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1章
14。夢は願望の表れ、なんて認めません!
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ドン引きしてる私を見て、猫耳二人は明らかに不満そうな顔をした。
「ねぇ、そこって赤くなって喜ぶとこじゃないの?」
「もしくは、『こんなの嬉しくともなんともないんだからっ』ってツンツンするとか」
「……変な期待するのやめてくれる?」
そんな少女漫画的なリアクションを求められても困るんだけど。
「自分で乙女って言ってたじゃん」
あーあーあー。聞こえなーい。
昨日のような物理的な接触ならともかく。このくらいでいちいち顔赤らめたりなんて初心な反応してられないわ。
「ちぇ、反応薄ーい。つまんなーい」
「ーー昨日はあんなに動揺して可愛かったのに……残念です」
「……そこは程度問題ってやつだと思うの」
むしろ初対面のイケメンに胸に顔を埋められたり、指を舐められたりしても全く動揺しない女の人がいたら、私が会ってみたいくらいだ。
こうして振り返っても、昨日のは警察突き出されても文句言えないレベルのセクハラだと思う。
改めて腹が立ってきて二人を睨むと、ひょいと目を逸らされた。
早速試してみようぜ!とか今更のように首輪をつけ始める。
誤魔化した。絶対自覚あるでしょコレ。
まあ私が睨んだくらいじゃ何のダメージにもならないってことは分かった。これ以上やっても無駄よね。
軽くため息をついて視線を外すと、ぎゅっと手を握られる。
包まれた掌の中には、なんだか小さくて硬いもの。
「ねぇ、これはオマエから付けてよ?」
……笑顔でチャームを押し付けられた。
「……だから、そういうのは良いんだってば」
可愛らしい反応とか求められても、私じゃご希望に沿えないのだし。
そう言って返そうとするのに、逆にシアンからもチャームを渡されてしまい、また一つため息が出る。
……ってダメダメ、ため息をつくと幸せが逃げちゃうっていうし。
夢の中だとしてもため息禁止!
「……普通に付けるだけよ?」
「ええ、もちろん」
はぁ。面倒な事はさっさと済ますに限るわ。
あんまり渋っていると、今度は嫌がってる顔も面白いとか言い出しかねないもの。
二人の首元に手を伸ばして、それぞれのチャームを付ける。
「ありがとうございます。どうですか?」
「ええ、首輪、似合ってるわよ」
……言葉だけ聞くと、どこの悪役か女王様って感じね。
この場合、私が女王様になるのかしら……ってムリムリ、役者不足もいいとこだわ。
「なあなあ、チャームの方は?こっちもいい感じだろ?」
「えっと、そうねーー」
……今度は咄嗟に言葉が出ず、少し微妙な空気が流れる。
あ、これはダメなやつだ。
「ーーえっと、その。他の物も試してみない?多分もっと良いのがあると思うの。今ならまだ、お店の人に言えば取り替えてもらえそうだし」
「……これは良くないってことですか?」
「そうじゃないの、ただ……あなた達にはもっと似合うのがあるんじゃないかと思って」
こんな、その辺の河原に転がっていそうな灰色の石じゃなくて。
ーー例えば綺麗な翠の輝石…翡翠とかエメラルドみたいな宝石なら。
それならば、マゼンタとシアンの鮮やかな髪にも、きっと引けを取ることなく似合うだろう。
不釣り合いだなんて誰かに言われる事もなくーー
「なーんか、別のこと考えてない?」
少しイライラした鋭い声が飛んで、はっと我にかえる。
慌てて謝って、苦笑いを浮かべながら続けた。
「いえ、その……私の瞳の色だと、あなた達にはちょっと地味なんじゃないかしらと思って」
「……僕は、そうは思いません。好きですよ、この色」
マゼンタが、キレイだよなっ、オレらにはベストマッチだろ!と笑って続ける。
そのまま、また私の髪に手を乗せ、ぐしゃぐしゃっと撫でてきた。
私は明後日の方を向きながら、ならいいけど、と小さく呟く。
ーー気を、遣わせてしまったのよね。
ほんと、見た目はアレだけど……意外と周りをよく見ていて、思った以上に気遣いのできる猫達だ。
……これが、全部私が見ている夢だとして。
普段は近くに来てももらえない猫に懐かれて。
こっそり嫌っている自分の瞳の色を綺麗だと、好きだと言われて。
これが、自分の深層心理での願望なのだとしたら。
