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2章
11。初めての謁見
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左右対象の整ったデザイン、白い城壁に紺碧の屋根、いくつもの塔に広々したバルコニー。その前に広がる見事に手入れされた庭園。
めまいと頭痛の中で必死に目を開けると、目の前にザ・ファンタジー☆と言った感じの馬鹿デカくて豪華なお城がありました、と。
……あー、うん。さすが夢ね。ホント、なんでもアリ。
これまた左右対象な庭園の真ん中を歩きながら、ひたすら驚いてアプローチの奥に見える城を見上げる。さっきから口は開きっぱなしだ。
なんと整備に労力のいりそうな広さだろう…これ使用人とか何人いるんだ。税金の無駄だわ。
まあ建物はめちゃくちゃ素敵だけど…中世風のルネサンス様式っていうのかしら?できれば普通に観光で来たかった。
…ただ、建築様式云々以前に、この城『美女と◯獣』の実写版で使われてたフランスの古城に激似なんだけど?
大好きな映画だったけど、夢で完コピできるほど繰り返し観たわけじゃないんだけどなぁ、と首を捻る。
じゃなきゃ、昔の迷い子が実際の城のデザインをパクっ…いや、インスパイアされた、とか。
そんな事を考えながら歩くうちに、なんとか入り口に辿り着いた。門番のお兄さん達が、シアンを見て無言で道を開け中に通す。
入れ替わりで案内のメイドさんがやってきて、こちらも無言でついてくる様ジェスチャーで示すとそのまま歩き出してしまった。
事務連絡すら話してくれないとか、ちょっと不気味なんですが。喋っちゃいけないって規則でもあるのかしら。
ーーそれにしても、だ。
「女王様に会うのに、ノーチェックで通されるのね…」
手ぶらだから荷物検査はないにしても、身体検査くらいされるのかと思ってたわ。
「まあ、あのバアちゃんこの国最強の猛者だし?身の危険の心配とかって要らないからなー」
「ちょっとマゼンタ!女王様をそんな呼び方はマズいわよ?!…って、女王様ってご高齢なの?」
「んー、実際の年齢はさすがに怖くて聞いてないかな?あ、女王様の娘がリュウより年上って聞いた事あるな」
それだと還暦なんかはるかに超えてるわよね…それでこの国最強って…。
やっぱり女王様は恐ろしい人のようだ。これは絶対逆らっちゃダメなやつだわ。
できる限り目をつけられないように善処しないと。
「まあ強さに関係なく、この国の民であの女王を害そうとする者はいないでしょうね」
「そんなに慕われているの?凄い傑物なのね」
でも、誰にも恨みを買わない為政者なんているのかしら?
「慕われてるって話は特に聞きませんが…まあ、一度知った快的な生活を手放せる人なんていないですからね」
「?ええと、もう少し詳しく説明してくれないと、話が見えないのだけど…」
「詳しい話は追々しますからーー着きましたよ。ここが女王の執務室です」
重厚なドアの前に着くと、護衛の兵士らしき人がこちらを見てひとつ頷き、ドアを押し開いてくれた。
入るのを少し躊躇っていると、シアンに腰をそっと押され「レディーファーストですから」と片目をつぶられる。…くそぅ、押しつけられたわ。二人ともズルい。
覚悟を決め、広々とした部屋の中に一歩踏み込んで、正面を見る。
……うん?ーーーんんん?
あれ。私、目がおかしくなったかな?
正面の、おそらく女王様が執務の時に使っているだろう豪華な椅子にちょこんと座っている人物が、極端に小さく見えるのだけど…そんなまさか。
あ、でもすぐ隣におば様が一人立っておられるから、ひょっとしてあちらが女王様?
聞いていた年齢よりはるかに若く見えるけど、きっと美魔女の進化系なのだわ。うん、きっとそう。
じゃあ椅子に座っているのは、女王様のお孫さんかひ孫さん?
髪色なんかは全然違うけど、よく見ると顔のパーツはとても似ている。多分王族のお子さんなんだわ。
ああもうビックリした。そりゃそうよね。
内心の動揺を抑えながら、二人の前に一歩進み出て、深くお辞儀をする。
「お初お目に掛かります、女王陛下ーー召集に応じて参りました、ソフィア・クロフォードと申します」
敬語が正しく使えているかは分からないが、頑張って敬意を払った言い方を心掛ける。
「ーーほう、ようやく来たか…随分と待たせてくれたの?まあ良いわ。面を上げよ」
下げた頭の上から降ってきた甲高いこどもの声に、弾かれた様に顔を上げる。
正面からお人形さんの様な容姿の、美しい幼女がふてぶてしくこちらを見ていた。
鮮やかなピンクの髪に、ピンクの瞳。
見事な縦ロールをツインテールに纏め、ちょこんと黄金の王冠を載せている。
え、女王様ってーーーこっちの女の子の方なの?!
