【本編完結】森で遭難しかけたら獣とおかしな人達に囲まれました 〜飼い猫が私を逃してくれません!〜

夕木アリス

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2章

9。毒を喰らわば皿まで?

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はあああ………

なんだか、朝からどっと疲れたわ…。


さっきのマゼンタと言い、昨日のシアンといい。飼い主をどうする気なんだ全く。私が勘違いしたらどうしてくれるのよ。
オモチャ扱いされるとは思ってたけど、こういう方向に来るとは想定外だわ。

これが夢だとしたら、こんなのが私の願望ってことなのかしら。
もふもふ達にモテたい!とは常日頃から思ってたけど、コレじゃない感がすごいんだけど?

ーー万が一、イケメンにモテたい、なんて思ってる結果の夢だとしたら。
起きたときの精神的ダメージで死ねるわね。



そんな風に考え事をしつつ冷めた紅茶を飲んでるのだが、さっきから何だか肩が重い。

ーー原因は、後ろのニャンコが無駄にバックハグとかかましてくれてるからなんですが。

片方の肩からは腕が伸びて首の周りに巻かれてるし、もう一方の腕はお腹に、反対の肩にはマゼンタの頭が置かれている。
たまに首筋におでこをスリつけているのかくすぐったい感触がするし、耳にはご機嫌なゴロゴロって音が響いている。


あー…。なんなのコレ。

懐かれてる、のよね。それはまあ分かるのだけど。


体勢だけなら、昨日シアンにされたのとほぼ同じなのだけど、マゼンタ相手だとシアンみたいに危機感をビシバシ刺激されることもなく”も~邪魔だぁ、重いなぁー”で済ませてしまうのはどうしてかしら?
誰に聞いてもヤブ蛇になりそうだから、絶対誰にも言わないけど。

とは言え、うっかり後ろなんか見ちゃったらピコピコ動いてる猫耳が見えて"はうっ"ってなっちゃうし、かと言って手元のカップを見ると必然的に絡まされた両腕が目に入っちゃってまあ多少なりとも焦るワケで。
なるべく遠くを見て視界に入らないようにしてるのだけど、これはちょっとーーー

ーーいや、反応したら負けだ。下手に嫌がったりツッコんだら、返しでられる未来しか見えない。

こんなもん無視だ、無視!

とりあえずさっさと紅茶を飲みきって、カップを片付けなきゃだから退いてくれと言おう。うん、完璧。


そんな風に今後の方針を立てていると、後ろからトンっと音が聞こえた後、マゼンタが勢いよくベリッと剥がされた。

「ーー何をしてるんですか、二人とも?」
「シアン?!」
うっわ、びっくりした…!いつの間に入ってきたんだろ?

「たった今、ですよ。部屋の中に直接転移してきたんですがーーどうやら良いタイミングだったみたいですね」
楽しそうな事をしてますね?と笑顔で聞かれるが、目が笑ってないわね。

「へへっ、いーだろー。飼い主といちゃいちゃしてんの!」
「どこがよ、お茶の邪魔の間違いでしょ?」
「…僕のいないうちに、随分仲良くなったみたいですね?」

ちょっ、シアンさん怖いですっ!しっぽ逆立ってるしイカ耳だし、もう普通にイラついてるの隠す気ないわね?!

思わずピシリっと固まると、「いえ、ソフィーには怒ってないから大丈夫ですよ?」とにっこりされた…その笑顔が怖いのですが!

「え、愛称呼びズルい!オレもそっちで呼ぶ!」
「ダメです。この呼び方は僕のです」
「なんだよソレ!じゃあオレはソフィアのことフィアって呼ぶから!」

……どっちも許可した覚えはないんだけど?てか僕のって何よ?

ーーはあ、もういいわ。どうせ言っても二匹とも聞かないから、基本放置で行こう。



死んだ魚のような目で二人のやり取りを見るともなく見ていると、シアンが急に真面目な顔でこっちを向いた。

「そうそう、先にソフィーに謝らないといけない事がありまして。実はちょっと面倒なお誘いを受けたんですがーー」
「ーー!あの、ちょっと待って!先に私の方から謝らせてほしいことがあるの」


マゼンタの腕から抜け出して、二人の前に並ぶように立つ。
深呼吸して二人の目を見てから、バッと頭を下げた。

「昨日はホンっとーーーにごめんなさいっ!!」

知らずにやったとはいえ、アレは本当に駄目なやつだった。ここはしっかり謝らせてほしい。
まさかもらったハーブがキャットニップで、しかも過剰摂取させてしまうなんてーーー


「いや、分かってて食べたんだし?フィアが謝ることなくね?」
ーーえ?

「そうですよね…元々適量なら嗜好品扱いですから」
え、え?ちょっと待て。

「二人とも…知ってたの?」
「?ええ、まあニオイで。お茶とポップコーン、両方にキャットニップが入ってるのは分かってましたよ」
「オレら猫だしな。馴染みのあるニオイだから、間違えようもないし?」


ーーーは?


「え、じゃあなんで二人とも普通に食べたり飲んだりしてたの」
「ですから、嗜好品なんですよ。酒を出されて飲まないとかないでしょう」
「だとしても、そこは適量で止めるとこでしょ!」

何ソレ、なんの美学だ。
体質が合わないなら普通に断ってほしい。


「えーだって食べたかったし?両方フィアが用意してくれたんだろ?オレたちにおみやげって選んでくれて、お茶だってフィアが淹れてくれたって言ってたし」
そんなの全部食べるに決まってるじゃん!って、そこ嬉しそうに言うとこじゃないわよ?!

「…例え嗜好品でも、過剰摂取は毒なのよ」
何かあったらどうする気だ。

「だから、それも知ってますよ」
「なんなら毒が入ってたとしても、それがフィアの用意してくれたものならオレらは食べるよ?」
だって大好きな飼い主が、オレらのために準備してくれたんだぜ!?と言うけど、いや、それだいぶオカシイからね?!


…どうしよう。ここまでブッ飛んだ猫たちだとは思っていなかったわ。なんて子達を飼っちゃったのかしら。
ああもう頭痛が痛い…って私まで言葉がオカシクなっちゃうじゃない。


皆さま、飼い猫からの愛情が色々と間違ってる上に重いのですが、私どうしたらいいですか?
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