61 / 174
2章
10。お城に行く事になりました
しおりを挟む
「で、ソフィー。そろそろ僕の方の謝罪も聞いてもらえます?」
そんなシアンの言葉をまるっと無視して、私はダイニングテーブルに突っ伏していた。
だってその謝罪って、十中八九、女王様からの呼び出しに関してのやつでしょ?
なんかもう面倒ごとの予感しかしないし、全くもって聞きたくないんですが!
「ーーちゃんと起きて聞いてくれないなら、このまま耳許で説明して差し上げてもいいんですよ?」
ひぃっ?!?!
「ちゃ、ちゃんと聞くわよ!」
…み、耳許で声を吹き込んでこないでよ、心臓に悪いんだから!
昨日の件もあり、シアン相手には警戒心が拭えないというか…いつセクハラかまされるかと気が気じゃないんですけど!
「なら良かった。ひょっとして、マゼンタからある程度聞いてたりしますか?」
「…お城の女王様に謁見しろって話よね…」
「ええ、それです。僕ら三人とも呼び出し対象でして。朝からちょっと交渉してたんですがね…」
「なになに?まさか交渉決裂した?」
マゼンタがうへぇ、と心底嫌そうな顔で舌を出した。
「いえ、そこまでは。むしろそれなりに譲歩も引き出しました」
「譲歩ってどんな?」
あれ、ひょっとして思ったより良い話?
「とりあえず今回の訪問は正式な謁見という形でなく、女王が個人的に友人を招いた、という形にするそうです」
「ーーそれ、譲歩なの?」
どの道、女王様には謁見するんじゃないのよ。
「会うのは女王と宰相の二名のみで、個室に招かれ他の貴族の同席はなし。無礼講で、服装も正式なものでなくても可だそうですよ」
「正式も何も、私普段着しか持ってないわよ?!」
昨日買ったのはごく普通のワンピースでフォーマルウェアじゃないし、なんなら足元はサンダルだ。
どう考えてもお城に呼ばれるときの格好じゃない。
ついでに言わせてもらうなら、その無礼講って言葉は真に受けてはいけないやつだから!
「お、ラッキーだな!オレ堅っ苦しい服装とか苦手なんだよねー。貴族連中もキライだしー」
マゼンタ待って!だから真に受けちゃダメなんだって!ソレあとから不敬罪とか言われるお約束のやつだから!
「ちなみに、不敬罪には処さないから安心しろとも言ってましたよ?」
「…女王様は未来視でも持ってるっていうの…」
こっちのセリフを逐一先読みされてるじゃないの、恐ろしいったらないわ。
「まーあの女王様、意外にも言ったこと守るタイプだから。不敬罪に問わないってゆーなら本当に大丈夫だと思うよ?」
…本当の本当に大丈夫でしょうね?
いくら夢でも投獄されたり処刑されたりなんて絶対嫌なんですけど!
「ううっ…念のため聞くけど、それって拒否権は」
「ねーな」「ないですね」
……ですよねー。うん、聞いてみただけだから。ショックなんて受けてないから。
「にしても女王様、なかなか好条件じゃね?逆にアヤシーよな。何か企んでんじゃないの?」
「まあ何も企んでないわけはないと思いますが…それとは別にひとつ条件をつけられましたね」
「条件?」
ええ、条件です。と言いながら、いつの間に出したのかシアンの手には懐中時計のような物がひとつ。
60まで書かれた文字盤に長い針が一本だけで、正直どうやって時間を見るのかと思っていたら、”カチリ”と音がして反時計回りに一目盛り分、針が動いた。
え、これってーーー
「残り20分ですか…これ以上ゆっくりする時間はなさそうですね」
そう言ってシアンがひょいっと私を担ぎ上げてーーーひっ、コレまさか?!
何もなかったはずの床に光の粒子で魔法陣が描かれて、下から吹き上がる風で髪が乱れる。
「ーーじゃ、しっかり掴まっててくださいね?」
「えっ、ちょっ、待って!さっきご飯食べたばっかりでーー!」
「ええ、ですから謝罪を。ちょっと時間がないので、ここから直接行きますね」
シアンがにっこり笑う顔が最後に見えて、私は強制的に転移させられた。
そんなシアンの言葉をまるっと無視して、私はダイニングテーブルに突っ伏していた。
だってその謝罪って、十中八九、女王様からの呼び出しに関してのやつでしょ?
