【完結】【R18】あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

鷹槻れん

文字の大きさ
299 / 342
49.ぞくぞくと集合

野菜柄の浴衣

しおりを挟む
「浴衣姿いいな。すっげぇ可愛い」

 自身も近江このえちぢみの本麻で仕立てられた濃紺の浴衣をいきに着こなしておきながら、やたらとこちらを褒めまくってくる大葉たいように、羽理うりは照れくさくてたまらない。

 そもそも、〝浴衣姿いいな〟ではなく〝浴衣も〟なところが、このところ羽理が何を着ても褒めまくりな大葉たいようの甘々な言動を彷彿ほうふつとさせられて恥ずかし過ぎるのだ。

「しかもよく見ると野菜柄とか。こんなん着こなせるのは羽理ぐらいだろ。ホント自慢の嫁だ」

「まだ嫁じゃありません。それにっ! これは土井社長から頼まれたから仕方なくっ」

 うちの、をやたら強調して大葉たいようが言った通り。

 羽理がいま着ている浴衣は、ややくすみのある赤紫系の浅蘇芳色あさきすおういろの地色に繊細なタッチとスモーキーな色使いで大きく描かれたかぶ人参にんじんや白菜や枝豆といった野菜柄で、『一体どこで見つけてきましたかね!?』と思わずにはいられない斬新なデザイン。

 実は『夏祭りには是非僕がプレゼントしたこの浴衣を二人で着て出かけてね』と、土井恵介からにこやかに微笑まれて渡されたものなのだ。

 包みをほどいたとき、(嘘でしょ?)と思いはしたものの、社長命令とあっては断れなくて……。これも土恵つちけい商事の副社長秘書としての広報活動の一環だと思って渋々受け入れた羽理だったのだけれど。
(何で大葉たいようのは無地なんですかっ!?)
 と思わずにはいられない。

 羽理はそんな風に思って委縮しまくりの浴衣ではあったが、これがなかなかどうして。案外着てしまえば野菜柄だとは分からない絶妙なデザインで、すれ違う人たちは羽理と大葉たいようの美男美女ぶりに振り返ることはあっても、羽理の着ている浴衣の柄にはほとんど気付いていなかった。

 一年前の今頃。

 羽理うりはここ――居間猫いまねこ神社で開催されていた豊作を祈願する夏祭りにふらりと立ち寄って、不思議な力を持つ縁結びのお守りを手に入れた。

 ちょうどあの辺り、神社の隅っこで焼き鳥を食べている時に出会ったふくよかな猫ちゃんが導いてくれた人気のない裏手で、おばあさんが一人ひっそりとやっていた露店で買ったものだ。


 今日はお日柄もいい。夏祭りを堪能したのち、このまま入籍届を出しに行くつもりの羽理と大葉たいようは、三ケ月後の十一月に、土恵つちけい商事を上げての盛大な挙式披露宴の予定を控えている。

 すでに粛々しゅくしゅくと準備は進行中だが、直近になればもっと大変になるはずだ。そうなる前に、どうしても居間猫神社へ縁結びのお礼参りに来ておきたかった。


 出店も連なり、そこそこの人出でにぎわう境内けいだい。はぐれないように……という大義名分のもと、大葉たいようにグッと引き寄せられている身体が、物凄く熱い。

(手を繋ぐだけじゃダメなんですか!?)

 腰を抱かれていて歩きにくいし、夏という季節柄もあるとは思うけれど、それとは別の熱にも支配されているようで、知り合いに出会ったらどうしようとソワソワしまくりの羽理である。

 だってこの辺りは――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...