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47.采配
特別ボーナス
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「おい、岳斗……!」
そこで大葉が思わず口を挟んだのは、大葉にとって一番大切な女性――荒木羽理――のことが宙ぶらりんになったままだからだろう。
杏子が入るために、荒木羽理が押し出されるのだということに、岳斗だって気が付かないわけじゃない。そこに関しては申し訳なく思っているし、荒木さんがどういう扱いを受けることになるのか気になるところだ。
だが、土井社長はそんな甥っ子をちらりと視線だけで制すると、岳斗との会話を優先することを選んだ。
「心置きなく? ねぇ倍相くん、キミはそんなバカげたこと、本気で言ってるわけじゃないよね?」
本気で思っていると即答すべきだし、出来ると思った。なのに一瞬だけ返答に詰まって視線を逸らせてしまった岳斗を見て、土井社長は確信したように言うのだ。
「もしもキミがうちに居残ることで土恵に損害を与えるかも? とか思ってるんだとしたらそれは大きな間違いだ」
その言葉に岳斗が土井社長の方を見たと同時、「今までだってキミがうちで働いてきたのに『はなみやこ』は手出ししてこなかったでしょう?」と、土井恵介が微笑んで見せる。
その言葉を聞いて岳斗はハッとさせられて――。
「社長……それは……」
「キミは『はなみやこ』の跡取り息子だ。勝手に調べて申し訳ないんだけど……倍相くんは現時点でも『はなみやこ』で結構な共益権を有する株主なんじゃない?」
土井社長が言うように、岳斗は会社を継ぐと思われていた頃、花京院岳史からはなみやこの二十八パーセントの株を譲渡されている。
三パーセント以上の株主比率を持っている岳斗は、株主総会の招集請求権、会社帳簿の閲覧および謄写請求権を有しているのだが、『はなみやこ』に関わりたくなかったので、それらの権利を行使したことはなかった。
あと少し比率が上がれば三分の一超で、株主総会の特別決議を単独で否決できる権利を有することが出来るのだが、さすがにそこまでは息子に権利を持たせるつもりはなかったんだろう。そこに至らないギリギリなラインの持ち株比率にされていることが、あの男の手のひらの上で踊らされているようで腹立たしかった。
「実は僕もね、『はなみやこ』の株の七%を保有してるんだよね」
「え?」
「僕はね、キミがうちの社に残ってくれるというなら、それを全部倍相くんに特別ボーナスとして譲渡してもいいと思ってるんだ」
「ですがそんなことを勝手にするのは……」
「調べてみたんだけどね、『はなみやこ』には株の名義変更を取締役会の承認事項とする定款はないみたいなんだよね。ってことは……株式の譲渡は株主の任意ってことだ。勝手にやっても何の問題もないよ?」
岳斗の懸念をサラリと跳ねのけて、土井社長がニヤリと笑う。
「僕のを合わせたら、キミの持ち株比率は『はなみやこ』の中で三分の一を超えるんじゃない?」
土井社長が有していた株と、自分が持っていた株を合計すれば三十五パーセントの持ち株比率を越えることを花京院岳史が気付かなかったわけがない。
だからこそ、今まで岳斗は土恵商事にいることが分かっていても、父親から手出しされなかったのだ。
花京院岳史が息子の取り込みに動いたのは、岳斗がそのことに気付かず土恵商事を離れようとしたからだったのだと気が付いて、岳斗は呆然と土井社長の顔を見詰めた。
そうしているうちに、自然と涙がポロリと頬を伝って、岳斗は慌てて顔をうつむけた。
そこで大葉が思わず口を挟んだのは、大葉にとって一番大切な女性――荒木羽理――のことが宙ぶらりんになったままだからだろう。
杏子が入るために、荒木羽理が押し出されるのだということに、岳斗だって気が付かないわけじゃない。そこに関しては申し訳なく思っているし、荒木さんがどういう扱いを受けることになるのか気になるところだ。
だが、土井社長はそんな甥っ子をちらりと視線だけで制すると、岳斗との会話を優先することを選んだ。
「心置きなく? ねぇ倍相くん、キミはそんなバカげたこと、本気で言ってるわけじゃないよね?」
本気で思っていると即答すべきだし、出来ると思った。なのに一瞬だけ返答に詰まって視線を逸らせてしまった岳斗を見て、土井社長は確信したように言うのだ。
「もしもキミがうちに居残ることで土恵に損害を与えるかも? とか思ってるんだとしたらそれは大きな間違いだ」
その言葉に岳斗が土井社長の方を見たと同時、「今までだってキミがうちで働いてきたのに『はなみやこ』は手出ししてこなかったでしょう?」と、土井恵介が微笑んで見せる。
その言葉を聞いて岳斗はハッとさせられて――。
「社長……それは……」
「キミは『はなみやこ』の跡取り息子だ。勝手に調べて申し訳ないんだけど……倍相くんは現時点でも『はなみやこ』で結構な共益権を有する株主なんじゃない?」
土井社長が言うように、岳斗は会社を継ぐと思われていた頃、花京院岳史からはなみやこの二十八パーセントの株を譲渡されている。
三パーセント以上の株主比率を持っている岳斗は、株主総会の招集請求権、会社帳簿の閲覧および謄写請求権を有しているのだが、『はなみやこ』に関わりたくなかったので、それらの権利を行使したことはなかった。
あと少し比率が上がれば三分の一超で、株主総会の特別決議を単独で否決できる権利を有することが出来るのだが、さすがにそこまでは息子に権利を持たせるつもりはなかったんだろう。そこに至らないギリギリなラインの持ち株比率にされていることが、あの男の手のひらの上で踊らされているようで腹立たしかった。
「実は僕もね、『はなみやこ』の株の七%を保有してるんだよね」
「え?」
「僕はね、キミがうちの社に残ってくれるというなら、それを全部倍相くんに特別ボーナスとして譲渡してもいいと思ってるんだ」
「ですがそんなことを勝手にするのは……」
「調べてみたんだけどね、『はなみやこ』には株の名義変更を取締役会の承認事項とする定款はないみたいなんだよね。ってことは……株式の譲渡は株主の任意ってことだ。勝手にやっても何の問題もないよ?」
岳斗の懸念をサラリと跳ねのけて、土井社長がニヤリと笑う。
「僕のを合わせたら、キミの持ち株比率は『はなみやこ』の中で三分の一を超えるんじゃない?」
土井社長が有していた株と、自分が持っていた株を合計すれば三十五パーセントの持ち株比率を越えることを花京院岳史が気付かなかったわけがない。
だからこそ、今まで岳斗は土恵商事にいることが分かっていても、父親から手出しされなかったのだ。
花京院岳史が息子の取り込みに動いたのは、岳斗がそのことに気付かず土恵商事を離れようとしたからだったのだと気が付いて、岳斗は呆然と土井社長の顔を見詰めた。
そうしているうちに、自然と涙がポロリと頬を伝って、岳斗は慌てて顔をうつむけた。
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