【本編完結】森で遭難しかけたら獣とおかしな人達に囲まれました 〜飼い猫が私を逃してくれません!〜

夕木アリス

文字の大きさ
21 / 174
1章

16。物件を紹介されました

しおりを挟む
固まってる私を横にのけて、マゼンタが犬の不動産屋さんに声を掛ける。

「あ、いたいたオッちゃん!部屋借りたいんだけど、良いの紹介してくれよ!」
「おや、誰かと思えば。届け物屋の坊主達か。今日は仕事は頼んでないはずだが?」

器用に片方の眉だけ上げながら答える不動産屋さん。
というか、どうも顔見知りらしい。
相変わらずオマエら目に痛い色してんなぁと言いながら、マゼンタの耳を引っ張っている。

うん、やっぱりこの色、この世界でも派手ってことよね。
地毛じゃなくて染めているのかしら。


「あーもー止めろよ!違うって!今日は客なんだよっ」
「客?オマエらがか?いくら知り合いでもノラに家はーー」

そこまで言って、マゼンタが得意げに引っ張っている首輪に気づいたらしい。


首輪とマゼンタの顔を交互に見つめた後、改めてこちらの方に視線を合わせてきた。

「ーーってことはこっちの嬢ちゃ……お嬢さんが飼い主さんか?」
「あ、はい……一応そういうこと、みたいです……」
「一応って……いつコイツらと知り合った?」

昨日ですと答えると、正気かよと首を振られたーー困ったことに同感だ。

なんか穴が開きそうなくらいマジマジと見られている。
居心地悪い……て言うか居た堪れない。


そうこうしているうちに、シアンが壁に貼っていた間取り図を何枚か剥がして持ってきた。

おじさんはそれらにサッと目を通しながら、「ご希望は?」と聞いた。


「ペット可、個室が三部屋以上で家具つきの物件。郊外で構わないので、できれば隣近所とは離れた一軒家で」
「はあ……了解だ。で、申請書は?」
「昨日のうちに提出しました」
「手、早過ぎだろ……」


オマエらが飼い猫ねぇ、とつぶやきながら、おじさんは一枚の紙を抜き出してシアンに渡した。

「さっきの条件なら、まあこの辺が第一候補だな」

「案内してくれねーの?」
「必要ないだろ、勝手に見てこい。決めたらここに戻ってきな」

手続きはちゃんとしてやるよ、と言っておじさんはヒラヒラ手を振って奥に引っ込んでしまった。


「ちぇー。碌に接客してくれねえし」

今日はオレら客なのになーとぶちぶち文句を言いながら、マゼンタがシアンから受け取った物件情報の紙を確認している。
横から覗いてみたが、二階建ての一軒家のようだ。部屋数もあってそこそこ広そうに見える。

ただ、間取り図のところ以外は読んでもよく分からない。いや、文字は問題なく読めるのだけど。
住所は見たところで土地勘がないからさっぱりだし、通貨も違うようで家賃が安いのか高いのかも分からない。

しばらくはお世話になる家なのだろうけど、私は居候させてもらうだけだしね。
寝る場所さえ確保できるならそれで充分だわ。

それよりも、さっきおじさんが気になることを言っていたわよね。
私の隣に戻ってきたシアンに小声で尋ねてみる。


「ねえ、さっきの不動産屋さんって普段は仕事相手だったりするの?」
「ええ、たまに仕事を頼まれることはありますね」

おお、ちゃんと仕事してるんだ!
まあそうじゃなければ、部屋を借りることもできないものね。

「届け物屋、って言われてたけど。宅急便みたいな仕事?」

やっぱ猫だけに?黒くないのが惜しいけど。

「……宅急便が何かが分かりませんが、指定された場所にヒトやモノや情報なんかを届ける仕事になりますね」

人や情報も届ける?
タクシーとか郵便屋さんも兼ねてるのかしら?

首を傾げていると、マゼンタが「なんだよタクシーって」と突っ込んできた。聞いてたんだ?


「やっぱ、ちょいちょい知らない言葉使うよなオマエ……郵便はあるけど、そっちは手紙か小包くらいしか届けないし、時間も掛かるから。届け物屋とは別な」

……?届け物屋を使う方が早いってこと?

「んー、詳しい説明はまた後でな。それより家見に行こうぜ!」
「書類の確認は終わりましたか?」
「おう!条件は文句なくいい感じ。けど、見ないことには決めらんねえしな」

善は急げだ、今から行こうぜ!とマゼンタは気合い十分にドアから出て行ってしまった。

……

…………

ーーえ、もうお終い?不動産屋ここでの用事終わっちゃったの??


家を借りる時って、もっと色々相談しながら決めるもんじゃないの?
不動産屋さんと何件も部屋を回って中を見せてもらいながら、どの物件にしようかってじっくり考えるイメージだったんだけど。

こんな、入って挨拶して五分で終了、って感じで即決するものだろうか。

残ったシアンの方をちらりと見上げると「一応、最終的には見てから決めるので」と、フォローなのか何なのか分からない言葉が降ってきた。


……うん、いいんだけど。二人の家だしね。
そうつぶやけば、三人の家ですよ、と訂正された。

その割に私には意見も求めてくれないんだ、という言葉はしっかり飲み込むことにする。
盛大に拗ねてるだけに思われるのは、なんだかシャクだったから。

……これって結局は拗ねてるってことよね。ほんとシャクだわ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...