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*嫌がることはしないから

風邪ひくよ?

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 お酒は媚薬だとどこかで聞いたことがあるけれど、本当にそうなのかもしれない。


「……んっ」

 思わず漏れた声に自分でも驚いて口を塞いだら、「このままじゃ風邪ひいちゃうね」って見詰められて。

 私はその、落ち着いた声音に瞳を見開く。


 ――緒川おがわさん、もしかして私が変な声出したの、気付かなかった?


 そう思って恐る恐る彼を見つめたら、「どうしたの?」と小首を傾げられる。

 その上で、再度何でもないみたいに「本当、しないから」と重ねられて、私は熱に浮かされたみたいに「本当に……?」なんてバカなことを返してしまっていた。


 緒川さんは私より15歳も年上だ。
 だから、女の子の裸を見ても何かしたいとか思わないに違いない。
 そんな自信があるから、裸を見るだけでいいって言えるんだ、きっと。

 そんな風に思って。

 30代も半ばを過ぎると性欲自体がなりをひそめて……もしかしたらエッチできなくなっちゃうのかも?

 今まで彼氏ができてこんなに長いこと身体を求められなかったことはない。
 それが、私にそう信じ込ませていた。


 だって、20代そこそこの私は知らなかったの。

 男性はいくつになっても、新しい女性えものを前にしたら、10代の男の子にも負けないぐらいエッチげんきになるってこと。

 四十路よそじが近かろうと何だろうと、問題なく女性を抱けるってこと。


 いいえ。そればかりか、むしろ経験値が高い分、狡猾こうかつに女の子をたぶらかすことが出来るようになってるってこと。


 自分で脱ぐのは恥ずかしくて……大きなベッドに腰掛けて、シャツワンピースのボタンに手をかけたまま動けなくなってしまった私を、緒川おがわさんがタオルを手にしたまま、すぐそばにひざまずいて、じっと見上げてくる。


「あ、あの……」


 何も言われず、ただ見つめられているのが恥ずかしくて、すがるような視線で緒川さんを見つめたら、「恥ずかしい?」って問いかけられて。

 当たり前のことを聞かないでくださいって言いたいのに、そんな言葉さえ緊張して出てこないの。

 仕方なく小さくコクンとうなずいたら、「じゃあ俺が脱がせてもいい?」とか。

 嫌だって言ったら諦めてくださるのですか?


「あ、の……やっぱり」

 ――脱ぐのは無理です。

 そう続けようとしたら

「脱がない、はダメだからね? 濡れたままでいたら風邪ひくよ?」

 先んじてそう逃げ道を封じられてしまって、私はパクパクと口をあえがせた。


「もしかして、脱ぎたくないって言う気だった?」


 クスッと笑われて、図星だったから真っ赤になる。

 緒川さんは単純に私の身を案じてくれているだけなのに、私ひとり変に意識してるみたいで恥ずかしい。
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