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39.コノエ産業開発株式会社
受付け
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迎えに行って、杏子の車を置いて帰るのは忍びないし、かと言って自分の愛車を置き去りにするのは論外だ。
もちろん、別々に行動するという選択肢は元よりない。
自分の愛車は土恵の駐車場に停めてありさえすれば何とでもなる。最悪、飲み会の時なんかにそうしているように、一泊させても問題はない。
コノエ産業の近くでタクシーを降りると、岳斗は五階建ての社屋を見上げた。
――杏子のいる経理課は、何階だろう?
***
エントランスをくぐってすぐ。岳斗は真正面に位置づけられた受付けへ近付くと、ふんわり人懐っこく見える営業用スマイルを浮かべて名刺入れから『土恵商事 総務部財務経理課長 倍相岳斗』と書かれた名刺を取り出した。
「土恵商事の倍相と申します。十時半に御社の経理課・美住様とお約束があるのですが」
社屋に入る前、確認した時計は十時二十分を指していた。杏子には先程電話で根回し済み。アポありで訪ねてきたと告げた方が取り次いでもらいやすいことは経験上知っているから、とりあえず受付けに土恵から杏子に来客が来る旨を伝えておいて欲しいとお願いしておいた。杏子に会ったら、用事なんて適当にでっち上げればいい。
二十代前半くらいだろうか。セミロングの髪の毛をくるんと内巻きにした品の良さそうな受付嬢は、目の前に立つ岳斗を前に、お辞儀をすることも忘れて固まってしまったみたいだ。綺麗どころとして会社の顔に選ばれ、それなりにきちんと日々の役割もこなしているであろうはずなのに、彼女はまるで職務放棄したみたいにどこかポォッとした表情で岳斗に見惚れている。
だが、こんなことは自分と初対面の女性には割とありがちなことだ。
実際のところ、見た目だけで異性からこんな反応をされることには心底辟易している岳斗だったけれど、あえて気付かないふり。
「あの……山本さん?」
ちらりと受付嬢の胸元に付けられた名札を確認するなり、困惑した体で、わざわざ彼女の名を交えて呼び掛けた。そうして、意図的にあざとく見えるように小首を傾げて先を促すのだ。
これだけで持ち直してくれたのはさすがというべきか。
「あっ、し、失礼いたしました。……つ、土恵商事の倍相岳斗さまですね。その……み、美住から話は伺っております。彼女を下までお呼び出し致しますか?」
ワタワタしながらも、しどろもどろ。何とかいつも通りと思しき対応をしてくれたことに、岳斗はホッと胸を撫で下ろす。
受付嬢の提案を一瞬にして脳内で転がすと、「いえ、途中他の部署の方々や中村経理課長さまにもご挨拶したいですし、経理課が何階にあるのかだけ教えて頂けたら自分で……」とにっこり微笑んだ。
(道すがら、それとなく社内の様子を探ってみよう)
杏子の様子からして、問題は経理課内だけではないように感じた岳斗は、受付嬢から経理課は四階だと聞き出したのち、わざとエレベーター前を通過して階段へと向かった。
***
もちろん、別々に行動するという選択肢は元よりない。
自分の愛車は土恵の駐車場に停めてありさえすれば何とでもなる。最悪、飲み会の時なんかにそうしているように、一泊させても問題はない。
コノエ産業の近くでタクシーを降りると、岳斗は五階建ての社屋を見上げた。
――杏子のいる経理課は、何階だろう?
***
エントランスをくぐってすぐ。岳斗は真正面に位置づけられた受付けへ近付くと、ふんわり人懐っこく見える営業用スマイルを浮かべて名刺入れから『土恵商事 総務部財務経理課長 倍相岳斗』と書かれた名刺を取り出した。
「土恵商事の倍相と申します。十時半に御社の経理課・美住様とお約束があるのですが」
社屋に入る前、確認した時計は十時二十分を指していた。杏子には先程電話で根回し済み。アポありで訪ねてきたと告げた方が取り次いでもらいやすいことは経験上知っているから、とりあえず受付けに土恵から杏子に来客が来る旨を伝えておいて欲しいとお願いしておいた。杏子に会ったら、用事なんて適当にでっち上げればいい。
二十代前半くらいだろうか。セミロングの髪の毛をくるんと内巻きにした品の良さそうな受付嬢は、目の前に立つ岳斗を前に、お辞儀をすることも忘れて固まってしまったみたいだ。綺麗どころとして会社の顔に選ばれ、それなりにきちんと日々の役割もこなしているであろうはずなのに、彼女はまるで職務放棄したみたいにどこかポォッとした表情で岳斗に見惚れている。
だが、こんなことは自分と初対面の女性には割とありがちなことだ。
実際のところ、見た目だけで異性からこんな反応をされることには心底辟易している岳斗だったけれど、あえて気付かないふり。
「あの……山本さん?」
ちらりと受付嬢の胸元に付けられた名札を確認するなり、困惑した体で、わざわざ彼女の名を交えて呼び掛けた。そうして、意図的にあざとく見えるように小首を傾げて先を促すのだ。
これだけで持ち直してくれたのはさすがというべきか。
「あっ、し、失礼いたしました。……つ、土恵商事の倍相岳斗さまですね。その……み、美住から話は伺っております。彼女を下までお呼び出し致しますか?」
ワタワタしながらも、しどろもどろ。何とかいつも通りと思しき対応をしてくれたことに、岳斗はホッと胸を撫で下ろす。
受付嬢の提案を一瞬にして脳内で転がすと、「いえ、途中他の部署の方々や中村経理課長さまにもご挨拶したいですし、経理課が何階にあるのかだけ教えて頂けたら自分で……」とにっこり微笑んだ。
(道すがら、それとなく社内の様子を探ってみよう)
杏子の様子からして、問題は経理課内だけではないように感じた岳斗は、受付嬢から経理課は四階だと聞き出したのち、わざとエレベーター前を通過して階段へと向かった。
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