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49.ぞくぞくと集合
野菜柄の浴衣
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「浴衣姿もいいな。すっげぇ可愛い」
自身も近江ちぢみの本麻で仕立てられた濃紺の浴衣を粋に着こなしておきながら、やたらとこちらを褒めまくってくる大葉に、羽理は照れくさくてたまらない。
そもそも、〝浴衣姿いいな〟ではなく〝浴衣も〟なところが、このところ羽理が何を着ても褒めまくりな大葉の甘々な言動を彷彿とさせられて恥ずかし過ぎるのだ。
「しかもよく見ると野菜柄とか。こんなん着こなせるのはうちの羽理ぐらいだろ。ホント自慢の嫁だ」
「まだ嫁じゃありません。それにっ! これは土井社長から頼まれたから仕方なくっ」
うちの、をやたら強調して大葉が言った通り。
羽理がいま着ている浴衣は、ややくすみのある赤紫系の浅蘇芳色の地色に繊細なタッチとスモーキーな色使いで大きく描かれた蕪や人参や白菜や枝豆といった野菜柄で、『一体どこで見つけてきましたかね!?』と思わずにはいられない斬新なデザイン。
実は『夏祭りには是非僕がプレゼントしたこの浴衣を二人で着て出かけてね』と、土井恵介からにこやかに微笑まれて渡されたものなのだ。
包みをほどいたとき、(嘘でしょ?)と思いはしたものの、社長命令とあっては断れなくて……。これも土恵商事の副社長秘書としての広報活動の一環だと思って渋々受け入れた羽理だったのだけれど。
(何で大葉のは無地なんですかっ!?)
と思わずにはいられない。
羽理はそんな風に思って委縮しまくりの浴衣ではあったが、これがなかなかどうして。案外着てしまえば野菜柄だとは分からない絶妙なデザインで、すれ違う人たちは羽理と大葉の美男美女ぶりに振り返ることはあっても、羽理の着ている浴衣の柄にはほとんど気付いていなかった。
一年前の今頃。
羽理はここ――居間猫神社で開催されていた豊作を祈願する夏祭りにふらりと立ち寄って、不思議な力を持つ縁結びのお守りを手に入れた。
ちょうどあの辺り、神社の隅っこで焼き鳥を食べている時に出会ったふくよかな猫ちゃんが導いてくれた人気のない裏手で、おばあさんが一人ひっそりとやっていた露店で買ったものだ。
今日はお日柄もいい。夏祭りを堪能したのち、このまま入籍届を出しに行くつもりの羽理と大葉は、三ケ月後の十一月に、土恵商事を上げての盛大な挙式披露宴の予定を控えている。
すでに粛々と準備は進行中だが、直近になればもっと大変になるはずだ。そうなる前に、どうしても居間猫神社へ縁結びのお礼参りに来ておきたかった。
出店も連なり、そこそこの人出でにぎわう境内。はぐれないように……という大義名分のもと、大葉にグッと引き寄せられている身体が、物凄く熱い。
(手を繋ぐだけじゃダメなんですか!?)
腰を抱かれていて歩きにくいし、夏という季節柄もあるとは思うけれど、それとは別の熱にも支配されているようで、知り合いに出会ったらどうしようとソワソワしまくりの羽理である。
だってこの辺りは――。
自身も近江ちぢみの本麻で仕立てられた濃紺の浴衣を粋に着こなしておきながら、やたらとこちらを褒めまくってくる大葉に、羽理は照れくさくてたまらない。
そもそも、〝浴衣姿いいな〟ではなく〝浴衣も〟なところが、このところ羽理が何を着ても褒めまくりな大葉の甘々な言動を彷彿とさせられて恥ずかし過ぎるのだ。
「しかもよく見ると野菜柄とか。こんなん着こなせるのはうちの羽理ぐらいだろ。ホント自慢の嫁だ」
「まだ嫁じゃありません。それにっ! これは土井社長から頼まれたから仕方なくっ」
うちの、をやたら強調して大葉が言った通り。
羽理がいま着ている浴衣は、ややくすみのある赤紫系の浅蘇芳色の地色に繊細なタッチとスモーキーな色使いで大きく描かれた蕪や人参や白菜や枝豆といった野菜柄で、『一体どこで見つけてきましたかね!?』と思わずにはいられない斬新なデザイン。
実は『夏祭りには是非僕がプレゼントしたこの浴衣を二人で着て出かけてね』と、土井恵介からにこやかに微笑まれて渡されたものなのだ。
包みをほどいたとき、(嘘でしょ?)と思いはしたものの、社長命令とあっては断れなくて……。これも土恵商事の副社長秘書としての広報活動の一環だと思って渋々受け入れた羽理だったのだけれど。
(何で大葉のは無地なんですかっ!?)
と思わずにはいられない。
羽理はそんな風に思って委縮しまくりの浴衣ではあったが、これがなかなかどうして。案外着てしまえば野菜柄だとは分からない絶妙なデザインで、すれ違う人たちは羽理と大葉の美男美女ぶりに振り返ることはあっても、羽理の着ている浴衣の柄にはほとんど気付いていなかった。
一年前の今頃。
羽理はここ――居間猫神社で開催されていた豊作を祈願する夏祭りにふらりと立ち寄って、不思議な力を持つ縁結びのお守りを手に入れた。
ちょうどあの辺り、神社の隅っこで焼き鳥を食べている時に出会ったふくよかな猫ちゃんが導いてくれた人気のない裏手で、おばあさんが一人ひっそりとやっていた露店で買ったものだ。
今日はお日柄もいい。夏祭りを堪能したのち、このまま入籍届を出しに行くつもりの羽理と大葉は、三ケ月後の十一月に、土恵商事を上げての盛大な挙式披露宴の予定を控えている。
すでに粛々と準備は進行中だが、直近になればもっと大変になるはずだ。そうなる前に、どうしても居間猫神社へ縁結びのお礼参りに来ておきたかった。
出店も連なり、そこそこの人出でにぎわう境内。はぐれないように……という大義名分のもと、大葉にグッと引き寄せられている身体が、物凄く熱い。
(手を繋ぐだけじゃダメなんですか!?)
腰を抱かれていて歩きにくいし、夏という季節柄もあるとは思うけれど、それとは別の熱にも支配されているようで、知り合いに出会ったらどうしようとソワソワしまくりの羽理である。
だってこの辺りは――。
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