なんかもう面倒ごとの予感しかしないし、全くもって聞きたくないんですが!
「ーーちゃんと起きて聞いてくれないなら、このまま耳許で説明して差し上げてもいいんですよ?」
ひぃっ?!?!
「ちゃ、ちゃんと聞くわよ!」
…み、耳許で声を吹き込んでこないでよ、心臓に悪いんだから!
昨日の件もあり、シアン相手には警戒心が拭えないというか…いつセクハラかまされるかと気が気じゃないんですけど!
「なら良かった。ひょっとして、マゼンタからある程度聞いてたりしますか?」
「…お城の女王様に謁見しろって話よね…」
「ええ、それです。僕ら三人とも呼び出し対象でして。朝からちょっと交渉してたんですがね…」
「なになに?まさか交渉決裂した?」
マゼンタがうへぇ、と心底嫌そうな顔で舌を出した。
「いえ、そこまでは。むしろそれなりに譲歩も引き出しました」
「譲歩ってどんな?」
あれ、ひょっとして思ったより良い話?
「とりあえず今回の訪問は正式な謁見という形でなく、女王が個人的に友人を招いた、という形にするそうです」
「ーーそれ、譲歩なの?」
どの道、女王様には謁見するんじゃないのよ。
「会うのは女王と宰相の二名のみで、個室に招かれ他の貴族の同席はなし。無礼講で、服装も正式なものでなくても可だそうですよ」
「正式も何も、私普段着しか持ってないわよ?!」
昨日買ったのはごく普通のワンピースでフォーマルウェアじゃないし、なんなら足元はサンダルだ。
どう考えてもお城に呼ばれるときの格好じゃない。
ついでに言わせてもらうなら、その無礼講って言葉は真に受けてはいけないやつだから!
「お、ラッキーだな!オレ堅っ苦しい服装とか苦手なんだよねー。貴族連中もキライだしー」
マゼンタ待って!だから真に受けちゃダメなんだって!ソレあとから不敬罪とか言われるお約束のやつだから!
「ちなみに、不敬罪には処さないから安心しろとも言ってましたよ?」
「…女王様は未来視でも持ってるっていうの…」
こっちのセリフを逐一先読みされてるじゃないの、恐ろしいったらないわ。
「まーあの女王様、意外にも言ったこと守るタイプだから。不敬罪に問わないってゆーなら本当に大丈夫だと思うよ?」
…本当の本当に大丈夫でしょうね?
いくら夢でも投獄されたり処刑されたりなんて絶対嫌なんですけど!
「ううっ…念のため聞くけど、それって拒否権は」
「ねーな」「ないですね」
……ですよねー。うん、聞いてみただけだから。ショックなんて受けてないから。
「にしても女王様、なかなか好条件じゃね?逆にアヤシーよな。何か企んでんじゃないの?」
「まあ何も企んでないわけはないと思いますが…それとは別にひとつ条件をつけられましたね」
「条件?」
ええ、条件です。と言いながら、いつの間に出したのかシアンの手には懐中時計のような物がひとつ。
60まで書かれた文字盤に長い針が一本だけで、正直どうやって時間を見るのかと思っていたら、”カチリ”と音がして反時計回りに一目盛り分、針が動いた。
え、これってーーー
「残り20分ですか…これ以上ゆっくりする時間はなさそうですね」
そう言ってシアンがひょいっと私を担ぎ上げてーーーひっ、コレまさか?!
何もなかったはずの床に光の粒子で魔法陣が描かれて、下から吹き上がる風で髪が乱れる。
「ーーじゃ、しっかり掴まっててくださいね?」
「えっ、ちょっ、待って!さっきご飯食べたばっかりでーー!」
「ええ、ですから謝罪を。ちょっと時間がないので、ここから直接行きますね」
シアンがにっこり笑う顔が最後に見えて、私は強制的に転移させられた。
0
あなたにおすすめの小説
〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。
藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。
そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。
私がいなければ、あなたはおしまいです。
国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。
設定はゆるゆるです。
本編8話で完結になります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる