9 / 40
不安要素
2
しおりを挟む
「お散歩行こっか?」
少しふらふらするけれど、大したことはないし、屋敷の中で穴を塞ぐ作業をするよりはそっちのほうが気持ちが上向く気がした。
「窓を塞ぐのなんて、何も今じゃなくても出来るんだし」
ブレイズ抜きで、闇の底のような夜の森を抜けるつもりは毛頭ない。
でも、ちょっと先の開けた野原に出るのくらい、ナスターと一緒なら大丈夫かな?
満月の夜、だだっ広いあそこは月光を独り占めできる絶好のポイントなのだ。
そう思ったパティスは、今来た道を引き返して、自室に戻った。
壁に掛けられた、首輪と同色の真っ赤なリードを取ると、慣れた手つきでナスターに装着する。
愛犬の栗毛色の身体には、深紅の首輪とリードがよく映えた。
この色が、ブレイズの瞳の色――ピジョンブラッド――を意識した色だなんて、口が裂けても言うもんか。
ふとそんな風に強情なことを考えてから、おかしくて思わず笑ってしまう。
そんなパティスを、ナスターがきょとんとした目で見上げてきた。
「私が……思ったことをちゃんと口に出して伝えないからいけないのかも知れないね」
ナスターになら平気で言えてしまう本音が、どうしてブレイズ相手だと言えないんだろう。
「ブレイズが帰ってきたら……寂しいって伝えよう。ちゃんと私を見て?って言ってみよう。もっともっと一緒に居たいって素直に口にしてみる……」
もしかしたら笑われたり、呆れられたりしてしまうかも知れないけれど。
ナスターの真っ直ぐな瞳をじっと見つめて、パティスは独り言のようにそうつぶやいた。
少しふらふらするけれど、大したことはないし、屋敷の中で穴を塞ぐ作業をするよりはそっちのほうが気持ちが上向く気がした。
「窓を塞ぐのなんて、何も今じゃなくても出来るんだし」
ブレイズ抜きで、闇の底のような夜の森を抜けるつもりは毛頭ない。
でも、ちょっと先の開けた野原に出るのくらい、ナスターと一緒なら大丈夫かな?
満月の夜、だだっ広いあそこは月光を独り占めできる絶好のポイントなのだ。
そう思ったパティスは、今来た道を引き返して、自室に戻った。
壁に掛けられた、首輪と同色の真っ赤なリードを取ると、慣れた手つきでナスターに装着する。
愛犬の栗毛色の身体には、深紅の首輪とリードがよく映えた。
この色が、ブレイズの瞳の色――ピジョンブラッド――を意識した色だなんて、口が裂けても言うもんか。
ふとそんな風に強情なことを考えてから、おかしくて思わず笑ってしまう。
そんなパティスを、ナスターがきょとんとした目で見上げてきた。
「私が……思ったことをちゃんと口に出して伝えないからいけないのかも知れないね」
ナスターになら平気で言えてしまう本音が、どうしてブレイズ相手だと言えないんだろう。
「ブレイズが帰ってきたら……寂しいって伝えよう。ちゃんと私を見て?って言ってみよう。もっともっと一緒に居たいって素直に口にしてみる……」
もしかしたら笑われたり、呆れられたりしてしまうかも知れないけれど。
ナスターの真っ直ぐな瞳をじっと見つめて、パティスは独り言のようにそうつぶやいた。
0
あなたにおすすめの小説
Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】
remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。
本宮 のい。新社会人1年目。
永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。
なんだけど。
青井 奏。
高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、
和泉 碧。
初恋の相手らしき人も現れた。
幸せの青い鳥は一体どこに。
【完結】 ありがとうございました‼︎
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
高塚くんの愛はとっても重いらしい
橋本彩里(Ayari)
恋愛
時期外れ、しかも偏差値の高い有名校からなぜかわざわざやってきた話題の転校生。
「どこに隠れていたの?」
そんな彼に、突然探していたと莉乃は背後から抱きしめられ、強引に連れて行かれる。
その日から莉乃は高塚くんに振り回される毎日。
この関係は何?
悩みながらもまるで大事な恋人のように莉乃を扱う彼に絆されかけていた、あの言葉を聞くまでは……。
高塚くんの重愛と狂愛。
すれ違いラブ。
見目がいいだけの男ではないのでご注意ください。
表紙イラストは友人のkouma.作です。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
運命には間に合いますか?
入海月子
恋愛
スペイン建築が大好きな設計士
大橋優那(おおはし ゆな) 28歳
×
せっかちな空間デザイナー
守谷翔真(もりや しょうま) 33歳
優那はスペイン建築を学ぶという夢が実現するというときに、空間デザイナーの翔真と出会った。
せっかちな彼は出会って二日目で優那を口説いてくる。
翔真に惹かれながらも、スペインに行くことが決まっている優那はその気持ちに応えられないときっぱり告げた。
それでも、翔真はあきらめてくれない。
毎日のように熱く口説かれて、優那は――
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。
汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。
元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。
与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。
本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。
人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。
そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。
「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」
戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。
誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。
やわらかな人肌と、眠れない心。
静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。
[こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる