【完結】【R18】あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

鷹槻れん

文字の大きさ
252 / 342
39.コノエ産業開発株式会社

受付け

しおりを挟む
 迎えに行って、杏子あんずの車を置いて帰るのは忍びないし、かと言って自分の愛車を置き去りにするのは論外だ。

 もちろん、別々に行動するという選択肢は元よりない。

 自分の愛車は土恵つちけいの駐車場に停めてありさえすれば何とでもなる。最悪、飲み会の時なんかにそうしているように、一泊させても問題はない。

 コノエ産業の近くでタクシーを降りると、岳斗がくとは五階建ての社屋を見上げた。

 ――杏子のいる経理課は、何階だろう?


***


 エントランスをくぐってすぐ。岳斗がくとは真正面に位置づけられた受付けへ近付くと、ふんわり人懐っこく見える営業用スマイルを浮かべて名刺入れから『土恵つちけい商事 総務部財務経理課長 倍相ばいしょう岳斗がくと』と書かれた名刺を取り出した。

土恵つちけい商事の倍相ばいしょうと申します。十時半に御社の経理課・美住みすみ様とお約束があるのですが」

 社屋に入る前、確認した時計は十時二十分を指していた。杏子には先程電話で根回し済み。アポありで訪ねてきたと告げた方が取り次いでもらいやすいことは経験上知っているから、とりあえず受付けに土恵つちけいから杏子に来客が来る旨を伝えておいて欲しいとお願いしておいた。杏子に会ったら、用事なんて適当にでっち上げればいい。

 二十代前半くらいだろうか。セミロングの髪の毛をくるんと内巻きにした品の良さそうな受付嬢は、目の前に立つ岳斗を前に、お辞儀をすることも忘れて固まってしまったみたいだ。綺麗どころとして会社の顔に選ばれ、それなりにきちんと日々の役割もこなしているであろうはずなのに、彼女はまるで職務放棄したみたいにどこかポォッとした表情で岳斗に見惚みとれている。

 だが、こんなことは自分と初対面の女性には割とありがちなことだ。

 実際のところ、見た目だけで異性からこんな反応をされることには心底辟易へきえきしている岳斗がくとだったけれど、あえて気付かないふり。

「あの……山本さん?」

 ちらりと受付嬢の胸元に付けられた名札を確認するなり、困惑したていで、わざわざ彼女の名を交えて呼び掛けた。そうして、あざとく見えるように小首を傾げて先をうながすのだ。

 これだけで持ち直してくれたのはさすがというべきか。

「あっ、し、失礼いたしました。……つ、土恵つちけい商事の倍相ばいしょう岳斗がくとさまですね。その……み、美住みすみから話は伺っております。彼女をこちらまでお呼び出し致しますか?」

 ワタワタしながらも、しどろもどろ。何とかいつも通りとおぼしき対応をしてくれたことに、岳斗はホッと胸を撫で下ろす。

 受付嬢の提案を一瞬にして脳内で転がすと、「いえ、途中他の部署の方々や中村経理課長さまにもご挨拶したいですし、経理課が何階にあるのかだけ教えて頂けたら自分で……」とにっこり微笑んだ。

(道すがら、それとなく社内の様子を探ってみよう)

 杏子の様子からして、問題は経理課内だけではないように感じた岳斗は、受付嬢から経理課は四階だと聞き出したのち、わざとエレベーター前を通過して階段へと向かった。


***
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...