めまいと頭痛の中で必死に目を開けると、目の前にザ・ファンタジー☆と言った感じの馬鹿デカくて豪華なお城がありました、と。
……あー、うん。さすが夢ね。ホント、なんでもアリ。
これまた左右対象な庭園の真ん中を歩きながら、ひたすら驚いてアプローチの奥に見える城を見上げる。さっきから口は開きっぱなしだ。
なんと整備に労力のいりそうな広さだろう…これ使用人とか何人いるんだ。税金の無駄だわ。
まあ建物はめちゃくちゃ素敵だけど…中世風のルネサンス様式っていうのかしら?できれば普通に観光で来たかった。
…ただ、建築様式云々以前に、この城『美女と◯獣』の実写版で使われてたフランスの古城に激似なんだけど?
大好きな映画だったけど、夢で完コピできるほど繰り返し観たわけじゃないんだけどなぁ、と首を捻る。
じゃなきゃ、昔の迷い子が実際の城のデザインをパクっ…いや、インスパイアされた、とか。
そんな事を考えながら歩くうちに、なんとか入り口に辿り着いた。門番のお兄さん達が、シアンを見て無言で道を開け中に通す。
入れ替わりで案内のメイドさんがやってきて、こちらも無言でついてくる様ジェスチャーで示すとそのまま歩き出してしまった。
事務連絡すら話してくれないとか、ちょっと不気味なんですが。喋っちゃいけないって規則でもあるのかしら。
ーーそれにしても、だ。
「女王様に会うのに、ノーチェックで通されるのね…」
手ぶらだから荷物検査はないにしても、身体検査くらいされるのかと思ってたわ。
「まあ、あのバアちゃんこの国最強の猛者だし?身の危険の心配とかって要らないからなー」
「ちょっとマゼンタ!女王様をそんな呼び方はマズいわよ?!…って、女王様ってご高齢なの?」
「んー、実際の年齢はさすがに怖くて聞いてないかな?あ、女王様の娘がリュウより年上って聞いた事あるな」
それだと還暦なんかはるかに超えてるわよね…それでこの国最強って…。
やっぱり女王様は恐ろしい人のようだ。これは絶対逆らっちゃダメなやつだわ。
できる限り目をつけられないように善処しないと。
「まあ強さに関係なく、この国の民であの女王を害そうとする者はいないでしょうね」
「そんなに慕われているの?凄い傑物なのね」
でも、誰にも恨みを買わない為政者なんているのかしら?
「慕われてるって話は特に聞きませんが…まあ、一度知った快的な生活を手放せる人なんていないですからね」
「?ええと、もう少し詳しく説明してくれないと、話が見えないのだけど…」
「詳しい話は追々しますからーー着きましたよ。ここが女王の執務室です」
重厚なドアの前に着くと、護衛の兵士らしき人がこちらを見てひとつ頷き、ドアを押し開いてくれた。
入るのを少し躊躇っていると、シアンに腰をそっと押され「レディーファーストですから」と片目をつぶられる。…くそぅ、押しつけられたわ。二人ともズルい。
覚悟を決め、広々とした部屋の中に一歩踏み込んで、正面を見る。
……うん?ーーーんんん?
あれ。私、目がおかしくなったかな?
正面の、おそらく女王様が執務の時に使っているだろう豪華な椅子にちょこんと座っている人物が、極端に小さく見えるのだけど…そんなまさか。
あ、でもすぐ隣におば様が一人立っておられるから、ひょっとしてあちらが女王様?
聞いていた年齢よりはるかに若く見えるけど、きっと美魔女の進化系なのだわ。うん、きっとそう。
じゃあ椅子に座っているのは、女王様のお孫さんかひ孫さん?
髪色なんかは全然違うけど、よく見ると顔のパーツはとても似ている。多分王族のお子さんなんだわ。
ああもうビックリした。そりゃそうよね。
内心の動揺を抑えながら、二人の前に一歩進み出て、深くお辞儀をする。
「お初お目に掛かります、女王陛下ーー召集に応じて参りました、ソフィア・クロフォードと申します」
敬語が正しく使えているかは分からないが、頑張って敬意を払った言い方を心掛ける。
「ーーほう、ようやく来たか…随分と待たせてくれたの?まあ良いわ。面を上げよ」
下げた頭の上から降ってきた甲高いこどもの声に、弾かれた様に顔を上げる。
正面からお人形さんの様な容姿の、美しい幼女がふてぶてしくこちらを見ていた。
鮮やかなピンクの髪に、ピンクの瞳。
見事な縦ロールをツインテールに纏め、ちょこんと黄金の王冠を載せている。
え、女王様ってーーーこっちの女の子の方なの?!
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