ーーなんて浅ましくて、気持ちの悪い夢なんだろう。
……自分がもっとキライになりそうだ。
「ねぇ、そこって赤くなって喜ぶとこじゃないの?」
「もしくは、『こんなの嬉しくともなんともないんだからっ』ってツンツンするとか」
「……変な期待するのやめてくれる?」
そんな少女漫画的なリアクションを求められても困るんだけど。
「自分で乙女って言ってたじゃん」
あーあーあー。聞こえなーい。
昨日のような物理的な接触ならともかく。このくらいでいちいち顔赤らめたりなんて初心な反応してられないわ。
「ちぇ、反応薄ーい。つまんなーい」
「ーー昨日はあんなに動揺して可愛かったのに……残念です」
「……そこは程度問題ってやつだと思うの」
むしろ初対面のイケメンに胸に顔を埋められたり、指を舐められたりしても全く動揺しない女の人がいたら、私が会ってみたいくらいだ。
こうして振り返っても、昨日のは警察突き出されても文句言えないレベルのセクハラだと思う。
改めて腹が立ってきて二人を睨むと、ひょいと目を逸らされた。
早速試してみようぜ!とか今更のように首輪をつけ始める。
誤魔化した。絶対自覚あるでしょコレ。
まあ私が睨んだくらいじゃ何のダメージにもならないってことは分かった。これ以上やっても無駄よね。
軽くため息をついて視線を外すと、ぎゅっと手を握られる。
包まれた掌の中には、なんだか小さくて硬いもの。
「ねぇ、これはオマエから付けてよ?」
……笑顔でチャームを押し付けられた。
「……だから、そういうのは良いんだってば」
可愛らしい反応とか求められても、私じゃご希望に沿えないのだし。
そう言って返そうとするのに、逆にシアンからもチャームを渡されてしまい、また一つため息が出る。
……ってダメダメ、ため息をつくと幸せが逃げちゃうっていうし。
夢の中だとしてもため息禁止!
「……普通に付けるだけよ?」
「ええ、もちろん」
はぁ。面倒な事はさっさと済ますに限るわ。
あんまり渋っていると、今度は嫌がってる顔も面白いとか言い出しかねないもの。
二人の首元に手を伸ばして、それぞれのチャームを付ける。
「ありがとうございます。どうですか?」
「ええ、首輪、似合ってるわよ」
……言葉だけ聞くと、どこの悪役か女王様って感じね。
この場合、私が女王様になるのかしら……ってムリムリ、役者不足もいいとこだわ。
「なあなあ、チャームの方は?こっちもいい感じだろ?」
「えっと、そうねーー」
……今度は咄嗟に言葉が出ず、少し微妙な空気が流れる。
あ、これはダメなやつだ。
「ーーえっと、その。他の物も試してみない?多分もっと良いのがあると思うの。今ならまだ、お店の人に言えば取り替えてもらえそうだし」
「……これは良くないってことですか?」
「そうじゃないの、ただ……あなた達にはもっと似合うのがあるんじゃないかと思って」
こんな、その辺の河原に転がっていそうな灰色の石じゃなくて。
ーー例えば綺麗な翠の輝石…翡翠とかエメラルドみたいな宝石なら。
それならば、マゼンタとシアンの鮮やかな髪にも、きっと引けを取ることなく似合うだろう。
不釣り合いだなんて誰かに言われる事もなくーー
「なーんか、別のこと考えてない?」
少しイライラした鋭い声が飛んで、はっと我にかえる。
慌てて謝って、苦笑いを浮かべながら続けた。
「いえ、その……私の瞳の色だと、あなた達にはちょっと地味なんじゃないかしらと思って」
「……僕は、そうは思いません。好きですよ、この色」
マゼンタが、キレイだよなっ、オレらにはベストマッチだろ!と笑って続ける。
そのまま、また私の髪に手を乗せ、ぐしゃぐしゃっと撫でてきた。
私は明後日の方を向きながら、ならいいけど、と小さく呟く。
ーー気を、遣わせてしまったのよね。
ほんと、見た目はアレだけど……意外と周りをよく見ていて、思った以上に気遣いのできる猫達だ。
……これが、全部私が見ている夢だとして。
普段は近くに来てももらえない猫に懐かれて。
こっそり嫌っている自分の瞳の色を綺麗だと、好きだと言われて。
これが、自分の深層心理での願望なのだとしたら。
ーーなんて浅ましくて、気持ちの悪い夢なんだろう。
……自分がもっとキライになりそうだ。
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