となくおばあさんの圧に押されて買ってしまったのだが――。
『百円ぽっきりとお安くしておくから、代わりに今度そこの神社に住みついてる猫に、ニャにか美味しいものをおそなえしてちょうだいね』
 と乞われたことを思い出す。言われたときは『猫にお供え?』と眉根を寄せた岳斗だったが、そういえばアレからここへ足を運ぶことがなくてすっかり忘れていた。

 もしかしたら今日杏子あんずちゃんが餌付けしていたのがその猫かも知れない。しゃがみ込んでいた彼女の手に、猫用おやつの空きパッケージが握られていたことを思い出した岳斗は、今度〝お供え〟を口実に杏子あんずちゃんを尋ねるのも悪くないな……とニヤリとした。

 そうして猫繋がり。
 目の前にぶら下がったキーホールダーに再度視線を戻した岳斗は、そこに書かれた文言を見て吐息を落とす。

(何で祈願……)
 売りつけられた時、しっかり確認しなかった自分も悪いのだが、一人でふらついていた男にふさわしいお守りじゃないことだけは確かだ。

「何が僕にぴったりのお守りだよ……」

 いい加減なおばあさんだな……と苦笑まじりにつぶやいて、チョンッと目の前の黒猫をつつく。

 自分には不必要だと思うけれど、お守りだと思うと何となく粗末に出来なくて……かと言って未婚の自分が持ち歩くには明らかに適さないそれを持て余した結果、とりあえずということで車にぶら下げていたのだ。

(せめて交通安全……。いや、縁結びだったら良かったのに……)

 もちろん杏子あんず早急さっきゅうに仲良くなりたいけれど、既成事実で絡め取りたいわけではない。
 自身が婚外子として生まれた過去を持つ岳斗がくととしては、その辺りは慎重にいきたいと思っているし、正直ぶっちゃけ子供は欲しくないとすら思っている。

 そういえば居間猫いまねこ神社で杏子と出会ったと話したとき、大葉たいようから『もしかして……どちらかがその神社のお守りを持ってたりしねぇか?』と聞かれたけれど、目の前の子宝祈願には〝居間猫神社〟のロゴは入っていなかったし、そもそも子宝は関係ないだろうと思って、「少なくとも僕は持ってませんよ?」と答えたのだけれど。

 今思えば何故わざわざそんなことを問われたのだろう? と気になってしまった。

(今度杏子ちゃんに「あそこの神社のお守り持ってる?」って聞いてみようかな?)

 そう思いながら目の前のお腹のぽってり膨らんだ猫をチョンとつついたら、どこからともなく「ニャー」と猫の声が聞えた……気がした。
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