愛の照明

長井瑞希

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「どれだけ言葉で愛をささやいても、その裏で浮気している輩は一定数いる。なら、本当の愛って、愛を証明するものってなんなんだろうね」

「それまで一緒に過ごした時間? 心のこもった贈り物? ちょっとしたサプライズ? 自分たちの血がつながった子供? どれもありふれてて違うよね。まぁ個人差ってやつがあるのも事実なんだろうけど」

「無償の愛……献身? 博愛……平等性? 共有する秘密……背徳感? なんだか途中から変なものも混じったけどさ」

 でも、と彼女はつづけた。

「私が信じる愛を、あなたに見せることはできるよ。愛しい貴方にだけ」

 その目はどこまでも純粋で、まっすぐで、きれいだった。

 だけど、だからこそ僕は言うべきではなかった言葉を口に出してしまっていた。

「そんなものがあるなら見てみたいな」、と。


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 それから、『それ』を見せるには準備が必要だからと彼女がどこかへ行ってしまって二週間ほどが経った頃、それまでの音信不通ぶりが嘘のように本当にひょっこりと彼女は戻ってきた。

 学校も休んでいたし、彼女は何でもできるくせに機械だけは相性が悪く、21世紀にもなって手紙でのやりとりしかできない。いくら僕が使い方を教えるから携帯電話を持ってくれと言っても、

「手紙の方がいい理由があるの」

 と言って、機械にはかたくなに触ろうとしなかった。

 そんな彼女が、自撮り用のカメラを持って、僕の部屋の前にいた。

 しかも、そのちいさな体の向こう側には、背負ったリュックサックからはみ出た別のカメラも見えていた。

「重いでしょ? とりあえず上がってその荷物をおろしなよ」

 愛って記録に残る写真とか動画のことなんだろうか。あ、だから形として、モノとして残る手紙でのやり取りにこだわってたのかな?

 そんなことを考えていたから、僕は彼女が持っていた、正確には持っていたはずのものには気付かず、不用意に背を向けてしまった。……いや付き合ってる彼女に対して不用意とか何を言っているんだ別に人間不信でもないのに。まぁ今回の件で人間不信にもなりかけたんだけどさ。

 まぁともかく、背中に固い何かが当たって「うむ、これは固い。おっぱいじゃないね」なんてつまらないことを考えていた僕は。

 バチッっという、静電気の音と焼けるような痛みを背中に感じながら気絶した。


---------------------------------


「おはよう」

 僕の頭は彼女の膝の上にあった。いわゆる膝枕だ。うらやましいか? 替わってあげてもいいよ、最初から。

「……いやナチュラルにおはようのあいさつされてもなぁ」

 スタンガン……だよね? ライター分解したら出てくるアレじゃないよね?

「あ、やっぱり朝立ちの処理のために布団の中で……っていうシチュの方が好きだった?」

「まぁ好きだけど、そういう話じゃないんだよなぁ」

「これも愛よ、きっと」

「さようで」

 彼女の中で愛という言葉は『なにをしても許しあえるもの』と読むのだろうか。

 それとも、痛みと書いて愛と読む特殊な人なのだろうか? 困ったな、僕はいたってノーマルなのに。

「大丈夫、あなたはどちらかというとM寄りの人だから」

「心は読んでもいいけどそれを口に出してほしくはないなぁ」

「ちなみに気絶する直前のおっぱいじゃないってくだりをちょっと私にもわかるように説明してほしいのだけど」

「傷口に塩を塗り込んできたね!? しかも滑ったネタの解説もさせる鬼畜ぶり!」

 どちらかというとM寄りといったのは君なんだけど、どうしてこう高度な言葉攻めをしてくるのかなぁ?!

「私が楽しいからよ? あとあなたは痛みを伴う方に適性があって、精神的な方はむしろ相性最悪よ?」

「だとしたら尚更やめてほしかったなぁ!」

「で、おっぱいじゃないっていうのは……」

「まだいうか!」

「おあとがよろしいようで」

 僕たちはいつから漫才師になったんだろうか……あれ、この終わり方って落語家だっけ? まあいいや。

 いや、スタンガンらしきもので気絶させられたのは全然いいことではなくて、思いっきり問題なわけだけどさ。

 でも、そんなものを持ち出している時点で、しかも機械がダメダメだった彼女がなぜかそれを使いこなしているってところもポイント高くて。

 なによりこんな状況なのに彼女の瞳はやっぱりきれいで。だからいつものように普段通りの調子で聞いてみたんだ。

「なんで僕は後ろ手で手錠されてるの?」

 SMプレイはまだ続くの? って。
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